2020/11/26 太刀岡山左岩稜(3P中退)
道半ばにして、無念の中退。
中退というと、ネガティブな印象が強い。
だけど、そこに至るまでの奮闘や数々の体験は無駄ではない。
価値はそこにある。
太刀岡山左岩稜は、下部のクラック、そして上部は古くから登られている開放的なリッジで構成される。
核心は下部クラック。
過去、1ピッチ目はクラックを避けて右の凹角を行った。
今回はクラックを繋いで上部に抜ける計画。
だけど、クライミングを始めて間もないメンバ-には、ちと辛かったみたい。
1ピッチ目、最下部の外傾した岩を乗越て小テラス。
そこからハンドクラック。
ジャムしたり、クラック左に重心を置いてレイバック気味に行ったり。
miyさん、kumさんはここでだいぶ腕力を消耗したらしい。
2ピッチ
以前は左のクラックに体がハマり込んで苦労した記憶。
それを教訓にあまり体を入れこまないよう、ステミングとバックアンドフットでいく。
途中体を入れ替えて、快適に登る。
3ピッチ
下部のフィンガ-クラックは足が入らず、だいぶ迷った。
クラックの左エッジを手掛かりに右エッジ足をかけレイバック。
ここは右から小さく巻くこともできるのは、後にわかったこと。
中間部のスクイ-ズチムニ-は岩上スラブへ乗らず、中を通り抜ける作戦。
どうしても最後の出口で腰の骨盤がハマって抜け出せない。
チムニ-出口の2mくらい上が少し広くなっており、そこから脱出。
上部のクラックは容易。
miyさんが登り始めるが、下部のフィンガ-クラックで苦戦している。
しばらくの奮戦。
kumさんに選手交代したが、やはり1ピッチでの消耗でかなり厳しいようだ。
ここさえ抜ければ、快適なリッジの始まり。
引き上げたロ-プをフィックスして、懸垂下降。
二人のもとに降り立ち、ユマ-リングでなんとか登れないかやってみたけど握力に確信が持てないらしい。
これでは辛いばかりだろうと、中退決定。
独り3ピッチ目をゴボウで登り返し、ロ-プセット。懸垂下降で取付きへ。
想い届かず、課題に背を向けることは、少なからずある。
「勇気ある撤退」と人は言うが、大切なのは「その後、どうしたか」
miyさんは下山後、缶コ-ヒ-のプルトップを自分で開けられないほどに握力を失っていたらしい。
店員さんに「開けてもらえませんか」とお願いしたのだそうだ。
上等じゃないか。
それほどに握力を酷使することなんて、普通できない経験だぜ。
いうなれば腕力や握力に頼りすぎた、ということ。
敗退を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ。
壁はそこら中にたくさんある。
sak