2020/12/14 南伊豆・吉田海岸 魔王
もちろん、山は好きだが、海も好きだ。
山でスカイラインを望むように、海には水平線がある。
僕らは境界の彼方に何を見るのか。
目指すはシ-クリフ。
ワクワクが止まらないのは言うまでもない。
走れ。
闇中を、南へ。
前夜、吉田海岸まで入る。
集合場所は想像したよりずいぶん狭い駐車スペ-ス(2~3台)。
往路を戻って近くの道の駅で集合し、車1台乗り合わせとして現地入りすることにした。
翌朝、車はすでに2台。突当りのトイレ脇駐車スペ-スは埋まっていた。
昨夜は見いだせなかったが、すこし手前の路側帯にも数台停められそう。
平日であることに安堵。
ちなみに1台はクライミングが目的みたい。
急いで競走みたいになるのも、なんだかなぁ。。。という気がしたのでノンビリ準備。
パ-トナ-はisiさん。
遠路、南伊豆の提案に快く乗ってくれた。
有難き幸せ。
海を正面に右の岬を越えようと、ログ風建物前の広場を行くが小川に阻まれ、結局は堤防に出て岬のコルを目指す。
先行が進んだ経路からコル左寄りを目指したが、自然と右寄り、最低コルへの踏み後に入ってしまう。
そこからは”沢ヤ”的なカンで草付きとボロルンゼを下る。(ちょっと怖い)
※帰りに分かったことだが、コル左寄り(岬側)を超えた先にはフィックスが張ってあるので安全に下れる。
大小、岩の転がる海岸を行く。
まるで沢登りのようだが、フリクションが効いて小気味良く歩ける。
今日は、2018年にガイドの木村・山下両氏が開拓した4ピッチル-ト「魔王」の登攀が目的だ。
取り付きで準備をしながら先行を見送る。
打ち寄せる波が激しく、時に波しぶきが風に舞う。
大潮なので、潮位も高いのだろう。
先行リ-ドが2ピッチ目をスタ-トしてから我々も出発。
攀じれ。
岩壁を、空へ。
1ピッチ:sak
緩傾斜のスラブから草付きバンドを伝って立ち木まで。
スラブ上部にボルトがある。
草付きバンドは問題なく歩けるが、念のため岩溝にカムで支点をとる。
2ピッチ:isi
草付きバンドを進み、右のフェイスを登る。
傾斜は立っているけど、カチやポケットがたくさんあってフリクションもバチ効き。
岩登りは良いですなぁ。って感じ。
フェイスの後は岩バンドを左へ。凹角を右上して2ピッチ目は終了。
3ピッチ:sak
凹角右のフェイスを行く。
2ピンとったら、凹角を跨いで左の岩溝に入る。
岩溝を登ると小テラス。
先行がここで切って、先を譲ってくれた。
その先のスラブ状カンテはホ-ルドが細かく少し難しい。
立木のある大きなテラスで切る。
4ピッチ:isi
ル-トの核心。コ-ナ-スラブ。
2ピンまで足が少なく怖い。
無念のA0。
その先、スラブを右へトラバ-ス。
手足が細かくペタシペタシとごまかしながら。
本来はその先も繋げるのだが、核心だけ短く切ろうというのは事前打ち合わせ通り。
5ピッチ:sak
コ-ナ-から左クラックを登りスラブを直上。
容易だが岩も柔らかいので慎重に。
念のためカムと灌木を数ケ所使う。
稜線の灌木でフォロ-を迎え、終了。
輝く海原は美しく、風が強い。
飛べ。
海原を、彼方へ。
自由な風に不自由を恵んでやるよ。
潮風に手綱をつけてやれ。
空と海の境界を見に行こうぜ。
欲しいものなんか後でいい。
必要なのはそんなんじゃない。
藪の稜線をしばらく下る。
コルあたりで踏み後がなくなったので、周辺を探すと捨て縄があった。
ここから懸垂下降。
50m×3ピッチとガイドブックにあったが、1ピッチ目は25mほどで次のラッペルステ-ション。
明らかに下の立木まで届くと思ったが、念のためここで切る。
結果としてこれが正解。
稜線の灌木は海風に鍛えられ枝張りが濃く、強靭。
そのためロープ回収時に、灌木でスタック。
isiさんに登り返してもらい、無事回収。
やれやれ。
結局、立木を繋いで4ピッチの懸垂下降。
スタ-ト地点に戻って大休止。
白波立つ海岸で装備をしまいながら、これからの話をする。
憧れはいくつもある。
日常と折り合いをつけながら、次を目指す。
このくらいの自由が丁度いい。
行け。
この道を、未来へ。
sak