2006/2月中旬 八ヶ岳東面・天狗尾根
八ヶ岳・天狗尾根
「初日はキレット小屋でヨカッペよ。」と人は言う。 でも我々は出合小屋にこだわる。
「こ、これには深い訳が・・・。」と、いうことにしておく。
理由なんて有るようで無いもの。
一体なぜ出合小屋にこだわるのかは 自分たちでもうまくは説明が付かないのである。でもきっとあるその訳はたやすく他人に公言する類のものでもなかろう。
計画は初日に美しの森から天狗尾根を登り、出合小屋まで帰着、翌日下山というもの。
そういえば今日はバレンタインデ-。硬派の山ヤは八ヶ岳東面。これでキマリ!
見上げればコレしかないというほどの蒼空。最高のプレゼントである。
大天狗
尾根に上がれば足を掬うような強風にやや閉口。膝程度のラッセル。
カニのハサミは左をトラバ-スしてひと登り。
右へトラバ-スしてフィックスの張ってあるルンゼは足元が奈落へと続いている。
精神的安心のためロ-プを1ピッチ出す。
続いて草付やら岩稜やらをいくつか越えると大天狗が行く先に鎮座する。
ここは基部を少し登りバンドへとトラバ-スすれば安定する。一歩だけ大きな体重移動が必要で緊張する場面である。
蘇る記憶
バンドを伝って小天狗をバックに記念撮影。ここはなかなかイイ雰囲気。小天狗は左の草付で巻く。
あとは縦走路へ向けてひと登り。といいたいところだけど、折りからの強風でバテバテ。大きなレンズ雲が恨めしい。
ツルネへの縦走路はガレの下りに神経を使いつつも、阿弥陀南稜や権現岳、そして今トレ-スしたばかりの天狗尾根など 見渡せば記憶も蘇る景観がぐるりと展開し、決して飽きることは無かった。
ひととき
息も絶え絶えどうにかツルネ。東稜を下る。
どうにかヘッデンの世話にならなくて済んだ。そうして出合小屋の夜は更けていく。
翌朝、ひと仕事を終え充足の緩やかなひとときは穏やかな日差しとともにゆるりと過ぎていく。
コ-ヒ-をすすりながらとても満ち足りた時間にこのユトリ。できることならこのまま時が止まってほしい。
退屈な下山も工夫ひとつで予想以上に愉快になる。そうして、おそらくはまた来るであろう地獄谷に別れを告げた。
sak