むかし、「安全第一、仕事は第二」などと言って歩いているとぼけた親爺がいた。
仕事の進み方が遅くなっても、安全に進めようと言いたかったのだろうが、あれは快く耳に入ってこない言葉だった。
その言葉がなぜ変だったのか。
いまごろになって二つの理由が見つかった。
ひとつは、第一、第二と順に並べるには、それらが同じ次元で考えられることでなければならないということ。
もうひとつは、安全には比べる対象が元来ないので、二番手三番手は考えられないということ。
二つ重なれば変の自乗になる。
ふたつめのことでは、あのお利巧なお姉さまさえ、比べる対象を持ち出すべきでないところに、つい口を滑らせてしまった。
「世界一」「日本一」という呼び声はあっても、「世界二」「日本二」という言葉はないのについうっかりしたのだろう。
一の字は、それを見ると数字と間違えやすい。
「第一に」と切り出した人の話を、第二第三はなどと考えながら聞いていると、肝心なことを聞きそびれる。
勘定ばかりしていると安全第一にことが運べなくなるのだ。
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