エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

倫理的方向づけのやり直し という パレーシア 

2013-10-30 03:30:58 | エリクソンの発達臨床心理

 

 精神分析が、人生のあらゆる経験を赤ちゃんの頃の経験の類似品と見なしがちであることが、改めて指摘されました。

 

 

 

 

 

 精神分析は、晩年を子どもの頃よりも軽く考えがちです。精神分析は、人は大人である時期にも、根強い子供っぽさがある、という否定できない事実を宇宙論の地位にまで引き上げてきました。つまり、将来に対するいろんな見通しは、いつでも、1つの失われた過去に対する様々な妄想を反映しているという否定しがたい事実を宇宙論の地位に引き上げ、ハッキリした前進は、部分的な後退を宿しているものですから、実現、すなわち、隠れた子どもっぽい願いの成就を肯定するという否定しがたい事実を宇宙論の地位にまで引き上げてきました。人間の生活の中で、繰り返されること、後退すること、こだわっていることをもっぱら研究している内に、私どもはかつてない程、大人の中にある幼児性について多くのことを学ぶようになりました。私どもはこのようにして、人間の生活の中で、倫理的な方向づけのやり直し、リオリエンテーションを準備してきました。その人間の生活は、赤ちゃんの頃の元気を保つことに集中しているものなのですね。しかも、この赤ちゃんの頃の元気を、人間は、より尊い価値のために、抑え付け、つけ込み、無駄にしてしまいがちじゃあないですか。そのそれぞれに対して手入れをしたり、私どもがあらゆる治療をしたりする時に、私どもの意識的心構えを支配しているのは、まさにこの倫理的方向づけのやり直しなのです。

 

 

 

 

 

 上品な物言いではありませんが、一種のネタばらしです。エリクソンはここで、あらゆる心理療法がしていることを一言で表現していますからね。つまりそれは、「倫理的な方向づけのやり直し」「倫理的なリオリエンテーション」なのです。

 このことをハッキリ言葉にしてくれたことは、エリクソンがそのことをハッキリ確信していたこと(パレーシア παρρησια[文字化け防止のため、ι【イオータ】の気息記号は省略])を示します。

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