むかし「苦楽」という雑誌がありました。
創刊の大正13(1924)年1月号には、直木三十三(当時三十三歳)のはじめての小説が載っています。
執筆者の顔ぶれをみると、凄い雑誌です。
この「苦楽」は life の訳語だそうで、人が生きることには苦も楽もあって、しかも苦が先、それ当たり前だったのでしょう。
いまでは楽の割合が多いほど佳い暮らし方のように思う人が増えました。
苦が悪いこととされ、それを避けるほうが正しい生き方のように言う人もいます。
しかし、苦楽と正否は別次元のことがらです。
苦楽は半々ぐらいがよさそうなので、苦を全く味わうことのなかった人は、生き方の体験が普通の半分ということになります。
そういうひとが、未体験側の半分に行き会ったときには、もう途方に暮れるしかなさそうです。
多くの苦に巡り合った人が特に偉いわけでもありません。
苦を自力で乗り越えた人が偉いと言えるので、自慢のたねにはなりません。
それはほかの人が褒めたたえることなのでしょう。
さほどでもない苦から、やたらに逃げ回っていれば、それが正しいか否かではなく、せっかくの機会を逃すことになります。
逃げているとき、それが実は苦なのだということに、その人は気付いていません。
逃げていておもしろいのは、鬼ごっこ、子供の遊びです。
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