本と映像の森 310 森博嗣(ひろし)著『θ(しーた)は遊んでくれたよ』講談社ノベルス、2005年5月7日、297ページ、定価本体900円
偶然、今日、浜松市立中央図書館で見つけて借りた推理小説です。
自宅マンションから飛び降り自殺した25才の男子フリーターの額には赤い口紅で「θ(シータ)」の文字が書かれていた。
同じマークが右手の平に書かれた看護婦が病院屋上から落ちた。
繰り返される飛び降り事件・・これは自殺なのか他殺なのか‥。
若い大学関係者や病院関係者が友人関係も使って、事件の推理と解決にいどむ好傑作です。
みんな必死で推理を展開するのだけれど、やはり秀逸なのは、C大学2年生の海月及介(くらげきゅうすけ)くんとN大学大学院D2の「お嬢様」探偵・西之園萌絵(にしのそのもえ)、その秘められた恋人・N大学助教授・犀川創平でしょうか。
始めて読んだ森博嗣作品ですが、前作品も読みたくなりました。
ネット環境とリアル環境が虚実に混じり合って、すごくいいバランスの作品です。
人物像の造形も、とても好きです。
宗教は、集団ヒステリーなのか、そういう論議も、うれしいです。イスラム国も話題になっているなか。
すべて解決はしていません、謎の集団「MNI」や「まがたしき」の謎も解決されてませんし。後の作品で西之園さんと犀川先生が解決するんでしょうか?期待しますね。
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うれしいのは、作者は愛知県生まれで、この作品の舞台が「わが青春の地、名古屋」であることで、「N大学」は明らかに名古屋大学だし、「N大学病院」は、明らかに鶴舞ですよね。
地理関係がリアルでよくわかって楽しめます。
反町愛が西之園にいう皮肉、「年とらんつもりか?何かの一族かよ」というのは、萩尾元都さんの傑作l吸血鬼マンガ「ポーの一族」を言ってます。(32ページ)
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そうですねえ。正しいか正しくないか、よりは、「ぼくといっしょに遊んでくれたか」というほうが判断基準として選択されるような気がします。
つまり、主体者Aにどれだけ「見かけ上、寄り添ってくれた」ように主体者Aが感じたか。
これって、すごく怖い問題提起ですね。
客観的な評価ではなくて、主観的にその人がどう感じたかどうか?