新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

記者さんの不勉強が気になるが:豊田さんの話は勉強になると思う

2012-07-05 22:27:33 | 医療

別の記事ですが、こちらも紹介します。

 

 あなたや大切な人が、もしも医療事故に遭ってしまったら? 事故とまでいかなくても、病院の対応などについてなんとなく釈然としなかったり、疑問に感じたりすることがあるかもしれない。そんな時、真摯に向き合ってくれる人が病院内にいてくれたなら、どんなにか心強いだろう。

 いきなり医療事故などというと、遠い世界のことのように感じられるかもしれないが、実はこれが意外と多い。「医療事故の全国的発生頻度に関する研究」報告書(厚生労働科学研究 平成18年3月)によると、有害事象の発生の比率 は6.8%(入院患者)。

 特定機能病院を含む18病院を対象に行われた研究であり、この場合の有害事象とは、次のとおりである。

有害事象の定義(※)
(1)患者への意図せぬ傷害(injury)や合併症(complication)で、
(2)一時的または恒久的な障害(disability)を生じ、
(3)疾病の経過でなく、医療との因果関係(causation)が認められるもの
※)厚生労働科学研究 医療事故の全国的発生頻度に関する研究報告書
~平成17 年度 総括研究報告書(H18 年3 月) 主任研究者 堺 秀人~より

 「医療の良心を守る市民の会」(永井裕之代表)が、日本における年間退院患者数の統計をもとにおこなった試算によると、医療における有害事象での年間死亡者数は約4万人。厳密には有害事象のすべてが事故と呼ばれるわけではない。そして現在、日本における医療事故の件数を全国的に網羅したデータはないため、あくまでも目安であるが、交通事故による年間死亡者数よりも多いとなると、いつ遭遇してもおかしくないことが想像できるだろう。

 その数を減らすための努力は行われているのだろうか。

 小さな声からはじまった、あるひとつの取り組みをご紹介したい。

 医療事故で息子を失った一人の女性が、仲間たちと一緒にスタートさせた活動が今年、また新たな一歩を踏み出した。

■なぜ死んでしまったの?

 「お腹が痛い」と、少し前まで泣き叫んでいた息子の理貴くんを連れて、豊田郁子さんは東京都内のある病院の夜間救急外来に駆け込んだ。2003年3月のことだ。しかし、24時間小児救急体制を敷いたその病院で、医療事故により理貴くんは不幸にも還らぬ人となってしまった。

 豊田さんは理貴くんが亡くなった直後のことをこう振り返る。「どうして息子が死ななければならなかったのか、知りたい一心でした」。しかしその時なぜか病院は、そんな家族の願いとは真逆の対応をとっていた。

 「今思うと一番驚いたのは、息子が亡くなった直後から病院の人たちの態度というか、雰囲気が突然変わったことなんです」。それまではごく普通に接してくれていた看護師も、メモを取りながらの事務的なやりとりのみとなってしまった。

 「看護師さんは明らかに上から指示されて、何かを記録するために私についているという感じでした」

■置き去りにされ二重、三重に傷つく家族

 悲しみにうちひしがれた豊田さんに対し、その後も病院側の対応のまずさは続く。

 入院後数時間で亡くなったため警察を呼んだのは病院側だったのに、理貴くんの死因に関して何の説明もないままに1カ月以上が過ぎた。カルテ開示を求めると応じたものの、豊田さんが最も不審に感じていた理貴くんへの診療対応の遅さについての認識は病院側にはなかったという。

 一方で、新聞報道されたあと即座に行われた記者会見では、病院側は診療対応の遅さと診療体制のミスを認めていた。この時点で理貴くんの死から2カ月以上が経っていた。

 しかも不思議なことに、会見は豊田さんたち家族に対してきちんと向き合ってミスを認めるよりも先に行われていた。事故調査委員会による報告書の説明も記者会見が先で、家族に説明があったのは会見から13日も経ってからのことだった。

