新・本と映像の森 62 高沢晧司『宿命』新潮文庫、2000年
『宿命 ー 「よど号」亡命者たちの秘密工作ー』
北朝鮮について知るために、というか「深めるために」まず、この1冊。
「練合赤軍」の大量虐殺事件は有名だけど、同じセクトによる飛行機「ハイジャック」事件と彼らのその後については、あまり知られていない。
1970年(昭和45年)3月27日、ハイジャックの決行日、羽田発福岡行きの畿内でメンバーが半分もそろわず、やむなく決行を延期し、夜行列車で東京へ戻った。
原因は、学生の彼らは飛行機に乗ったこともなく、搭乗手続きに時間がかかることも知らなかったためだ。
1970年3月31日、日航「よど号」をハイジャックした9人は、北朝鮮の闇の中へ消える。
これは、北朝鮮の金王朝体制に偶然、迷い込んで、そこで待遇は「優遇」された者たちである。ただし、金王朝の下で生き延びるなら、それなりの「役割」を果たさねばならない。
それが幸せかどうか、考えさせられる物語である。ただし、この物語虚構ではない。真実おこったことである。
47年前、平壌に行った9人は。
田宮 高麿
岡本 武
小西 隆裕
柴田 泰弘
田中 義三(よしみ)
若林 盛亮(もりあき)
吉田 金太郎
ほか2人
主な内容は、① 彼らが生きねばならなった北朝鮮社会はどんなものだったか
② 北朝鮮で彼らが、どのように変化したか、その無残な結末
③ 彼らが70年代から80年代に、ヨーロッパなどでおこなった「運 動」
④ 北朝鮮で彼らが結婚した日本人女性たち
⑤ 北朝鮮へ拉致された日本人男女
おそらく ②③ の果てに、1995年11月30日、田宮高麿さんの死がくる。
それは1970年に警察に捕まって服役したため、北朝鮮へリーダーとして行き損ねた塩見孝也さんが平壌訪問を終えて、平壌を離れた翌日のことであった。
田宮高麿さんに、それまで病気の徴候はまったくなかった。
そして、高沢さんは、この本を書き始めた。