雲は完璧な姿だと思う。。

いつの日か、愛する誰かが「アイツはこんな事考えて生きていたのか、、」と見つけてもらえたら。そんな思いで書き記してます。

2種類の音楽

2013-05-10 00:04:40 | 勇気
「uzmetよ。。あのさ、
“もし” だけどな、
もしこの世界にさ、
音楽の種類......ジャンルみたいなものが2種類しかなかったとしたらさ、
その2種類とは何だと思う?」



以前働いていたレコード会社で、ある日、
社長のNさんに呼ばれ、社長室でジッ......と、
ツブラナ睨み(◎_◎;)!をきかされながら!?聞かれた質問。
その時は、我が儘にも
独自のインディーズ・レーベルを作らせてもらっていて。
まだ、そのレーベル初の作品を世に送り出すために
色々な準備に追われているような時でした。
Nさんは僕のデスクに突然、フラリと現れて、

「よう、忙しいか!? ちょっと話さないか、、、」

と言いながら直々に僕さんを拉致!?していきました。
僕はそのままNさんについていき、イソイソと社長室に入ると、
Nさんは何時ものごとく!?全くもって超高級な
「Martin(マーチン)」のアコースティックギターを
小脇にポチッと抱えだし。
ふっかふかのソファーにドッシリコと座られまふ。
そしてポロンポロン......♪と心地よいコードを爪弾きだしながら、
とても社長とは思えないラフさでもって、先ずは礼節!?
としての「定番のコード進行」のお話しや、
「そこからハミ出すこと」に関してのお話を
ひと通り受けることになります......はいー......



アわわッ!?( ̄◇ ̄;) 



ここっ!!



多分......



笑うところっす σ(^_^;)ハイーー......
ビビりのビビり。。
Nさん見てたらどしよよよ!??アセアセ。。
んなわけないよな......汗汗......
念の為何時でも逃げれるように車のエンジンかけとこっと......
ブィィーン。。。



で、ですね、
ソレ迄もディレクターになった時からこんなことはもう何度もあったので。
その時もそんなコード話などが落ち着いた後は、
二人して音楽についてあーだ、こーだ......と、
ちょっとヤンチャでマニアックなトークをして。
そして
「ワッハッハーーーっ!」
と、何となく場が温まったような......時に......
突然、冒頭の質問が僕に投げかけられてきたのです。



「ふぇ? (・・?) 」

「二種類だ。
二種類しかないとしたらどう分ける?」



相手は社長であり大プロデューサー。
元アーティストでもあり、
日本音楽界にさん然と輝く軌跡を残してきた御方。
迂闊な答えは命取り......血だらけの大惨事にもなりかねない。
折角お許しを頂いた新レーベル構想も
「やっぱっりだめだぴょーーーん!」
なんて言われたりするかもしれない......
むぅぅぅぅ......
なんか......質問を投げかけてきた時に、
目の奥に「キラーーン☆」と光るようなモノも感じたしな......
むぅぅぅ......
わ、罠か!?
もしや何かの罠なのか!?
に、二種類か、
うーむむむぅぅぅぅ。。。。。



「どうだ!?ン?(^.^)」



な、なんか、ニコニコしてるとこがみょ~に怖いな......むむぅ......
つーか、俺......
全く答えのこと考えてへんな......にょにょにょ......



「あのさ、」

「ハイ (・_・; 」

「あくまで俺たちは音楽ビジネスの世界にいるからさ、
音楽でなくて、音楽ビジネスの話になるんだけどさ。
そうするとな、
そこから考えると音楽は二種類しかないと思うんだよ。uzmet。」

「。。。」

「その二種類ってのはさ、こうだ。
売れたものと、売れなかったもの。
この世界これしか無いんだ。
そう思わないか?」

「。。。」

「ビートルズもストーンズも、クラシックだってさ、
バッハだろうとモーツァルトだろうと、ベートーベンだってさ、
今のマーケット構造とは当然全然違うとは思うけどさ、
当時の社会という中であるレベルまで人々に認められ、
話題になって、
ヒットみたいな形になっていたからこそ、きっと、
今に至るまで大勢の人に届くものとして残って来てるんじゃないかと思うんだよ。
だからさ、先ずはヒットしてさ、
それで大勢の人に知ってもらってから初めて、
そこから人々が時間や歴史を超えてソレをどう伝えていくか、
残していくかってことを始めていくんじゃないかと思うんだよな。
どうだ?」