 しかし残念ながらこれは、特別にレベルが低い病院での、特に対応が悪かった事例というわけではない。人間が関わる限りミスは一定の割合で発生する。そして、医療事故に遭ってしまった人やその家族には、豊田さんと同じような経験をしている人が多い。もっとも説明を受けるべき立場にいながら、なぜか置き去りにされてしまうのだ。

 大切な人を納得のいかない状況で亡くしたり、自らの健康を損なったりした医療事故の被害者の多くは、なぜそんなことになってしまったのか分からない苦しみを味わい、そのうえ病院側からの扱いにも傷つけられ、二重、三重の被害を受けたと感じていると、豊田さんは言う

■病院が努力してくれている姿勢が見えていたら

 現在豊田さんが理事長を務める、患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋では、医療者と患者・家族の間の信頼関係を築くことを目的に、医療従事者へ、コミュニケーションや対話促進のためのサポートや啓発活動を行っている。今年4月にNPO法人となり、さらに活動を充実させている最中だ。

 「重大な事故がおきてしまった時には、まず第三者に入ってほしいと感じるのではなくて、その場で一緒にいたスタッフから声をかけてもらいたいんです。でもその人たちもショックを受けてしまって、声をかけられないかもしれない」と、豊田さん。

 また、こうも言う。「私たちの知らない間に事故調査委員会が立ち上がって病院の中で調査されていたのに、そのことを伝えてもらえませんでした。病院が努力してくれている姿勢が見えていたら、気持ちがずいぶん違っていたと思うんです」。

 このような経験から架け橋ではまず、医療者側への啓発活動や患者相談を担当する人のための研修で、間接的に患者や医療事故被害者、その家族への支援を行うことからスタートしている。

■故清水陽一さんとの出会い

 架け橋の活動のきっかけは、ある一つの出会いからだった。

 2004年、悲しみのただ中にいた豊田さんに、「患者の視点で、医療安全に関わってもらえないだろうか」と持ちかけたのは、現在豊田さんが患者相談支援員として勤める新葛飾病院の前の院長、故清水陽一さんだ。

 清水さんは、「うそをつかない医療」を病院の理念に掲げ、「逃げない、隠さない、ごまかさない」の三原則の実践に取り組んでいた。「人は弱いもの。自分も弱いから、いつ隠したり、ごまかしたりしてしまうか分からない。だから患者の立場で見張っていてくれる人が必要だ」と、ことあるごとに話していた院長だった。

 豊田さんはそんな院長のもと、約1年をかけて患者支援室を立ち上げた。そしてここで、直接医師や看護師に相談できない患者さんからの相談や、ときには苦情にも対応する一方で、医療従事者からの患者さんへの対応に関する相談を受けるなど、患者と医療者の“架け橋”としての仕事を開始した。

■大事なのは、そこにいる当事者が対応すること

 「最初の頃は、患者さんと何かトラブルがあると『相談室さんお願いね』、みたいに丸投げされることもありましたが、大事なのは、そこにいる当事者が対応することなんです。病院の人間は中立じゃないから第三者を入れてほしいというのは、話がこじれて敵対関係になってしまってからのこと」と、豊田さんは言う。
患者支援室には、職員たちも気軽に相談に訪れる。医事課からの相談に応える豊田さん(左)

 患者支援室では患者さんや家族からの相談を直接受ける場合もあるが、病院のスタッフがしっかり患者さんに向き合えるようにするサポートを大切にしている。つまり対話の場をつくることだ。

 対話の場が用意されることで、患者さんや家族は安心できる。豊田さん自身、そのような場すら用意されなかった辛い経験をしているからこその視点だ。

 また、医療者側の当事者も、実はきちんと向き合いたいと思いながらできずにいると、大きなトラウマとなってしまうことがあるのだという。向き合える場をつくることは、双方にとってプラスとなるのだ

