G.W.F. Hegel
Philosophische Propädeutik
Erster Kursus. Unterklasse. Rechts-, Pflichten-, und Religionslehre.
Zweiter Abschnitt. Pflichtenlehre oder Moral.(※1)
Philosophische Propädeutik
Erster Kursus. Unterklasse. Rechts-, Pflichten-, und Religionslehre.
Zweiter Abschnitt. Pflichtenlehre oder Moral.(※1)
ヘーゲル『哲学入門』
第一教程 下級クラス 法理論、義務論、および宗教論
第二章 義務論、もしくは道徳論
§32
Was nach dem Recht gefordert werden kann, ist eine Schuldigkeit. Pflicht aber ist etwas, insofern es aus moralischen Gründen zu beobachten ist.
第三十二節[法と道徳]
法律にもとづいて要求することのできるのは責務(Schuldigkeit)である。しかし、道徳的な根拠から見られるかぎりにおいては、それは義務(Pflicht)である。
Erläuterung.
説明
Das Wort Pflicht wird häufig von rechtlichen Verhältnissen gebraucht. Die Rechtspflichten bestimmte man als vollkommene, die moralischen als unvollkommene, weil jene überhaupt geschehen müssen und eine äußerliche Notwendigkeit haben, die moralischen Pflichten aber auf einem subjektiven Willen beruhen. (※2)
義務という言葉は、法的な関係についてよく使われる。
法的義務については人は「完全なもの」であると見なし、道徳的義務は「不完全なもの」とみなしている。というのも、法的な義務は一般に守られなければならないものであり、一つの外的な必然性をもっているが、しかし、道徳上の義務は主観的な意志にもとづくものだからである。
Allein man könnte eben so die Bestimmung(※3) umkehren, weil die Rechtspflicht als solche nur eine äußerliche Notwendigkeit fordert, wobei die Gesinnung fehlen kann oder ich kann sogar eine schlimme Absicht dabei haben. Hingegen zur moralischen Gesinnung wird Beides erfordert, sowohl die rechte Handlung ihrem Inhalt nach als auch, der Form nach, das Subjektive der Gesinnung.(※4)
しかしながら、人はまさにこの完全と不完全の判断を転倒させることもできる。というのも、法的な義務それとしては、ただ外的な必然性のみが要求され、そこには心情を欠くことができたり、あるいはそこで私はまさに悪意をもってやっていたりすることもできる。それに対して道徳的な義務にはおいては、内容においても正しい行為が要求されるのと同様に、また形式においても心情の主観性が、その両方が要求されるからである。
※1
先の第一教程の第一章においては、人間の「意志」から出発して、物の占有から所有へ移行する中で、法概念の発生の必然性が叙述され、さらにその法の現実的な領域としての国家が論じられて法理論一般の必然性が明らかにされた。
§32からは、法の対象となる人間の意志における側面から、その法的な責務と道徳的な義務が考察される。まず法的な義務(責務 Schuldigkeit)と道徳的な義務(Pflicht) との異同が論じられ、両者の「完全性」と「不完全性」が論じられる。
※2
法的な義務(責務)は、その外的な必然性、すなわち客観的な「実現性」からいえば、その強制性から、責務の実行性は実力によって担保されているという点で、道徳的な義務よりも完全である。道徳的な義務の実行は、個人の主観的な意志によって左右されて、その実現には必然性と客観性を欠いているゆえに「不完全」なものである。
※3
die Bestimmung
評決、規定、定義などの訳語が当てられる。物事の意義が限定され確定されることである。
そこから、目当て、統制、割り付け、指定、使命、宿命、天命などの意義も出てくる。
die Bestimmung の概念については、すでに序論についての説明の中でも触れている。
ヘーゲル『哲学入門』序論についての説明 七[理論と実行、形式と内容] - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/DTP3i2
※4
※2の場合とは反対に、行為と意志というそれぞれ両者の客観性と主観性の点から、その形式と内容の統一という面からみるなら、「法的な責務」においては、心情や意図を、主観的な意志の内容をその必然的な要件とはしていないという点において「不完全」である。それに対して「道徳的な義務」においては、その実行において、行為という客観的な「形式」とともに、主観的な意志としてその「内容」、心情や意図も要件とされるゆえに「完全」である。道徳的な義務においては、その遂行にはそれに相応しい心情や意図がともなっていることを求められるからである。
立場、観点が異なれば判断も逆転するという「弁証法」の事例がここにも説明される。
法と道徳との関係については、すでにヘーゲル『哲学入門』序論についての説明 二十三〔法と道徳について〕においても考察している。
ヘーゲル『哲学入門』序論についての説明 二十三〔法と道徳について-夕暮れのフクロウ https://is.g/cwt34d