AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

代田文彦先生のツボのイメージ改訂版

2012-01-15 | 経穴の意味

代田文彦先生は、多忙な臨床の傍ら、精力的に原稿執筆された。それは本や雑誌となり、印刷された形として発行され、一部は著者ということで手元にも郵送されてくる。
玉川病院鍼灸スタッフは、こうした印刷物を見て、初めて代田先生の考え方を知ることも多かった。
 1979年11月~1980年8月に、3回シリーズで季刊誌「理療」という雑誌に、「迷いながらの鍼灸」というタイトルで書かれた記事がある。2011年1月11日付の本ブログで一度その内容を紹介したこが、手持ちの資料不足で紹介できない部分が相当あった。しかし2012年1月、玉川同期の百合草正博先生が、「その資料なら持っている」というので郵送してくれた。その結果を受け、今回は、代田文彦先生のツボのイメージの全部を掲載することができた。


1)三陰交‥‥婦人科一切
・下腹部とりわけ子宮との関係を強く感ずる。
・子宮頸部に特に関係があり、三陰交の刺激は子宮頸部を緩ませる。
・従って妊娠初期しは刺激しない方がよい。
・子宮頸部の収縮が強いために径血の排出がスムースにいかないことにより月経痛の人は、これをゆるませるために三陰交を使う。
・肝の亢ぶりによる自律神経の調整作用。

2)陰陵泉‥‥婦人科一切
・下腹部領域のイメージ。それも何となく後腹膜という感じ。

3)足三里‥‥上部消化器の病、健脚
・臍からみぞおちにかけての領域で、とりわけ胃の働きを活発化する。
・鼻から咽にかけての作用もある。
・胃の噴門から上部の中空の管と関係するようで、これはゲップ感覚に似ている。
・古来は長旅をする際には、必ずここに灸したものである。

4)照海‥‥足冷・咽痛
・咽喉部と足首以下の血流障害との関連。
・咽との関連から、腎機能低下しているために派生してきていると思われる浮腫・頭痛等々に何となく取りたくなる穴

5)委中‥‥項頸部次いで腰部 
・腰が痛い人が来ると、委中に血絡があるかどうかが気になる。
・項頸部の血絡あるいは紅斑を目にする時、項の局所から瀉血がしたくなると同時に、委中に血絡をみつけて瀉血してみたいと思うほどに、この二点間の対応関係は密である。

6)承山‥‥肛門付近、痔
7)懸鍾‥‥項頸部
寝違いの治療は、局所をさけてここだけで奏功することが多い。

8)陽陵泉‥‥身体の側面
・側頭部痛にはじまり、肩関節痛、片痲痺に結びついている。
・胃酸過多では、足三里の代行
・膝の要
・胆嚢穴との関連から胆・肝との関連も除外できない。

9)中封‥‥脳とりわけ視床下部付近

10)内関‥‥上咽頭から胃の噴門の下付近
・上咽頭から胃の噴門の下付近まで
・それに左胸痛の心臓の領域に属するあたりが含まれる
・横隔膜
・食道とか胃の上部も漿膜の水っぽいというか、浮腫のきた状態
・針を用いて灸は用いたくない

11)尺沢、少商‥‥咽
・尺沢は咽の領域。高さは口蓋垂の基底部から喉頭軟骨くらい
・どちらかというと正中に近い範囲が有効
・深さ的には、口腔、咽頭、喉頭の粘膜表面から頸筋、頸椎の領域まで及ぶ
・尺沢が咽の正中に近い領域なのに対し、少商は外側。
・咽は咽でも扁桃領域。アデノイドの付近まで及ぶ。

12)少海‥‥頸の側面~耳
・頸の側面、それも中心よりやや後の領域から耳にかけての領域、顔面外側の副鼻腔付近
・後頭部から後頸部にかけての、コリ、痛み、つれ、あるいは耳閉塞感、耳鳴などに使って効果の現れることが多い。

13)合谷‥‥針麻酔
合谷は、針麻酔の時に使う。抜歯、副鼻腔炎の手術の時に多用した。
合谷は重要穴とされるが、小生は針麻酔の時以外は、あまり使う機会がない。
その理由は、灸の痕を虎口に残すことに抵抗があるからである。
顔面に効かせるというニュアンスは、合谷よりも手三里に印象が強い。
顔面で顎とか歯とのかかわりが強いのは、手では温溜、列缺付近である。
上顎よりも下顎に強く作用する。
列缺は、顎よりも、もっと奥の咽から期間の領域とも関連が深い。


14)曲池、和髎、天柱‥‥目 
曲池は目の領域である。目といても表面の結膜とか角膜の領域。目の表面と関わるように、
皮膚の比較的表層とは、全身にわたって何らかの影響力をもっていると考えたい。従って皮膚がかゆいときとか、皮膚病のときに取穴したくなるし、ごく表層の病変ということで、風邪のときにも取穴したくなる。
和髎・目窓は、少し奥に入った虹彩付近と関わり合いが深い。
天柱・上天柱あたりは、網膜から視神経と関わり合いが深い。