新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

医師不足に対する本田先生の思い:CBの記事より

2012-07-06 11:32:47 | 医療

さて、この後ちょっと出かけますので、その前にこちらの本田先生の記事を紹介します。

CBからです

 

「医師が足りない」本田宏氏が声をあげる訳

 済生会栗橋病院の本田宏院長補佐は、勤務医でもあり、医療の現状を積極的に情報発信していることでも知られる。なぜ本田は医師になったのか。本田を突き動かすものとは。(島村友太)

■なぜ医師になったのか

 洋品店の息子として生まれ、働く両親の姿を見て育ってきた本田。幼いころからの将来の夢はパイロットで、医師になるなど、夢にも思っていなかった。そんな本田の人生を大きく変えたのは、宮崎航空大学の受験に旅立とうとしていた高校3年生の秋のことだった。

 「お願いだから、パイロットにはならないでほしい」。

 それまで、何も口を出してこなかった母が、はじめて泣いて頼んできた。戦時中の記憶から、息子をパイロットにするのに抵抗があったようだった。母を泣かせてまでパイロットになろうとは思えず、本田は泣く泣く夢をあきらめた。

 将来が見えなくなった本田が、どうせ浪人覚悟だからと受験したのが、担任教師に「問題がシンプルだから」と勧められた、弘前大医学部だった。まさか、合格するとは思っていなかった。
 「これがわたしの、今では話すのも恥ずかしい、医師になった理由です」と本田は笑う。

 ただ、もともと医師を目指していたわけではなかったものの、本田には、医師の仕事に対して漠然と、ポジティブなイメージがあったという。幼いころから、自分の体調が良くない時に、治療をしてくれた優しい小児科の医師の姿から、「医師とは、やりがいのある、人のためになる仕事なのだろう」と想像していた。将来自分が医師になった時には、あんな風に患者さんに感謝される医師になろうと思った。

■現場で見たギャップ

 1979年、本田は弘前大を卒業。外科を志望し、同大医学部第一外科に入局した。外科を選んだのは、在学中、世界初の肝臓移植を成功させたトーマス・スターツル氏の講演を聞いて感銘を受け、「将来は臓器移植に携わり、劇的に人を治療できる医療に携わりたい」と思ったからだ。

 ただ、現場で経験する医師の労働環境は、想像していたのは違う、驚きの数々だった

 「月月火水木金金という感じで、とにかく働き続ける生活でした」。
 26歳で結婚した本田の給料は、家賃などの必要経費に消え、アルバイトをしないと家族を養っていけない状況に陥ってしまった。はじめは、これが当たり前なのかと思っていたが、家族を顧みる余裕もなく、昼間は病院勤務、夜はアルバイトと、土日も働くのが当たり前の生活を10年近く送る中で、違和感を覚えるようになっていった。そうした違和感は、臓器移植の見学等で米国の医療をかいま見て、日本の貧弱な医療体制と比較するようになって、さらに膨らんでいった

 子どものころ抱いていた「やりがいのある医師の仕事」というイメージは、静かに崩れていった。また、外科医としての夢だった臓器移植も、日本では脳死の問題がなかなかクリアされなかったため、遅々として進まず、移植医療に閉塞感を感じるようになっていた。

 1989年、新規開院した埼玉県済生会栗橋病院に外科部長として赴任した後も、大学病院と同じような、忙しい生活が続いた。はじめ外科医は3人で、本田は後輩医師の指導をしながら、緊急オペの対応などをこなした。医師としてのキャリアを一定程度積んだ当時も、365日、心が休まる瞬間はなかった

 「なぜ経済大国であるはずの日本の医療現場はこのような状態なのか」-。

 そんな思いは、日増しに高まっていった。
 
■現場から情報発信を

 そんな時、医療制度について学ぼうという現場の医師らで構成される「医療制度研究会」の立ち上げに誘われた。

 「漠然と抱えていた日本の医療への疑問を、ここでなら解消できるかもしれない」。

 なぜ医師はこんなにも忙しいのか。待遇を良くできないのか。医師の数は適正なのか―。こうしたことを数々のデータを基に調べ、医師の置かれた環境を把握していくようになった

 「わたし自身がさまざまなエビデンスを基に得た情報の中には、世の中で言われていることとまったく違うものもありました。例えば、医師数について、OECD(経済協力開発機構)のデータを基に判断すると、絶対数が足りていないのに、医師を増員しようと言っても、過剰になるから必要ないと言われる。医療費を抑制しようという考えを前提条件に、このように訴えている人が多いことも分かりました」。

 社会の認識がおかしいと思ったら、それを是正するために、自ら発信していかなければいけないと思った。講演活動や執筆活動をはじめ、メディアにも積極的に露出するようになり、医療現場で感じることを、データと結びつけ、発信するようになった。歯に衣着せぬ物言いから、敵を作ることも多いが、その背景には、医療はこのままではいけないという、強い危機感がある。

■訴え続ける理由

 あの時、母親に泣き付かれていなければ、パイロットとして大空を飛び回っていたのだろうか―。ふと、そう思うこともある。ただ、庶民出身の自分だからこそ抱くことのできる、医療を良くするためのアイデアもあると考えている。

