法令違憲と適用違憲

2010-04-29 13:09:21 | 司法試験関連
簡潔にいくつかポイントを。

法令違憲で意識したいのは,一部法令違憲もありうると言う事。規制目的達成手段の一部に問題がある(全体的に問題があれば「一括して違憲」で良いが,いくつかの規制手段は寧ろ必要なんじゃない,と言う時に手段審査で違憲に持ち込んだり,要件部分に問題があるとして加重要件の一部を除去したい時に使う手法である)時に使える。
理論構成として,一部不作為事例と見るか,加重な要件を課しているから,その加重部分だけ違憲と見るか,見方は大きく2つある。この辺,ケースメソッド論文マスター受講者の方で不安のある方は国籍法違憲判決の部分をもう一度復習しておいて欲しい。2009年版フレーム講義受講生の方は,昨年の問題でも使えると言うことの確認もしておいて欲しい。
講義では扱ったが,これに関連して,「法令の可分・不可分」と言う議論もある。

また,一部法令違憲は請求権事例で「不十分性」を攻撃したい時にも使える。請求権パターンで全部違憲にしたら,不十分ながら給付してもらえた部分まで根拠規定が無くなり,給付して貰えなくなってしまうからである。恐らく試験でこの領域から出るとしたら,不十分パターン(制度の後退型も含む)だと予想している。

法令のどの部分に瑕疵があるのかもチェックしたい。法令の核心部分か周辺部分か,瑕疵の及ぶ範囲が狭いか広いかで「違憲にすべき」という主張の強さが変わってくる。そういう意味で,条項自体を更に細分化して分析する視点は持っておきたい。

適用違憲でも解釈適用指針を示す事が必要である。あくまでも憲法論=憲法的な理由付けがなければ,ただの個別法令の適用不適用の議論に落ちてしまうので(点はまるでつかない)要注意である。

法令違憲で対象となるのは,要は立法事実レベルの「事実」である。法令違憲レベルの当てはめでは,「Xさんが,Yさんが」,のように「当該事件の当事者が絡む事実」が出てくる事はありえない。適用違憲ではそのような事実が出てくる。簡単に言えばそういう違いである。

立法事実は,要は「社会一般の現象として認められる事実」であり,抽象度が高い事実である。簡単に言えば,皆が「ああ,そういうことよくあるよね」と受け止めるレベルの話。東京都公安条例事件で言えば,「群集が集まれば一瞬にして暴徒と化す」ことが「ああ,あるある」と言えれば,そのような立法事実は存在する,と評価されるのである。「Xさんは瞬間湯沸かし器なので一瞬にして暴徒と化す」,というのは立法事実ではない。
司法事実は,特定の事案で「誰が,何を,どこで,いつ,いかに,如何なる動機意図で行ったのか」というレベルの話である。かなり具体的である。適用違憲で問題となる当てはめ事実はこのレベルの事実である。司法事実の集積結果が立法事実,という見方も出来る(尊属殺重罰規定違憲判決)。

適用違憲は,ざっくばらんに言えば,行政処分の違法性の議論に似ていると思えばよい。個別の適用例=行政処分の話をしていると思えばイメージを持ちやすいのではないか。処分違憲と適用違憲の分類など正確に確認したい人は,ケー論の適用違憲の章を確認のこと(もっともこの分類をどうするか自体は試験ではあまり関係ないが)。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする