2008/8月上旬 谷川・一ノ倉沢第二ルンゼ
灼熱
真夏の谷川、2ルンゼ。
登山指導センタ-から先の交通規制にもメゲず、ロープウェイ乗場から出発。
交通規制の件もあってか、本日は我々と中央稜の2パ-ティ-のみ。
本日の一の倉は雲ひとつないスバラシイ眺め。
しかし、灼熱の陽射が容赦ない。
テ-ルリッジでかなり絞られ、中央稜基部で既にヘロへロ。
2ルンゼに入れば、日陰の涼しい登攀になるはず。それだけを励みに南稜テラスから本谷バンドをいく。
岩はカラッカラでクライミングにはもってこい。
僅かでも水流があるのでは?と乾ききったノドは期待していたが、こちらは残念賞。
まあ、ゼイタクはいえまへん。
順調
2ルンゼを行く。
ルンゼ内部の日陰に入ると、随分体は楽になって、順調な登攀。
ルンゼ右手のフェ-スからルンゼへと入り込む。
このあたりは、様々に登られているらしい。
はじめて逢ったのはいつの頃だったか。
憧れと羨望というよりは尊敬といったほうが的確な表現だった。
いつしか憧れ、親しみ、時に畏敬を抱くこともあった。
そして今日もいつもと同じようにいく、ハズだった。
なんとなく予感させるものがなかったわけではない。
単なる偶然かもしれない。
それもやはり、山なのだ。
石門
ようやくの念願が今だとするなら、それはすなわち、終りの始まり。
ひとつの別れが待っている。
そうして新たな出逢いを静かに待ち望む。
フェ-スからバンドに出ると、本庄ル-トとはここで別れてルンゼに入る。
F1の右手リッジを痛快に越えると核心のチョックスト-ンが現れる。
幾分湿り気を帯びた右壁をスリング頼りにA0で越える。
これで岩がびしょびしょならば相当苦戦を強いられることであろう。
ここを越えると極端に傾斜は落ちて、1ピッチほどで行く先に石門が見えてくる。
ココの通過はちょっとしたクライミングになるが、それでもⅢ級程度の快適さ。
「Ⅲ級友の会」会員としてはこの上ないシアワセ。
石門上から見下ろせば、涼しげな2ルンゼの先にカンカン照りの烏帽子沢奥壁が眩しい。
開放感
石門を越えればザッテル。
いわゆる「ザッテル越え」である。
今までの涼感クライミングから比べると痛いほどの陽射が容赦なく降注ぐ。
反面、視界は広がり滝沢上部の開放感がたまらない。
ザッテルから草付を僅かに下れば広河原。
とても気分のよい場所だ。
相変わらず陽射は強いものの、滝沢からはいい具合に風が流れて心地よい。
なにより、僅かな水流があり、ここで存分に体の渇きを癒す。
Aルンゼへの登路を見上げ、そこを行くのかと思えばいくらか辛いが、 今はそんなことも忘れて、ノンビリもしたくなる。
Aルンゼ
さて、ここからAルンゼ。
どちらかといえば沢登の領域。しかし広河原で普通のズックに履き替えたため、滝場は巻いて行く。
結局はCルンゼから大きく巻いてトラバ-ス。A.Bルンゼの出合で沢筋に降り立つ。
このあたり、視界がないときには苦労するであろう。
そこからAルンゼのゴルジュ。
入り口から僅かで二段滝。念のためとロ-プ&クライミングシュ-ズを出す。
これが大正解。
一段目はⅢ級程度なのだが、二段目はカブっており、残置スリングでA1。
今回の登攀で最もキワドイ。
戯曲
最後の壁は左の凹角~草付を2ピッチで支尾根。
スルドイ岩峰が印象的。
ド-ムからの道がココで合流する。
草付、ヤブ道を30分ほどで国境稜線。
オキノ耳に出ると期待していたが、実際にはその手前の峰に出る。
少々残念。
次の戯曲はいったい何時になるのか。
実はもう終わってしまっているのかもしれない。
はたまた既に始まっているのかもしれない。
夏の陽射に手をかざしながら行く先に見えたのは真夏の谷川。
灼熱の登行に干上がる想い。
果たして中央稜パ-ティ-はいかがなものであったか。
それぞれの登攀に、それぞれの終着点。
新たなはじまりを予感しながら。
sak