新・本と映像の森 271 かわぐちかいじ『空母いぶき ①②③』小学館
ビッグコミックス、2015年10月・2015年10月・2016年2月、定価本体552円
軍事シミュレーションコミック。自衛隊がF35Bと「空母」いぶきを就役させた20XX年4月22日、東シナ海で中国軍は自衛隊との戦争を選択した。
中国軍は緒戦で与那国島、宮古島、多良間島、尖閣列島を攻撃占領、中国空母と日本空母「いぶき」との戦闘が始まる。
ボクが①②③巻を買ったところで5月に脳出血になり、後の巻を買い損ねた。いま
かわぐちかいじさんは、ボクも好きな『沈黙の艦隊』『ジパング』の著者。しかし、コミックとしてはすこしレベルが落ちたと思う。ひねりがない。人間が現象の単なる人形ではないか。
しかも現実としてもボクは疑問を感じる。
1 中国軍が自衛隊に所在を探知されず、まったくの奇襲であること。現代戦ではありえない。真珠湾ではあるまいし。
2 アメリカ軍が影も見えないこと。現代の日本の戦争は多国籍軍の戦争で有ること、戦争体制は日米共同戦争体制であることが無視されている。自衛隊単独の戦争というのは戦争計画としても存在するかどうか。
3 戦争は政治の現われであることが描かれていない。中国共産党中央委員会の核心の決断なしに戦争になることはありえない。日本の側は?日本の側は日本政府ではなくアメリカ政府の決断ではないのか。戦争コミックとして習近平中国共産党主席とアメリカ大統領が登場しなければ戦争にはならないのだ。
1、2、3といずれもリアリズムが欠如している。現在、『空母いぶき』は12巻まで発売中だそうです。ボクはいまのところ買うつもりはない。
なお、映画『空母いぶき』はコミックとは全然別の作品で、駄作です。相手の設定が架空の新興国家になっちゃってる。なんでこんなことをするんだろう。作品の冒涜だと思う。
なお、いぶきはサイズ的に空母ではなくて「揚陸艦」ではないかとか、「ステルス戦闘機」のはずなのにレーダーで空中戦をやってるとか軍事的な小さい疑問はありますが、わかったら何か書きます。