これも、当事者ならではの気づきや発想かもしれないし、
素人患者の単なる思いつきかもしれないが、
兼ねてから考えていたことを書く。
もしかしたら、
当事者の思いつきや発想が、
研究者の何かのヒントにつながるかもしれないから。
世の中に、健康診断での検査で、本人が自覚する前に、早期に発見される病気も多い。
早期発見、早期の対応は、どんな病気でも大事だ。
自覚症状が起こってからでは遅いものもある。
自覚症状が起こる前に、病気のリスクの高さがわかれば、対応も早いし、回復も早いだろう。
かねてから私は、
不定愁訴に隠れていることが多い脳脊髄液減少症の早期発見はできないものかと考えている。
さまざまな症状ゆえに、交通事故やスポーツ事故など、思い当たる大きなエピソードのない患者は、
自らの多彩な症状に困っても、
なかなか脳脊髄液減少症の可能性にまでは気づけない。
第一、脳脊髄液減少症がどんな症状がでるのかも、患者に情報があまりないし、
第一ほとんどの医師が知らない現状では、
患者が症状を感じてから、自ら情報を集め、自ら専門医を探し当てて、訪ねていく行動力が必要だ。
でも、症状が出てからでは、その行動力も奪われ、助けてくれる家族もいなければ、
自分で自分を救いだすことすら困難になる。
どうしたらいいのか?
やっと脳脊髄液減少症の可能性にきづいても、
「この自分のありふれた症状が、本当に髄液漏れなのか?
検査や治療で今以上に悪化したらどうしよう。」と躊躇しがちだし、
髄液漏れを自ら疑って、お金と体力と時間をかけてまでして、
遠方の脳脊髄液減少症専門医を受診しようとは、なかなか思わない。
ましてや、入院が必要な、腰に針をさすRI検査などを受けてまで、
髄液が漏れているかどうか検査しようと決断する患者は、
あまりいないと思う。
2010年春まで、RI検査まで自費だった時期は、
漏れているかどうかわからない自分の検査に、
高額な自費を投じてまで、検査を受ける人は少なかったと思われる。
いまこそ、検査は健康保険適用になったが、
仕事を持っている人は入院での検査への戸惑いや、
腰に針を刺す検査を怖がって受けない人も多いと思われる。
もし、脳脊髄液減少症の検査が、
普通の血液検査で、どこの医療機関でも、どの科の医師でも、
健康保険適用でできたら、
もっともっと、専門医につながる患者が増えてくると思う。
患者が増えれば、治療する医師も増え、
脳脊髄液減少症の治療にかかわる患者と医師が増えれば、
必然的に、世の中の関心も高まり、
社会の関心が高まれば、
国も医学界も関心が高まらないわけにはいかず、
研究も進んできて、
脳脊髄液減少症にとって、いい方向へ道が開けてくると思う。
がん検診とは、
本人が自覚症状がないうちに、早期にがんの可能性を検査しようとするというものだ。
どんな病気でも、早期発見早期治療がいいにきまっている。
症状が軽いうち、
できれば、なくても、見逃すとやがて重大なことにつながる病気については、
検診のようなものも必要だと思う。
だから、がん検診がさかんに行われ、
大腸がん検診、
乳がん検診、子宮がん検診などが、本人が自覚症状がないうちに検査することに意義があるのだろう。
もし、胃がんの診断基準をつくるのに、
「胃痛のある患者だけ」を集めて、胃がんの診断基準をつくったらどうだろうか?
胃がんの診断基準作成の際の患者の抽出の際に、
最初から、胃痛がある患者のみを選びだしているわけだから、
抽出された患者の100パーセントは胃痛があるということになる。
つまり、胃痛があることが前提で診断基準がつくられることになる。
もし、そういう診断基準があったらどうだろうか?
自覚症状がない、初期の胃がんの患者さんを見つけ出すことなど、
できないだろう。
胃がん検診など、行われる意味もなくなるだろう。
だって、もし、そういった診断基準があったら、
「胃痛がない」のは、胃がんでないとなってしまうのだから。
これを、
今回の、脳脊髄液減少症の診断基準にあてはめてみると、
最初から、「起立性頭痛のある患者のみ」を選び出して、
脳脊髄液漏出症の診断基準を作っている。
だから、患者の100パーセントに起立性頭痛があることが出発点になって、
診断基準が作られている。
つまり、
この診断基準では、先の胃がんの例と同じで考えると、
非常におかしなことに気付く。
胃痛のない胃がん患者が現実に存在し、それを認めているから、
初期がんの早期発見のための胃がん検診などがあるわけだが、
脳脊髄液減少症に関して同じように考えれば、
起立性頭痛がない患者が、存在しないわけがない。
こんな診断基準を作った厚生労働省の脳脊髄液減少症研究班の大多数の医師たちは、
起立性頭痛がない髄液漏れ患者がこの世に一人もいないとでも、
本気で考えているのだろうか?
もし、考えているとしたら、
胃痛のない胃がん患者なんて
この世に一人も存在しない、と考えていると同じだと思う。
なんらかの不定愁訴を抱えて苦しんでいる患者が、
精神科を受診しようが、
内科を受診しようが、
歯科を受診しょうが、
循環器内科や、内分泌科を受診しようが、
耳鼻科や眼科を受診しようが、
どの科のどの医師を受診しようが、
あれ、「それってもしかして、脳脊髄液減少症の症状じゃない?」と
医師が気づいて、
脳脊髄液減少症の脳外科専門医につなげるような体制が整ってほしい。
それができたら、
次は、
いつの日か、
脳脊髄液減少症のリスクスクリーニング検査が、
全国どこでも、
どの医師でも医療機関でも、
いつでも、誰でも、
気軽に受けられる時代になってほしい。
そうなれば、尻もちついて、その後、なんとなく具合が悪い程度で、
あまり自覚症状がない段階の患者でも、
「起立性頭痛がない患者」でも、
検診にひっかかって、
髄液漏れのリスクが高く、精査が必要と、指摘されることで、
早期に患者が気づけ、専門医につながり、
重症化が防げるかもしれないと思う。
そんな日が
近い将来、きっと
訪れるような予感がする。
当事者の、患者の予感。