 患者支援室が立ち上がって7年。今では、職員が自分たちでできる限り対応をし、対応しきれないところをチームでサポートしあうという体制ができている。

 最初はこのような仕事が病院内で成り立つのかと心配もしたが、杞憂におわった。「スタッフが、自分がダメージを受けてしまって患者さんのサポートが難しいときに、一緒に入ってくれてありがとうと言うんです。やってみて初めて分かったことでした」。

■患者を支援する人を支援する

 患者支援室を立ち上げた翌年、ここで患者や患者家族と向き合うことの大切さなどをテーマにした職員向けの研修会も始まっていた。

 その取り組みをもっと院外に向けて行おうと、今の架け橋の前身「架け橋~患者・家族との信頼関係をつなぐ対話研究会」が立ち上がったのは2008年のこと。全国3都市で、医療事故被害者や医師、法律家などを講師とした患者支援相談員養成講座を行うなどの活動も始まった。

 そして今年4月、「患者・家族と医療をつなぐNPO法人 架け橋」が設立された。メンバーは、医療事故の被害にあった家族、医療者側で事故を起こしてしまった当事者、医師、法律家、医療コミュニケーションの研究者など。

 これまでの研修をさらに充実させていくこと(普及活動)と、患者相談窓口などで患者の相談を受ける立場の人へのサポート、そして患者・家族と医療従事者のよりよい関係やコミュニケーションなどに関する研究を3本柱で行っていく予定だ。

■正直に言ったら訴訟が増えるのでは!?

 そんなきれいごとを言ったって、医療ミスやインシデントを起こした当事者が正直に話したりしたら、訴訟が増えてどうしようもなくなるのでは? という心配も頭をかすめる。ところがそうではない。架け橋副理事のひとりで、自らも医療事故で母親を亡くしている川田綾子さんは、「なぜそのようなことになったのかが分かった方は、訴訟を起こすまでいかないという傾向があることが、最近の調査では分かってきています」と言う。  

 また社会保険相模野病院では、ミスやインシデントをきちんと報告し、患者側にも隠さず話すという取り組みを行ってきているが、この方針にしてからの方が職員も増え、逼迫していた財政も黒字に転換し、経営は順調なのだそうだ。

 もちろん、隠さず話すということが経営に直結しているとは一概には言えないが、少なくとも良い方向へと変化する要因の一つといえるだろう。

 院長の内野直樹さんは、職員の意識が変わり、職員アンケートではこの方針を続けた方がいいという回答が100%であったと、今年5月に行われたNPO法人架け橋の設立シンポジウムで報告している。

■息子の死を無駄にしない

 豊田さんはいま、病院での患者支援員としての仕事、架け橋の理事長としての仕事に加え、さらに患者団体のサポートも行うなど、さまざまな活動に日々とびまわっている。その原動力は、やはり9年前の医療事故から来る部分が大きい。「私たちの活動が、医療者間、医療者と患者のコミュニケーションが充実するきっかけになれば、息子の死を無駄にしないことになるのではないかと思っています」。

「架け橋」のホームページ
http://www.kakehashi-npo.com/

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いきなり医療事故などというと、遠い世界のことのように感じられるかもしれないが、実はこれが意外と多い。「医療事故の全国的発生頻度に関する研究」報告書(厚生労働科学研究 平成18年3月)によると、有害事象の発生の比率 は6.8%(入院患者)。

こう書かれていますが、有害事象と医療事故は違います。有害事象と医療事故を一緒にするような中途半端な記事を書いているのがどうかと思うのですが・・・。有害事象は薬であれば薬物との因果関係がはっきりしないものを含め薬物を投与された患者に生じたあらゆる好ましくない, あるいは意図しない徴候,症状,または病気をいいます。有害反応(adverse reaction)は、病気の予防、診断、治療に通常用いられる用量で起こる好ましくない反応であり薬物との因果関係があるものを指します。要するに医療を受けているうえで生じたあらゆる好ましくないものは想定の範囲であっても「有害事象」と言います

僕たちのような抗癌剤治療医は「有害事象」は常に起きていることになります。

 

そういった記者さんの不勉強なところは気になりましたが、豊田さんの話はその通りだと思いました。 

 

 

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複数の安全弁を:単純ミスを二重三重に確認するシステムを!

