病態が解明されて、診断治療法も確立されて、
医学部で学生に、その一部始終を教えられているような普通の病気怪我と違って、
脳脊髄液減少症に関しては、
まだまだ当事者しか知りえないことがたくさんある。
しかし、その量は膨大で、患者がこうして伝えることさえ、苦労する。
同じ脳脊髄液減少症患者でも、発症から1年以内に病名や治療にたどりついた方と、
何十年も見逃されてきた患者では、
その間、この病によって、知りえたこと、
体験したこと、気づいたことの量は、まったく違っていると思う。
当事者、それぞれに、ひとりひとり違う体験がある。
それを、
昔の患者の体験から、最近の患者の体験まで、
広く患者の話を集め、聞くことは、
この病態の全体像を把握する意味で、大切なことだ。
でも、その全体像の把握は、まだまだできているとは言えない。
たとえ、脳脊髄液減少症の専門医であっても、
我が身で体験していないのであるから、
想像することしかできず、わからない体験ばかりのはずだし、
経験者である患者でしか気づきようがないこともたくさんあると思う。
それをなんとか私たち体験者が、
自分たちがそれぞれに体験した範囲で、
何も知らない人たちや、医師たちに伝えようとするのだが、
それがまた、言語化することがものすごく難しい症状ばかり、
あまりにも説明しにくい誤解や理不尽なことばかりで、
説明するのも悪戦苦闘する。
ただでさえ、高次脳機能障害で、適切に短い言葉で相手に伝えることが
障害されていたりするのに、
症状が激しいと、その気力さえ奪われ、
手が動きにくく文字が書けなくなったり、
起立性の具合の悪さがひどく、起きてパソコンの前に座っていられなくなったり、
声がでなくなったり、
ろれつがまわらず、言葉がしゃべりにくくなったり、
文章をまとめることが困難になったりして
この病を、なんとか外へ伝えるその手段さえ、奪われるのが、
この病の恐ろしいところだ。
患者自らが、力を振り絞って、医師や世間に症状の苦しみをわざわざ伝えなくても、
医療現場にその病に対する知識があり、
患者が黙っていても、勝手にどんどん患者をたすけてくれる普通の認知された病気やけがとは
全然違う立場にあるのだ。
たとえ、伝える気力と能力が残っていたり、治療で回復した患者であっても、
語彙と経験豊かな大人の患者でさえ、
それのすさまじくも奇妙な症状を、言語化して伝えることが
非常に難しい。
ましてや、人生経験も少なく、語彙も豊かではない、こどもの患者が
今の自分の状態を、何かにたとえて表現することや、言語化して表現できるはずもない。
もし、幼児が脳脊髄液漏れを起こしたら、
いったいどうなるのだろう。
自分で症状や状況を大人に説明できないであろうから、
ぐったりしているしかないだろう。
その状態で、髄液漏れを疑うことのできる医師が、はたしているのだろうか?
大人の患者であっても、症状を訴えても訴えても信じてもらえず、
見逃された期間が長ければ長いほど、
その期間受けた、誤解や、見逃されたことで体験した数多くの症状、回復までの悪戦苦闘の
エピソードがものすごい量になり、とてもひとことでは説明できない。
それでも、
私たち大人の患者一人ひとりが、自分の体験をそれぞれに伝えなければいけないと思う。
先日のFNNスーパーニュースを見ていくつか感じたことを書こうと思う。
これも、
実際の脳脊髄液減少症当事者にしか気づき得ないことかもしれない。
まず、初めに、実名顔出しで、取材に応じてくださった患者さんたち、ご家族の皆さまに
深く感謝申し上げる。
顔が出せなかった患者さんも、もし、あの治療で回復したあかつきには、
今度は実名で
いままでの見過ごされた期間に受けた、実際の医療現場での体験を語っていただきたいと思う。
まず、今まで見たニュース報道の中で、
7月5日の放送が、全体的に、「身近な病としての脳脊髄液減少症」を世間に伝える意味で、
一番よかったんじゃないかと思う。
それまでの、他テレビ局の今までの報道は、
個人の患者さんの報道の範囲で終わっていた気がして、
日本中の、隠れ「髄液漏れ」患者さんたちが、
「もしかして自分も」と気づけるような内容では
なかったように思うから。
今回のFNN スーパーニュースの報道は、
誰にでもありがちな頭痛から、視聴者の関心を引き付け、
その影に、こんな重大な病もありますよ、と警告した意味で、
とてもよかったと思う。
また、転倒やスポーツ事故で発症して、すでに脳脊髄液減少症と診断がついた患者さんが出てくださったことで、
「私は交通事故に遭っていなから違うわ」と思っていた人たちにも、
私は、そういえば、あの時ころんで体に激しい衝撃を受けてからだわ、などと、
我が身にも起こりうると、気づくきっかけをくれたと思う。
その意味で、以前の他テレビ局の報道よりも、
より身近な病、特定の人だけでなく、自分たちにもかかわりのある病という認識を
