エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

散歩コースの全生園 改訂版

2015-01-16 14:53:02 | エリクソンの発達臨床心理

 

 本棚をごそごそしていたら、古いスクラップが出てきて、「懐かしいなぁ」と思いながら、古い新聞の切り抜きを読んでいました。その中に「朝日新聞 4.19,2002 夕刊2版 p4」の「全生園の灯」と題する記事が出てきました。その記事を書いたのは宮崎駿さん。

 全生園、と聞いても、知っている人はそんなに多くはないかもしれません。東京は東村山市のある「国立療養所多磨全生園」のことです。かつてはらい病と言われた、ハンセン氏病の療養施設で、1909(明治42)年の創立だそうですから、106年目の施設、ということになります。

 ハンセン氏病患者を療養所に押し込めていたことは、「癩予防法」(1907(明治40)年)、「らい予防法」(1953(昭和28)年)という法律で、強制的に故郷を奪われ、拉致されるがごとく、ここに押し込められたわけですね。しかも、治っても、この療養所から出ていけなかった。事実上の刑務所だった。平成になってから、この隔離政策は、人権侵害として遅まきながら認められ、ハンセン氏病患者の名誉回復が、ある程度行われてきました。小泉首相が、元患者さんたちに、国の非、過ちを謝った。

 ここを散歩コースにしていたのは、今は超有名なアニメーション映画監督、宮崎駿さんです。ここを散歩すると、宮崎駿さんは、「おろそかに生きてはいられない」と感じたそうですね。きちんと自分と向き合いながら、生きているからでしょう。全生園には、昭和の初めにたてられた古い建物がまだ残っているので、それも「懐かしい」感じがするのだそうです。また、ハンセン氏病と向き合って生きてきた人たちの営みの中に「どんな苦しみの中にも、悦びや笑いも又あるのだ。あいまいになりがちな人間の生が、これほどくっきりと見える場所はない」との所感も述べられます。

 宮崎駿さんのアニメーション。その背後には、このような「人の痛みを感じること」や「いたわり」や「優しさ」という、司馬遼太郎さんが述べておられたことと重なる事実があったことを、今あらためて感じる次第です。

 

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人も、モノを買うのも同じ

2015-01-16 12:16:56 | エーリッヒ・フロムの真まこと(の行い)

 

 幸せは、意外に手近にあるものらしい。

 p3の下から7行目途中から。

 

 

2人がこのように恋に落ちるのは、自分自身の売値限度額も考え合わせて、人気市場で一番の掘り出し物を見つけたな、と感じる時なんですね。不動産を買う時みたいに、これから値が上がるかもしれない、隠れた可能性が、この買い物では物を言います。カネ勘定がいきわたった文化で、しかも、カネが儲かることが何よりも大事な文化では、人を大事にする関係でさえ、消費財や労働市場を司る交換パターンと同じパターンになるのも、今更驚きませんよね。

 

 

 

 

 

 人を大事にする時でさえ、モノ扱い。自分はなるべく高く売って、なるべく掘り出し物を見つけようということになりますもんね。それだと、「自分が得すること」しか考えなくなっちゃうでしょ? でも、それだと、ホントに大事にこと、人を大事にすることや、人間らしい暮らし、自由といったものが、蔑ろにされちゃいます。

 これじゃぁ、お金はあっても、心からの悦びを見失ってますよね。

 

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やり取りする時の鉄則

2015-01-16 07:05:44 | アイデンティティの根源

 

 国際関係においても、やり取りをすることが、相手の国を大事にすることになる。子どもとの関係において、やり取りをすることが、子どもを大事にすることになる、ということは改めて言うまでもない。

 p242下から2行目から。

 

 

 

 

 

 こんなことを申し上げたら、ユートピアを言ったことになるのでしょうか? 実は真逆で、私が申し上げたことはすべて、すでにいろいろと知られていることだと思いますし、たくさんの国の言葉で言われていると思いますし、いろんなレベルで実践されてきていると思います。私どもの歴史的な現在において、黄金律を実践する者も、黄金律をされる相手も、同じ人間、人だということは、最も実践的な意味で明らかでしょ。

 

 

 

 

 黄金律を実践すれば、勝ちも負けもない、服従と搾取もない。やり取りがある分、対等で、しかも、お互いに利益になる。核戦争などにもなるはずがない。

 やり取りには実に不思議な力があります。黄金律はやり取りをする際の鉄則です。

 

 

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