2012-07-05 22:05:22 | 医療

さて、続けます

 

 

 特定医療法人健生会「土庫(どんご)病院」(奈良県大和高田市日之出町、山西行造院長)が2010年9月、検査を受けた男性(53)に対し、胃がんの結果が出たのに胃潰瘍と誤って告げたうえ、1年間気付かず、放置していたことが関係者への取材で分かった。病院はミスを認めて謝罪したが、男性はその後、末期がんと判明。治療を続けていたが、今月3日亡くなった。家族は損害賠償などを求めて提訴する方針。【千脇康平】

 亡くなったのは、同県橿原市の建設業、石田政裕さん。10年2月、同県内の別の病院で胃カメラ検査を受け、胃潰瘍と診断された。ただ、念のため、同9月9日、土庫病院で改めて検査を受けた。同病院によると、胃カメラと細胞検査の結果、検査を担当した医師が胃がんと診断。しかし、同28日、別の男性医師が大腸など他の検査結果は本人に伝えたが、胃は2月の検査結果を見て胃潰瘍と思い込み、本人に胃潰瘍と告げて胃薬を処方した。胃がんとした最新の書類や写真などの検査結果が手元に届いていたが、男性医師は見ていなかったという。

 石田さんが1年後の昨年9月に土庫病院で人間ドックを受けた際、前回の検査で胃がんとした検査結果が見つかり、告知ミスが判明。すぐに兵庫県内の病院で手術を受けたが、腹膜播種(はしゅ)(腹部の中にがん細胞が散らばった状態)が確認され、手がつけられず閉腹。末期がんと診断された。同11月、セカンドオピニオンを得るために診断を受けた大阪市内の病院で、余命は「来年(12年)9月まで」と告げられた。

 土庫病院は山西院長らが3日午後、取材に応じた。「担当医師の単純な勘違いだった。検査結果を二重三重にチェックするシステムが不十分だった」と釈明。10年9月時点で適切に治療を受けていたらどうだったかについては、「診断結果の説明が(石田さんに)できず、精密検査などができなかったので、当時の(がんの)進行度は推定でしか分からない。現在、専門家の意見を聞いている」と明言を避けた。ただ、山西院長は「(治療が)遅れたことでがんの進行を許したのは否定できない事実。本当に申し訳ない」と話した。

 家族によると、石田さんは先月末に体調を崩し、土庫病院へ入院。今月3日朝、突然息苦しさを訴え、午前9時過ぎに亡くなった。

 ◇同意なく賠償打ち切り

 「俺が死んだ後、家族が困らないようにしてほしい」。石田さんは生前、毎日新聞の取材に、病院に対する怒りを語っていた。

 「お父さん、やせたな」。先月28日、石田さん宅。中学3年生の次女裕美さん(15)が言った。石田さんの背中などが痛むと、さするのが日課。妻久美子さん(53)も、夫の背中に手を当てる。そんな時、石田さんは「ぬくい」と言って頬を少し緩ませた。

 約20年前に会社を設立。燃料費に事欠く時期もあったが、自分の給料を抑えるなどして社員数人を雇い、家族を養った。3人の子宝に恵まれ、2人は既に成人した。

 告知ミスが判明した時、裕美さんの顔が脳裏に浮かんだ。「まだ死なれん。どうにかして」。余命は1年以内と言われた。家族で全国の病院を調べ、治療法を探した。行き当たったのは保険適用外の遺伝子治療など。東京の介護付き老人ホームに滞在して治療を受け、終わったら奈良の自宅へ戻る生活を続けた。

 末期がんと判明した後、裕美さんの将来の夢は「大きな病気を治す薬を開発する研究者」になった。亡くなる3週間ほど前、東京で治療を受けながら取材に応じた石田さんは、一生懸命勉強する娘の姿を思い、「(裕美さんが社会人になるまで)父として見届けたい」と語ったが、願いはかなわなかった。

