新・本と映像の森 249 カレル・チャペック著、栗栖継訳『山椒魚戦争』岩波文庫。1978年
2018年第16刷、訳者初訳1970年早川書房、488ページ、定価本体1140円。
原著1936年。著者は1938年に亡くなったチェコの文学者でSF『R・U・R』で世界最初に「ロボット」の言葉を人造人間に使った人。
物語は「スマトラからすこし西に当たる赤道のちょうどまうえのところ」に「タナ・マサという小島」がある。
そのタナ・マサの「魔の入江」に「海の魔物」がいると現地人は恐れて近づかない。しかし真珠に目がくらんだオランダ人船長がそこに潜入すると・・・・・・。
そこに棲んでいたのは、2本足のおとなしい山椒魚に似た両生類で知能があり、労働もできる。
人間たちは山椒魚を全世界に移植して労働させ始める。山椒魚たちは人類の文明を学んで、おどろくべき早さで文明への階段をかけのぼっていく・・・・・・。
そして・・・戦争が・・・。
チャペックさんは言う。
「私がこの作品で描いたのは、ユートピアではなく、現代なのです。それは未来の事態についての憶測ではなく、現代の世界、いまわれわれが生きている世界を、鏡に映し出したものなのです。」(p11「作者の言葉」)
そういう話は、手塚治虫さんが『鳥人体系』で書いているし、似たような生物では、マンガ家ゆうきまさみさんが『機動警察パトレイバー』の第何巻かで東京湾を舞台に黒いトカゲを描いている。
まだまだ、いろいろあると思う。