そういえば、遠い昔のことなのですが、私はテレビ出演したことがあります。
テレビといっても地元放送局のいわゆる「ローカルテレビ」ってやつなんですが。
私が通っていた小学校は田舎の学校なのですが、非常に体育が盛んな学校でした。
朝から2キロ程度を勾配のあるルートでマラソンをし、一日に必ず外で体を動かす時間を1時間程度設けて遊びと体育を混合させた教育をしてました。
学校にスケートボードのリンク場を作ったり、児童全員にローラースケートを学ばせたり、バック転やバック宙、前宙や卒業までに全員一輪車を乗れるようにしたり、体育館にトランポリンがあったりする、今考えてみると「ジャニーズ養成所」か「中国雑技団養成所」って感じの小学校でしたね。
同級生にも普通にバック転やバック宙、マット運動などをごく当たり前のようにこなしていました。
私は体が硬かったので、柔軟運動や開脚などが苦手でしたね。
で、そんな小学校にある日、テレビの取材クルーがやってきたんですよ。
各学年を取材して、いよいよ私のいる学年になりました。
取材していて、基本的に何でもできる体育小学生は飽きてしまったのでしょう。
テレビのディレクターさんがこんな提案をしました。
「鉄棒で、逆上がりをできない子をできるようになるまでの教育ぶりを取材したい」と。
でもね、体育が売りの小学校です。既に当時は小学校3年生だったかと記憶してますが、その当時ではクラスで誰も逆上がりができないなんて児童はいませんでした。
だって、小学2年生くらいで逆上がりができるようになるのが当たり前の学校です。
そこで、誰がこの「逆上がりできない小学生」を演じるかということになりました。
なんといってもテレビですから、それは迫真の演技が求められます。そう簡単にできちゃうようでは困ります。
で、クラス全員と担任の先生の総意で、その役を演じることになった児童がこの私。
いやいやいや、ちょっと待ってくれと。
そりゃ、できなさそうには見えますけどね、ちゃんとできますから。
そんな躊躇する私にディレクターさんと担任の先生が一言「主役だよ」
この「主役」って言葉、いい響きです。かなり魅力的。
クラス全員からは「お前しかいない」の言葉も。
うーん、このクラス全員の言葉は誰も「できない子なんて演じたくない」ということでしょう。
で、演じましたよ「できない子」って役を。
できる子ができない子を演じるって、けっこう大変なんですよ。
なんといっても迫真の演技を求められますし、最終的に「できる子」になるって設定ですから。
ずっと鉄棒に掴まって演じます。そりゃ、手の皮は剥けて血だらけです。
でも、なかなかディレクターさんから「OK」の声がかからない。
私が鉄棒で演じている間は、クラスの皆は「○○くん、頑張れ~」と声援を送る役です。
かれこれ1時間程度ですかね、ずっと鉄棒と格闘してようやくディレクターさんから「OK」の声が出ました。
ようやく逆上がりができたシーンも撮り終えて感動のシーンも完了です。
確かラストでは皆が私を囲んで讃えるってシーンだったと思います。
撮影が終わった後、両手は皮が完全に剥がれて痛々しい状態になってました。
しかし、なんといっても「主演」です。
その日は友人が私の家に一緒に帰って、演じた私が話す前に私の親に撮影の報告をしました。
さすがに「できない子」を演じたとは言えませんでしたが・・・。
で、その演技のシーンなんですが、実は私と家族は観てません。
当時、我が家のチャンネル設定の関係でローカル放送は視聴できない状態だったので。
その後、テレビ取材に出くわすことは何度かありましたが、さすがに主演はないですね。
あれは、人生で初の体当たりの演技でした。
そんな私ですが、卒業までには一輪車は乗れるようになりました。
今では乗れないとは思いますけど、これも特技の一つなんですかね?