雨宮日記 8月30日(木) 『遠雷と蜜蜂』を読む
マンガ『ピアノの森㉔~㉖』に触発されて、恩田陸『遠雷と蜜蜂』を読み返す。音楽を会場の外へ持ち出す、など共通点を確認できた。
コピーなどとは言わない。2つともとてもいい作品。塵と海は似ているし、マサルはパン・ウェイに、亜夜と貴子は似ている。
以下、再録。
「新・本と映像の森 3 恩田陸『蜜蜂と遠雷』
2017年02月23日 15時42分38秒 | 本と映像の森
恩田陸/著『蜜蜂と遠雷』幻冬舎、2016年9月20日第1刷発行、507ページ、定価1800円+税
3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクールを舞台に、4人の16才から28才までの新進ピアニスト・コンテスタントたちの演奏と挑戦を描く。
「芳ヶ江国際ピアノコンクール」というのは、実在します。というより「浜松国際ピアノコンクール」のことで、当然、会場は浜松のアクトシテイです。
まあ、会場は、どこでもいいんですけど。
この小説の主人公たち、ピアニスト・コンテスタントたちだけはなく、その周囲の撮影者、審査員、調律師などを含めて、音楽とは何か、音楽は人間とどのような関係を結ぶのか、演奏面での探求・切磋琢磨を描いています。
それがメロデイまで聞こえそうなリアルさで描かれています。クラシックは大好きで、いつも聞いているので、それだけで最高です。
第一次予選から第二次予選、第三次予選と本選、4回の審査を描いてゆきます。
☆
題名の「蜜蜂と遠雷」、「蜜蜂」は養蜂家の父についてフランスの自然のなかで育った日本人の少年・風間塵(じん)のことですよね。
では「遠雷」は?
物語のなかで明示されていないように思いますが、 ボクは、たぶん主人公のひとり,13才で母の死に直面しピアノを絶った、いま20才の女性・栄伝亜夜のような気がします。この物語のなかで、いちばん好きな主人公です。」
もう1つ、再録
「本と映像の森33 一色まことさん著『ピアノの森1』講談社
2010年04月30日 04時56分05秒 | 本と映像の森
本と映像の森33 一色まことさん著『ピアノの森 1』<モーニングKC>、講談社、2005年4月12日第1刷、定価514円+消費税
ある町のある小学校5年3組に、東京から将来はピアニスト志望の少年・雨宮修平が転校してきたところから物語は始まる。
というより、転校生雨宮修平、
小学校のそばの“森”の横の売春街に売春婦の母親と住む一ノ瀬海(かい)、
海が小さい頃からそれで遊んだ“森のピアノ”、
そしてわけありそうな小学校の陰気な音楽教師・阿字野、
その3人と森のピアノ、4者がからみあって、物語が進行していきます。
第1巻は、雨宮修平は自分が弾いても音のでない森のピアノを海が弾きこなすのに驚き、阿字野は、自分が1年前に授業で弾いたピアノ曲を海が正確に記憶しているのに驚きます。
第1巻のテーマは、「たのしー」です。
雨宮の家に初めて来た海は、雨宮の家の「軽いタッチの」ピアノで、ラジオ体操の曲をジャズ風にアレンジします。
海の言葉「ピアノって楽しいよ!」
今15巻まで達して、雑誌「モーニング」で隔週連載している「ピアノの森」の基本テーマだと思います。
ピアノだけじゃないですけど。
「○○って楽しいよ」はすべての人の、すべての人生の基本テーマですね。
「楽しい」ということは、そこで自分が存在していると言うこと。
楽しくない、正確さだけを命令される「コンクール」への批判もこめて、第1部の物語が進行していきます。
第1巻のピアノ曲
阿字野さん編曲(という設定)の「茶色の小瓶」。アメリカンジャズの名曲で、1869年につくられました。
「茶色の小瓶」はお酒を入れた小瓶で「彼女はジン、俺はライム」というアル中のような夫婦を唄った歌です。
いいんかいな、こんな曲、小学校で教えて、阿字野先生!」