「。。。(。・・。) 」

「先ずはさ、音楽ビジネスだからさ、
ヒットさせて、そのスタート台に乗らないとな。
そうでないと意味がないよな。この仕事やっているさ。
大事に思える作品であればあるほど、
アーティストであればあるほど、
そうしてあげたいと思うんだよな。
どうだ?」

「......すげーそう思います。。はい」

「みんなさ、アーティスティックだ、
カッコイイだ言われるものがあったとしてもさ、
何年も何年も経って、それでも残ってる音楽っていうのは、
実はみんな最初に、
そんなヒットという壁を乗り越えたものが
そこに辿り着けるんじゃないかと思うんだよな。
きっとさ、音楽って言うのは人類が始まった頃からあってさ。
モーツァルトなんかの時代にしても彼よりももっとカッコ良くて、
スゲーっ!て言われてた音楽ってのも絶対にあったと思うんだよ。
そういうの創ってる人っていたと思うんだよ。
いつの時代でもさ、そういうものって必ずあったと思うんだよな。
でもさ、
ヒットという壁を乗り越えないとそんなモノもみんな忘れ去られちゃうんだ。
きっと。
後の時代に伝えられなくなっちゃうんだ。
そういう意味でだけど、消えちゃうんだ。
今そんなクラシックの時代の、
その当時カッコ良かった音楽なんてお前知らないだろ?

......そんなふうにさ、
無いものになっちゃうんだよ。

だからさ、イイモノ、カッコイイものというのであれば尚更、
先ずはな、ヒットさせてあげないとな。
プロデューサーってのはさ、そう出来ないとな」



——————そんなN社長との会話。
もう、10年以上前の話。
それでも、とても鮮明に覚えています。

なんか、色んな音楽......いや、
自分の「仕事」というものに対する「甘え」や「幻想」みたいなものを
完全に吹っ飛ばされた記憶として
僕の中に刻まれているということなのでしょうか。

なんだか、
今でも新しいプロジェクトなどに取り掛かったりする度に
この時のNさんの話とマーチンのギターの音が聞こえてきます。
この話はあくまで「ビジネス」というフィールドに立った上での話しですし、
決して「正誤」を問う様な話とかでも無く。
ただ単にそんな話。
それ以上、以下でもなく。
どう受け止めるかも、理解するのかも、全て自由な話。
その時のNさんもそう言ってました。
そして、僕がとても良く解かっていたことは
「その時の僕にはとても必要だった話し」
なのだということ。



「厳しい世界へようこそ(^^)」



Nさんがことあるごとに、冗談ぽい雰囲気で、
ちょっと優しく微笑みながら口にしていた言葉。
こんな言葉や出来事さん達というのは、
今の僕の中ではちょうど「お守り」のようにして仕舞われています。



新卒の入社試験の時に頂いたN社長の会社のCD付きパンフレット・ブック。
僕にとっては永久保存的なものです。
書類審査を通過した一次試験の参加者全員に......
それは日本青年館一杯!の2千人!(@.@)
の人達に先輩社員や役員の方達から「手渡し」で配られていたもの。
このパンフレットと青年館のステージ!?ライブ?会社説明会?
や先輩方の立ち振る舞いを見て、

「絶対この会社に入りたいべよ!」

と当時の僕は思った次第でございまふ......
幸運な事に、社会人として最初に働けた会社、
触れた人々がこの会社の方々であったことを
僕は今でも本当に感謝していて、
とても幸せなことだったと心底思っています。
仕事における基本的なことや大切なこと、
人々と出会わせてくれたかけがえのない会社。
僕にとっては最初から最後に至るまで「家」の様に思えていた場所。

このパンフレットの最初のページに書かれている偉大な先輩、
プロデューサーK女史の言葉。

「どんなに時代が変わっても、
人間の基本的な感情は変わらないと思う。
人を愛したり、大切に思う気持ちとか、喜びや悲しみ。
そんな、人の深い部分に触れていく仕事ですよね。
音楽を作るっていうことは」


にほんブログ村 その他日記ブログ 日々のできごとへ
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リンクバナー