 同じようなミスを二度と繰り返してほしくないと訴えていた石田さん。固く閉じた目から涙がこぼれ落ちた。「死ぬのが怖いからじゃない。悔しくて。納得なんかできないが、せめて家族が受け入れられる誠意を見せてほしい」。切実な言葉を残し、帰らぬ人となった。【千脇康平】

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悲しい話ですが、こういうのは医療ミスと言われても仕方がないことだと思います。というか、医療ミスだと思います。

ただ、この手の「明らかなミス」というのはシステム上安全弁が複数あればどうにかなるものです

 

後出し的に「あれをこうしておけばどうにかなったのに・・・」と言われるのは、おそらく意見が分かれると思いますが難しいことも多いのだといいたいです。

 

僕は運よく見逃しませんでしたが、腹痛で3回救急要請して、僕を指名して受診された患者さんがいました。1回目、2回目は緊急性のないものでしたが、3回目は本当に腹膜炎で緊急手術となりました。そういうこともあります(この時正直僕も「またか・・・」と思ったのは事実です。きちんと診察したので今までとの違いはすぐ分かりましたが)

 

ですので、本当はこのような明らかな医療ミス(告知し損ねた、胸部単純写真やCTを見ていなかった、手術する方の足を間違えたなど)を防ぐための安全弁を作ることが重要だと思います。

 

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神奈川の准看護師問題の日医の見解:個人的には同意見

2012-07-05 21:52:15 | 医療

こんばんは

 

今日は披露宴前の最後の調整に行っておりました。その後は奥さんと「Snow White」を見に行きました。一瞬「もののけ姫か?」と思うようなシーンもありましたが、それなりに楽しかったです。

さて、とりあえずこちらの記事を紹介します。

 

日医「黒岩知事は現場認識してないのでは」- 神奈川の准看護師問題で見解

 日本医師会(日医)は5日、神奈川県の黒岩祐治知事が打ち出した、准看護師の養成停止と医師会立などの准看護師養成所に対する補助金打ち切りに反対する見解を発表した。記者会見した藤川謙二常任理事は、「准看護師は地域医療を支えている中小病院・有床診療所において、看護職員として重要な役割を果たしている」と日医の見解を示した上で、「黒岩知事は、地域医療の現場の実態を認識していないのではないか」と述べた。

 日医は見解で、黒岩知事の方針に対し、「看護職員確保の将来構想はあるのか」と疑問を投げ掛けている。神奈川県の2010年の人口10万人当たりの看護職員数が全国最下位であることを引き合いにして、「民間病院は公立病院などに比べ看護職員数が少なく、准看護師が占める割合は高い。首都圏の神奈川といえども、准看護師が相応の役割を果たしていることは間違いなく、拙速な議論で誤った結論を導きだすべきでない」と強調している。

 藤川常任理事はこの日の会見で、「すべてが先進医療に対応できる看護師ばかりではなく、いろんなレベルの看護師がいていい。高齢化社会で、看護師が充足することはないだろう。准看護師からキャリアアップして、看護師になる道も残していくべき」と述べ、准看護師と、その養成機関の必要性を指摘した。

 日医としては、准看護師は都道府県知事免許であるため、神奈川県と県医師会の間で議論し、解決することを望んでいるが、県医師会とは今後も情報交換を継続し、県議会議員への働き掛けにも協力していく考えだ。【君塚靖】

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過去にも次のような記事を書きました

 

准看護師を減らすよりは活用したら?