広めた、全体的にいい構成だったと思う。
それに、なによりも、20年以上も、脳脊髄液減少症とわからず、
医師を転々として、誤解にさらされてきた30代女性患者さんが取材に応じてくださったことに私は、感謝したい。
表情があまりないこと、言葉が出しにくそうな場面を見て、
たぶん、この方も、ご本人はたとえ気付いていなくても、
私と同じように、長く髄液漏れを見逃されたために、顔や舌に軽い麻痺が来ていて、
顔に表情が出しにくい、舌がまわりにくく、
言葉がでにくい状況になっているのかな?と感じた。
これも、患者でない人たちには、気づかないことかもしれないが。
今まで、いつもいつも、報道で出てきてくれる患者さんは、事故から2カ月で診断がついた方とか、長くて診断まで4年とか、そんな幸運な方ばかり。
でも、
そういう最近の患者さんばかりにマスコミに登場されると、
さも、最近現れた病みたいで、
過去にも事故にあって発症していた患者がいることすら、
世間の人たちには想像が及ばない。
この病が何十年も見逃されて、
その間、治りたくて医師を転々としても、誰にも原因がわからず、病名もつかず、(たとえ病名がついたとしても、髄液漏れの症状のひとつにつけられたような病名だったりして、何の解決にもならない状態であったり。)
病名がつかなければ、病人として、社会に認められず、
怠け者と誤解されて、
次第に周囲の誰にも相手にしてもらえず、たったひとりで孤独の中を生きた患者、あるいは、
生きていられなくて、自ら命を絶って死んでいったであろう患者のことなんか
何も知らない人たちの想像が
及ぶわけはない。
そういう最近の患者さんばかりの報道だと、
診断が遅れても、見逃しは「その程度」の年月だと世間に思われてしまいそうで、
「脳脊髄液減少症と診断されるまで、数か月?なあんだ、その程度の期間の見逃されや、誤診なら、他の病でもよくあることじゃない。」と
世間の人たちに思われてしまいそうで、
私は怖かった。
もっともっと長く髄液漏れを見逃され、放置され、
すべて患者のせいにされ、
理不尽な中を涙をこらえて生き抜き、人生を棒に振ってきた人たちの存在なんて、
想像すらしてもらえない。
実際には、今から20年前も30年前も、すでに交通事故や転倒転落事故、スポーツ事故はあったわけで、
そのころから、見逃され続け、苦しみ抜いて医師転々としている人たちや、
精神病院で薬漬けになっている人たちや
他の原因不明、治療法なしの病名つけられたり、
誤診されて、その状態に甘んじている人たちだって、
たくさん、たくさん、、この日本にも世界にもまだまだ潜在しているはずなのに、
そのことを、世間に気づいてもらえない内容ばかりに感じた。
症状が多彩で、症状ごとに、患者は必死にさまざまな科の医師をめぐりやすいこと。
一見元気そうな外見の人たちは、
その死ぬほどつらい症状を訴えても、訴えても、とてもとても入院なんか絶対させてもらえないこと。
そもそも病人とさえ認めてもらえず、病院から追い出されてしまうこともあること。
最初の発症時から「なんらかの病で入院が必要な患者」と認められ、
入院させてもらえる髄液漏れ患者さんは、
たとえそれが病名はわからない段階であっても、本当に「入院させてもらえるだけで、
少なくとも病人として、最初から認められているわけで、」それだけでもう
誰にも相手にされないで、病院から追い出され見捨てられた患者よりは、
非常に恵まれているってこと。
外来で、各科で一般的な検査をしても、異常な検査結果がでないために、
ますます、症状を信じてもらえなくなること。
そうなると、ますます、入院治療が必要なほどの重症患者だとは
医師には思ってもらえなくなり、相手にされなくなること。
その状態で、
何年も何十年も見逃され苦しみ続けること、
病名がないから、病人とは社会的に認められず、
生きるために働かなければならないこと。
その間、本人のせいではないのに、周囲や医師の無理解で、
「あんたのせいだ、あんたの心や性格のせいだ、」と責め続けられ、
症状に加え、
無理解や、
理不尽な仕打ちにまで耐えなければいけないこと。
働けなくなり、収入を奪われること。
家族にさえ、支えてもらえないこともあること。
友人知人に去られ、夫婦間には溝が入り、親兄弟にもわかってもらえず、
大切な人間関係まで理不尽に破壊されること。
やっと、髄液漏れという情報を得て、専門医にたどりついても、
当時は、なんと、最初のRI検査から自費で、ブラッドパッチ治療はもちろん自費で、
自分にも貯金がなく、家族にもお金を出してもらえない人たちは、
唯一の治療でさえ、断念せざるをえなかったこと。
これらが
脳脊髄液減少症の他に病にはあまりない、特有の恐ろしさなのに、
これらの恐ろしさの特徴が、今までの報道では
私が見ていても、こちらにあまり伝わってこなかった。
今回の報道でも、まだまだ伝わってこないが、
