北朝鮮の弾道ミサイル…政府、米朝双方の動きを注視(読売新聞) - goo ニュース
北朝鮮とアメリカの猿芝居
アメリカが「悪の枢軸」とまで明確に規定した北朝鮮の悪行について、その国家的な貨幣偽造、麻薬売買、大量破壊兵器の密輸などのあれほど悪行について、明らかに最近のアメリカの政策に変更が見られる。
アメリカの政権の内部からは、ラムズフェルドは国防長官を辞し、北朝鮮の金正日独裁専制政府に対してもっとも強硬な姿勢を示していたジョン・ボルトンは国連米大使を辞任し,ウォルフォウィッツは転任先の世界銀行を不祥事のために辞任し、現在のチェイニー副大統領はほとんど影を潜めてしまった。そして、現在はクリントン前大統領以来の国務省の官僚であるヒル国務次官補が北朝鮮との交渉に当たっている。
中東の民主化を強力に推し進めようとした、いわゆるアメリカの「ネオコン」派に対して、イラク戦争に反対するわが国の自称「平和主義者」たちには、彼らに嫌悪と憎悪を抱くものが多いが、日本の国益に寄与したのは、むしろ、これらの「ネオコン派」の勢力だった。正義感も強く日本の拉致問題にももっとも協力的で、核問題と拉致問題の解決は、北朝鮮の金正日体制崩壊以外にないと信じていたのは「強硬派」のボルトン氏だった。
アメリカ議会で民主党が多数派を占めるようになりつつある現在において、今のアメリカの対北朝鮮政策は、日本にとっては最悪とものとなりつつある。
いや、むしろ最悪は最善でもあるともいえる。というのも日本の「平和主義者」たちの、アメリカに守られながらアメリカを批判するといった甘えと哀れな偽善が許されなくなりつつあることを認めざるを得なくなるだろうからである。
民主党が多数派を占めつつあるアメリカ議会は、日本のいわゆる「慰安婦問題」で中国、韓国の言い分を聞き入れても、日本の反論には聞く耳を持たなかった。
日本の「平和主義者」たちの好きなヒラリーの属するアメリカ民主党には親中国派が多く、アメリカの下院外交委員会で「従軍」慰安婦に関する対日謝罪要求決議案が可決されたばかりである。アメリカがそうして日本を冷たく突き放すことは、子供の日本が親離れをし、親のアメリカが子離れして、互いにより対等な独立国家として同盟関係に入っていく上で、そして、太平洋戦争の未曾有の敗北による精神的な退廃から、日本国民がようやく復活する契機を見出せる点で、それなりに意義があるかもしれない。
これからは、より自由で自立した独立の国家として、対北朝鮮や対中国、対ロシアなどの北東アジア政策の再構築を日本も余儀なくせられてゆくだろう。これは必ずしも悪いことばかりではない。国家の危機は、国民の倫理的な背骨を正すことにもなりうるからである。
北朝鮮の金日正政権が核兵器を放棄することをまともに信じているとすれば、それは日本の一部の極楽トンボだけだろう。アメリカもそんなことを信じて北朝鮮と交渉しているものは誰もいない。今回のアメリカの譲歩で、核カードの威力に味をしめた北朝鮮はなおさら核を放棄するはずもない。北朝鮮は、イラクのフセインが、核兵器をカードに持たなかったがゆえに崩壊させられたことを知っている。
これからの日本の困難は、北東アジアの六カ国協議で、日本の国益が他の五カ国と矛盾するようになったとき、どれだけ東アジアにおいて孤立に日本が耐えて、自由と独立を維持しながら、自らの平和と国益を守り抜けるかである。
「国際関係における諸国家の相互の関係においては、そこでは諸国家はそれぞれが特殊なものとして存在するから、激情や利益が、もろもろの目的や才能と能力が、暴力、そして不法と背徳などの内的な特殊性が、最高度に突き動かされて飛び跳ね回るだろう。それは、広大な現象の世界において、外的な偶然性が遊び戯れるのと同じだ。そうした中では、人倫的な全体そのものは、国家の独立性は、思いがけない偶然性にさらされることになる。」 (ヘーゲル『法哲学§340』)
日本もまたこの偶然性に翻弄されないように、十分に対応してゆく必要があるだろう。しかし、現在のわが国の指導者たちと国民に、それに耐えうる器量があるだろうか。