夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』中級  第二段  自意識  第二十六節[衝動]

2023年12月22日 | ヘーゲル『哲学入門』

ヘーゲル『哲学入門』中級  第二段  自意識  第二十六節[衝動]

§26

Dies Gefühl seines Andersseins widerspricht seiner Gleichheit mit sich selbst.(※1) Die  gefühlte Notwendigkeit,  diesen Gegensatz aufzuheben, ist der  Trieb. Die Negation oder das Anderssein stellt sich ihm als Bewusstsein, als ein äußerliches, von ihm ver­schiedenes Ding dar, das aber durch das Selbstbewusstsein be­stimmt ist: 1) als ein dem Trieb  gemäßes  und 2) als ein  an sich Negatives,  dessen Bestehen von dem Selbst aufzuheben und in die Gleichheit mit ihm zu setzen ist.

第二十六節[衝動]

(自意識の)他者性のこの感情は、意識の自分自身との同一性に矛盾している。この矛盾を解消しようとする 感じられた必然性  衝動 である。否定もしくは他者は、意識として、一個の外的なものとして、自分とは異なる物として現れてくるが、しかし、それは自意識によって規定されているものである。
 1) 衝動に相応するも のとして、そして
2)それ自体否定的なもの として、その存在は自意識自身によって解消せられ、そうして、自己に一致したものとされる。


※1
欲望とは「感じられた矛盾」である。
自意識の中に生まれる他者、外的なものは、自己の本来的な同一性に、アイデンティティに反する矛盾するものであるから、自意識はそれを解消して、同一性を、アイデンティティを回復しようとする。それが衝動である。

(自意識内の他者性や異物を排除しようとする衝動、これが民族的な規模で起きたものがイスラエルとハマスなどの異民族間で起きている抗争である。だからお互いに破滅したくなければ、それぞれの国内で過激派を抑制して二つの国家を別個に形成し、平和を確立して共存の関係を作り上げるしかない。移民問題などもこうして必然的に発生する。)

 

 

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ヘーゲル『哲学入門』中級 第二段 自意識 第二十五節[欲望]

2023年12月13日 | ヘーゲル『哲学入門』

ヘーゲル『哲学入門』中級  第二段  自意識  第二十五節[欲望]

A. Die Begierde

§25

Beide Seiten des Selbstbewusstseins, die setzende und die auf­hebende(※1), sind also unmittelbar miteinander vereinigt. Das Selbstbewusstsein setzt sich durch _Negation des Andersseins_ und ist _praktisches_ Bewusstsein. Wenn also im eigentlichen Bewusstsein, das auch das _theoretische_ genannt wird, die Bestimmungen desselben und des Gegenstandes sich _an sich selbst_ veränderten, so geschieht dies jetzt durch die Tätigkeit des Bewusstseins selbst und für dasselbe.(※2) Es ist sich bewusst, dass ihm diese auf­hebende Tätigkeit zukommt. Im Begriff des Selbstbewusstseins liegt die Bestimmung des noch nicht realisierten Unterschiedes. (※3)Insofern dieser Unterschied überhaupt in ihm sich hervortut, hat es das Gefühl eines Andersseins in ihm selbst, einer Nega­tion seiner selbst, oder, das Gefühl eines Mangels, ein _Bedürfnis._(※4)

 

A. 欲望

第二十五節[欲望]

自意識の二つの側面、定立する面と止揚する面は、したがって互いに直接に結びついている。自意識は他の存在を否定すること を通して自己を定立するから、実践的な 意識である。それゆえ、また理論的 とも呼ばれる本来の意識において、意識の規定と対象の規定 それ自体が 変化するときは、今このことが、意識自身の活動を通して、意識そのものに対して起きる。この止揚する活動が意識にもたらされることは意識自ら知っている。自意識の概念のうちには、まだなお実現(解消)されていない区別が存在している。この区別一般が意識の中に少しでも残っているかぎり、意識は自分自身の中に他者の感情を、自分自身が否定される感情をもつ。言いかえれば、欠乏の、欲望 の感情が生まれる。

 

※1

die setzende und die auf­hebende Seiten(定立する側面と、止揚する側面)

「定立する側面」とは自意識の対象を変えようとする側面であり、「止揚する側面」とは自意識が対象を意識内に表象もしくは観念として保存することである。

意識は自己を対象とすることによって自意識(自己意識)となったが、自意識には二つの側面があり、一つは、対象を意識する場合 ── すなわち「対象意識」と、もう一つは、自分自身を意識する場合 ──「自己意識」である。

前者が、止揚する側面(die auf­hebende Seiten)すなわち理論的意識であり、後者が定立する側面(die setzende Seiten)すなわち実践的意識である。

※2

自己意識、すなわち実践的意識は、たとえば、鉄を変えて剣にしようとするが、そのことによって同時に、対象も鉄から剣へと変化する。こうして自意識の活動によって対象意識、理論的意識も変化する。

※3

die Bestimmung des noch nicht realisierten Unterschiedes. (まだなお実現されていない区別の規定)─── 「いまだ解消されていない区別の規定」ととった。

※4

自意識の活動によって、たとえば、鉄という対象を剣に変えようとしたのに、いまだ鉄が釘にしかならなかったならば、自意識の概念のうちには、釘と剣との区別が残されたままである。自意識にはそこに自ら否定された感覚が残り、そこから欠乏と欲望の感情が生まれる。

 

 

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