医学部新設うんぬんよりも:准看護師をつぶす方向に行くのは反対

 

黒岩知事は医学系の集まりに来たりすることがあるので、興味とか危機感とかがあるのだと思いますが…やはり現場を見ていないという印象は否めません。

現実的でないようなところがあるとは思います。

 

しかし、その一方でポリオの不活化ワクチンなどでは積極的な働きをされていたと思います

現場からの医療改革推進協議会2日目:ポリオワクチンの話から

 

いろいろなことを考えながら、より良い方向に進めていただければと思っております。

 

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血液内科ってどんな診療科ですか?:後半は血液内科の奨め

2012-07-05 07:59:46 | 医学系

おはようございます

 

今日から結婚式披露宴準備で休みです。

午後には会場にいないといけないので、10時過ぎには出発しますがさしあたり簡単な記事を書かせていただきます。

 

実は旧Blogを書き始めたのが2006年7月6日で今日で丸6年経過…ということになります。その間、一般の方(患者さんやそれ以外のいろいろな医療従事者以外の方々)によく聞かれたのが

 

血液内科ってなんですか?

 

でした。ちょうど6年ということもあり、いまさらですが血液内科ってどんなところか書いてみようと思ます。

 

血液内科って…と聞かれたときにまず答えるのは

白血病とか悪性リンパ腫とかの治療をしている診療科ですよ。抗癌剤治療の得意な医師が多いです

ということです。

 

血液・・・というのは赤血球という酸素などを運搬するもの、白血球(好中球とかリンパ球など種類はありますが)という外敵と闘うもの、血小板という「血を止める」作用を持つものをまずあげます。これらは「細胞成分」と言われますが、水に溶けていない成分です。

採血した後、放っておくと上澄みと下に赤血球を中心とした赤い色の部分(よく見ると白っぽいのもあります)ができますが、そちらの成分を細胞成分と言います。

 

一方で上澄み液の方も血液です。そういうのを「血漿成分」といいます。様々なたんぱく質などを含み、特に我々が良くターゲットにするのは「凝固因子」と言われるたんぱく質です。

 

ですので、血液内科というのは「赤血球、白血球、血小板」という細胞成分にかかわる疾患と「凝固因子」にかかわる疾患を中心に診療しています。

 

赤血球の病気…と言われると貧血(鉄欠乏性貧血貧血(鉄欠乏性貧血)の患者さんに対する説明(患者さん向け)を中心に、さまざまな貧血があります)や多血症(二次性もあれば真性多血症(骨髄増殖性疾患(真性多血症)の説明(患者さん向け)):赤血球のがんもあります)があります。

貧血の中には「溶血性貧血」と言われる分野もあり、その中にも「自己免疫性(自分で赤血球壊してしまう)」だったり「発作性夜間血色素尿症」など赤血球の防御能力に異常が生じて壊れていくような疾患もあります。先天性溶血性貧血など、他にもいろいろな病気があります。

 

血液が作れなくなっていく疾患があります。例えば再生不良性貧血(量の異常)や骨髄異形成症候群(質の異常)など(骨髄異形成症候群の説明(患者さん向き))です。

これらの疾患は造血不全ということばでくくられますが、上に書いた「血液の細胞成分」が作れなくなり、貧血になったり、抵抗力がなくなったり、出血しやすくなったりします。骨髄異形成症候群は数だけではなく、質も悪いので大変ですし、白血病の前病変という一面もあります。

 

そして有名な急性白血病や慢性白血病慢性骨髄性白血病に対する説明(患者さん向け))などを中心とした白血病、リンパ節を中心に比較的「分化」したリンパ球が増える悪性リンパ腫悪性リンパ腫の説明(僕の説明の仕方))、形質細胞という後方支援部隊(免疫グロブリンを産生し、体を守る)の癌化である多発性骨髄腫など様々な病気があります。

白血球というのは「増殖速度が速い」ことに加えて、「全身に存在する」ため手術で取るというわけにもいきません。それ故、抗癌剤治療が中心となります。この血液悪性腫瘍は他の「がん」とはことなり、抗癌剤治療で比較的治る可能性が高い腫瘍です。

急性白血病の中にもさまざまなグループがあり、抗癌剤だけで70%から治る可能性があるAPL:急性前骨髄性白血病など予後良好群から、抗癌剤だけでは10%も治らないようなものまでいろいろあります。その抗癌剤だけでは治らない人たちを治すために行っているのが同種骨髄移植造血幹細胞移植のイメージは?:同種骨髄移植に関する説明)です。