 「誰か個人に対して怒っているわけではないんです。ただ、現状の医療の在り方に甘んじている、われわれ日本人そのものの体質には怒りを感じます
 確かに医療現場は簡単には良くなりません。だからといって、政治も、選挙もあるのに、黙っているのはおかしい。でもそれで、『おかしい』とだけいっても国民に伝わりません。
 正しい情報がなければ正しい判断を下すことは不可能。医療の現状に対してこまめに情報を出して、1人でも気づいてくれる人が増えてくれたらいい。そういう思いでやっています」。(敬称略)
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ちなみに僕は子供の時診てくれた小児科の先生が
「この子は頭が悪いね」
といったのを覚えています。
 
親も言っていたので、確かに言ったのでしょうw
 
そういう医者にはなるまいと僕は思って、いまやっています。患者さんからはベッドサイドにしゃがんで話し込むので「小児科の先生みたい」と言われますが…ああいうわけのわからない小児科医にはなるまい…と思ったりw
 
 
さて、本田先生の書かれている内容は全くその通りと思ってしまいます。
 
 
 
ただ、どういう風に増やすのか。2手先、3手先を読みながらやっていかなくてはならないと思います
 
あぁ、このセリフを思い出してしまった
「戦いとは常に二手先、三手先を読んで行うものだ」(BY シャア)
 
日本医師会も厚労省も過去の話から何かを学ぶことはないのかと思ってしまいますね
 
 
戦前の日本か(笑
 
では、そろそろ出発します。行くべきところがあるので・・・。

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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兄弟間移植?それとも血縁不一致移植(NIMAやNIPA)?

2012-07-06 09:25:32 | 医学系

おはようございます

 

今日は結婚式の細かい準備、二次会のこと、ハネムーンのことなどをやります。まぁ、夜は今度職場を離れる後輩の送別会を行うらしく、呼んでもらったので参加してきます

 

さて、先程

「息子がRCMDで移植をすることになりましたが、ドナー候補に父親(HLA-B,C,DRB1の1つずつがミスマッチ。Hapioidenticalで、GVHD方向適合HVG不適合)と、1歳2ヶ月の妹(HLAidentical sibling)でどちらで移植をするかで大変悩んでおります」
「父親をドナーとして移植をした場合(3/8拒絶があるとだけの説明は受けました)と妹をドナーとして移植をした場合とのそれぞれのリスク、成功率などを教えていただきたく投稿しました」

とコメントをいただきました。

同種骨髄移植に関してはこちらの記事を参考にしてください。

造血幹細胞移植のイメージは?:同種骨髄移植に関する説明

 

さて、上の記事では書いていなかった専門用語が結構並んでおります。RCMDというのは骨髄異形成症候群の一つの疾患です。症候群=疾患の集まりですよね。

HLAというのはヒト白血球抗原で、白血球の血液型です。血小板にもHLAのA、B,Cは存在しています。

 

同種骨髄移植を行うときに注目するのはこの白血球の型です。

白血球の型は言ってしまえば「旗指物」です。これで敵と味方を識別しています

 

このHLAは両親からもらってきます。染色体というものに遺伝子は乗っかっています。ヒトの染色体は2本ずつ、両親から一本ずつもらってきます。息子さんであればお父さんから22本+Y染色体、お母さんから22本+X染色体で46本になります。ちなみにHLAは22の常染色体のうち6番目に長い「第6染色体」に乗っかっています。

で、親が完全に一致する確率は0ですが、兄弟は25%の確率で一致します。

けど、初期研修医の時に初めて検査したあの家族は・・・HLAが兄弟全員+親が一致というすごい家族だったな…・(汗

 

追加して言うとHLAで重視されるものは「A、B、C、DR」ですが、他にもあります。全部合わせるのは不可能ですが、兄弟間は完全一致の可能性があります。A24などは日本人の35%くらいが持っているはずなので、これをご両親が持っていて…という確率はありますが、細かいところが一致するとは思えません。

で、GVH方向とかHVG方向と言われてもわからないと思いますが、Gはグラフト・・・すなわち骨髄とか臍帯血とか、Hはホスト・・すなわち患者さんです

GVHD(Graft versus Host Disease)は移植した骨髄が患者さん側に攻撃する病気で、GVH方向に○○というのは生着後に患者さんが攻撃を受けるリスクを、HVG方向というのはその逆で生着しないリスク…すなわち拒絶される可能性を示しています。

ここで困るのはお互いがお互いを敵と認識するのもどうかと思いますが、運が悪いと・・・一方は味方と思っているのに、もう一方は敵と認識して攻撃をかけ続けることがあります。それが非常に面倒なことです。

 

 

もう一つは骨髄異形成症候群と急性白血病の移植ではちょっと趣が違う印象があります。

同種骨髄移植って

前処置

生着まで

生着後

と分かれます。前処置でできるだけ細胞(腫瘍細胞も、患者さんの良い細胞も)を減らすことが1つめです。あくまでイメージとしてですが、入れる骨髄にとっては競争相手や敵が減るわけです。競争相手である患者さん本人の細胞が多かったら負けてしまう可能性がありますし、腫瘍細胞などが多ければ先に腫瘍細胞が増えて負けるかもしれないし、無事増えることができた(生着)としても敵が多ければ戦いに負けるかもしれない。