少なくとも、以前の報道よりはよかったと思う。
マスコミは、働けなくなり、仕事も失い、
誰にも症状の苦しみを、その健康そうな見た目からは理解してもらえず、
孤独と絶望の中で、たった一人で生きねばならない人たちの存在を、
これからも、もっともっと
取材して、
報道して、脳脊髄液減少症の本当の恐ろしさを
世間に伝えてもらいたいと思う。
(マスコミ先導の報道はやめてほしい、なんていう無理解な医師の言葉には
負けないで報道してほしい。)
そのためにも、
最近の早期に診断治療に至れた、家族に支えられた恵まれた患者さんだけでなく、
配偶者にもわかってもらえず離婚に至ったとか、
家族の誰にも助けてもらえなかったとか、
怠け者、やっかいもの扱いされたとか、
そういう体験をした人たちが、語りだしてほしいと思う。
高次脳機能障害で怒りっぽくなったり、忘れっぽくなったり、計算ができなくなったり、
手紙の返事が書けなくなったり、文字がひどく乱雑になったり、
話があちこちとんで、普通の会話のやりとりができなくなっているのに、
誰も、それが髄液漏れによる「高次脳機能障害」や手のち密さの低下だと気づかず、
「あいつは変な奴だ。おかしな奴だ。ダメなやつだ。」と
その人の評価が下がるとか、
そういう誤解の嵐にさらされた人の体験を、だって、私以外にもいっぱいいるはずだと思う。
医師にも誰にも症状を信じてもらえなかったとか、
病のせいで、家族が崩壊したとか、
友人知人の足が次第に遠のき、孤立したとか、
職場を解雇されたとか、
もっと、もっと悲惨な体験をした人たちが、
勇気を持って、この病の現実を、
この世に伝えていかなければいけないと思う。
もっともっと、私たち、
過去の交通事故被害者や、過去の転倒転落事故での発症者が
もっと、どんどんマスコミに登場しなければいけないと思う。
15分近くの報道の中で、じっくり報道したのもよかった。
ブラッドパッチ治療のやり方の一つの、山王病院の例を詳しく見せてくれたのと、
なぜ、患者が横になると症状がやわらぐのかも、
穴のあいた竹筒の絵で説明したのもよかった。
ブールが当たって、声が出なくなったり、手の麻痺まで出て、
まさに、私が経験した「髄液漏れの特有症状」のいくつかを体験した男の子が、
ブラッドパッチ治療ではないけれど、
点滴治療やオーエスワンの治療で回復し、幸せな家族の姿を映してくれたのもよかった。
今までは、何度かブラッドパッチをしたのに、治らないじゃないか、というような
誤解が与えられやしないかと思うような報道が多かったから。
あの映像の中にも、
医師が症状から「髄液漏れ」に気付いたわけではなく、、
お母さんの執念で、自ら、「脳脊髄液減少症」という病名を探し出し、
治療を始めたことが回復への第一歩だったという現実を伝えてくださったと思う。
今までブラッドパッチの報道はあっても、
なんだ、ブラッドパッチしても治らないじゃないか、と誤解を与えかねない内容の報道が多かったが、
今回は
山王病院での患者さんの場合でも、ブラッドパッチ後に、
「動悸がなくなった。」などの具体的な患者さんの話が放送されて、よかったと思う。
でも、
治療直後の一時的な回復だけでなく、
その後いったん悪化したようになってから、本当の回復は、それからなんだけどね。
とにかく、
スーパーニュースの取材陣さん、いままでで一番いい、
報道内容をありがとう。
これからも、
長年見逃され患者さんから、最近の患者さんまで
交通事故患者から、
サッカーラグビーなどの球技のスポーツ事故から、
ホッケー、ゴルフなどのスティック系スポーツやら、
ボクシング、プロレス、など格闘技系のスポーツでの事故やら、
夫婦間や恋人間の暴力から、いじめによる暴力やら、
はげしい揺さぶられや、柔道による、脳の加速損傷が絡むと思われるケガとか
転落転倒事故やら、
道を歩いていて、上から植木鉢が落ちてきたとか、
とにかく、ありとあらゆるケースで、ケガをして、
髄液漏れを発症したと思われると診断された人たちが、
それぞれに、その体験を語っていってほしいと思う。
そうすれば、
この病が、いかに身近に潜んでいるかが、少しずつ少しずつ
世間に理解されてくると思う。
くじけそうになったら、応援歌を聞いて。
明日、また、「花は咲く」NHKで11時20分から放送されます。
(詳しくはここの右上の放送予定をクリックください。)
これから生まれてくる子供たちのためにも、
脳脊髄液減少症患者が、
普通の病気やけがの患者のように、
いつでもどこでも誰にでも、助けてもらえるような、
正しい社会にしていこう。
このままじゃ、絶対にいけない。
水俣病の過ちを、繰り返してはいけない。
昨日のNHK総合診療医ドクターGは
立つとくらっとする患者の病名は「褐色細胞腫」だってさ。
普通の医師は、「立ちくらみのする患者の病名が褐色細胞腫」だなんて想像できないわね。