他にも周期性白血球減少症、原発性免疫不全(個人的に診断したのは一度だけ。普通は小児科領域だし)など様々なものがあります。

 

そして血小板関係の疾患や凝固系の疾患があります。本態性血小板血症(骨髄増殖性疾患(本態性血小板血症)の説明)のような増えるもの(こいつが血栓傾向だけでなく、増えすぎると出血を引き起こします)や特発性血小板減少性紫斑病のような血小板が減っていくものまでいろいろあります。凝固因子に関連するものは先天性(血友病など)のものや播種性血管内凝固(DIC)のような様々なところで見られるようなものまで多々あります。

あとは珍しいところと言えばヘパリン関連血小板減少症(HIT)とかもありますね。

 

こういった疾患の特徴は外来治療でも入院治療でも病状の悪化に伴い救急対応の必要性があること。

出血などはもちろんのこと、普通の人は発熱したくらいでは何も思わないかもしれませんが、抵抗力のない患者さんたちには致命的になりうる。それ故、いつでも救急対応できるように備えています

 

また、種々の急変に対応できるようにベッドサイドの手技はだいたいできるようになっていると思いますし、知識も持っている必要があると思います。基本的に重症患者さんの管理はICUのようなレベルになるので、患者さんの管理能力も高いです。

ただ、血液内科医はきつい診療科の一つ(いつぞやの医師アンケートでは「きつい診療科部門第1位」(笑・・・・)であり、医師数はあまり増えていないといいます。

 

しかし、きついながら面白い診療科の一つです。

 

僕がこの診療科を選んだのはわけがあります

1、医師として腫瘍を相手にしたかった

これだと本当にたくさんの分野がでてきます。

2、手術ではなく、抗癌剤治療を中心に治療を行いたかった。

これも血液内科だけでなく、腫瘍内科もそうですし、乳癌や婦人科癌などは抗癌剤治療の必要性が高い分野です。

3、免疫療法などに興味があった

腫瘍の治療はいま進んでいっていますが、基本的には「細分化」です。個人個人に合わせた治療を、オーダーメイド化した治療を行っています。ただ、基本的に悪性腫瘍は免疫から逃げたことで大きく成長します。それ故、免疫のことをよく知らなくてはならないと思いました。そうすると免疫、つまり白血球のことを詳しく知る必要があります

悪性腫瘍を克服することは僕はできると思っています。癌が発生する原因には様々なものがあります。ただ、異常が発生した直後にそれが除去されれば癌化はしません。まぁ、少なくとも認識される前に消滅します。よって他の遺伝学的な話や分子生物学的な分野はもちろん重要ですが、その中でも免疫が最も重要と思っています。

4、血液内科では診断から治療までほぼ完結できる

消化器内科でももちろんEMRなどで早期胃癌をとったりしますが、進行がんは手術が必要になります。血液内科では診断から治療までずっと患者さんを診ていけますし、付き合い続けられます

5、研究と臨床がつながりが深い

血液という比較的とりやすい検体であること、臨床分野に「分子生物学」をはじめ、基礎的な内容が多いこと(それだけ難しいかもしれませんが、患者さんの病態をミクロの分野からも推測できます。楽しそうでしょう)があります

6、急変が多いため、さまざまな医療能力、医療技術が身につけられる

これは実際のところは若いうちだけかもしれませんが、若い時に血液内科を学ぶことで心不全、呼吸不全、ショック、敗血症をはじめとした各種感染症、腎不全・・・何でも対応できるようになっていきます

 

血液内科医は基本的に手術のようなことはほとんどしませんが(骨髄採取術くらいですね)、ベッドサイドでは様々なことをしなくてはなりません。その能力はどの診療科に行っても役立つと思っていますし、総合内科医としてもやっていく能力はつくと思っています

 

ということで、血液内科はこんな診療科で、非常に楽しいので来てください(笑

 

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