 

白血病だとそういうことを本当によく考えますが、骨髄異形成症候群は血液の不良品なので敵との戦いよりは「確実に生着させること」を考えるような気がします。もともと相手は「不良品」なので血液が増える速度は遅いです。そういうイメージを持ってください。

 

あと、血縁間HLA不一致移植に関して…これの情報が多いのは実は一人っ子政策をしている「中国」なんです。兄弟がいないので親からの移植をせざるを得ないということですね。そういったのも含めていろいろ情報はあるのですが、自宅のPCがそういう情報を拾えるようになっていない(すいません、大学のPCでいつもやっていたので)ので、わかる範囲で情報を提供いたします。

ちなみに僕も1回だけ血縁間HLA不一致移植をしたことがありますが、あの時はGVH方向にミスマッチで結構白血病はうまく抑えることができましたが、GVHDがやはり強いですね。

 

 

まず、難しいと思いますが血縁間非HLA一致同種骨髄移植のガイドラインがあります

http://www.jshct.com/guideline/pdf/2009HLA.pdf

 

ここにまず「HVG方向の不適合抗原数がGVH方向の不適合抗原数よりも多い場合(すなわちレシピエントが同型(homozygous)のHLA座を有する場合:右表のB#、C、D#)は、そうでない場合に比べて有意に生着不全が多い」と書かれています。これも元論文があります。

 

今回のNIPA移植を行うのであれば生着不全が多いことになります。

 

で、HVG方向の2-3座不一致の場合です

そのまま抜粋します。
「HLAがGVH方向には適合ないし1抗原不適合であるが、HVG方向に2ないし3抗原不適合であるドナー(表のC)からの移植は、十分な前処置を行えばHLA適合ないしHLA1抗原不適合移植に準じて行うことが可能であると考えられるが、多数例を解析した報告が無いため、臨床試験として行うなど慎重に施行されるべきである。: CⅢ(注1)
根拠:
HLAがGVH方向には適合ないし1抗原不適合であるが、HVG方向に2ないし3抗原不適合であるケースが存在する(表のC)。この場合、生着不全のリスクは上昇するが、理論的にはGVHDのリスクはHLA適合ないし1抗原不適合移植と同等である。そのため、これらに対する移植と同様のGVHD予防により移植が可能であると考えられ、一部の施設では施行されている。しかしながら、これらを多数例解析した報告は無く、その位置づけについては、今後の検討の結果を見て判断されるべきと考えられる。また、毒性を軽減した前処置(reduced-intensity conditioning, RIC)を用いる移植、いわゆるミニ移植、では生着不全のリスクが高くなるため、施行には特に慎重であるべきである」

 

ちなみにCⅢと書いているのは「エビデンスレベルに乏しく、専門家や権威者の意見に基づくもの」ということです。

 

あと僕があまりNIPA移植に関しては知りませんが、NIMA移植というのはよく言われています。

NIMAというのはIMAがお母さん由来の抗原でIPAがお父さん由来ということなんですが、お母さんのおなかの中にいる間に触れたことのないお父さん抗原に対して、何らかの免疫寛容(敵じゃないのだという認識を持つ)ことを利用した骨髄移植です。

 

そういうアメリカでやった骨髄移植の結果でNIMA移植とNIPA移植はNIMAの方が生着率が良いということですが、今では免疫抑制剤が良くなったのでそのNIMA効果はないのではないかという話もあります。ただ、今の時点ではIMAの方が有利という話で落ち着いているのではないかと思うのですが・・・。

 

小児の領域での移植と成人領域での移植は僕の中ではイメージが大きく違います。ですのであまり適当には書けないのですが、今言ったようなことがPointになってくると思います。

お子さんの体重あたりで骨髄のとる量は決まってくると思いますし、そのあたりのことは成人領域の移植を行う僕たちとは考え方が少し違うと思います。Dataで示すわけではないのですが、

 

1、もともと小児領域ではGVHDが起きにくい印象があること

2、MDS(おそらくRCMDなので芽球の増加はないでしょうし、あくまで染色体異常がどのレベルかによりますよね。RCMDだから血球の減少は2系統以上で0.5点・・・の移植であり(成人だったらRISTで十分)生着することを念頭に置きたい

3、HVG方向3座ミスマッチだと前処置をかなり強力にしないといけない

 

などから、もし妹さんの負担が許容範囲内であると小児科の先生が判断されているのであればそちらの方が良いような気がします

あと感覚的にですが・・・成人であればSibling Donorが得られなければ骨髄バンクなどをまず探します。HLA不一致移植はそれでもダメなときにやるか、兵庫医大みたいに再発を繰り返す例にやるなどですかね・・・。小児領域はよくわからないのですが・・・

 

あくまで参考程度に考えていただいて、主治医の先生とよく相談して決めていただければと存じます。

不明なことがあればまたご連絡いただければと存じます。

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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