浜辺には古い木片がときどき落ちている。
雁は季節に合わせて海を渡る。木片をくわえて行って海の上でひと休みするとき、止まり木にするという話を聞いた。
もっとよい別の木を見つけたか、あるいはくわえる雁のほうがいなくなったか、止まり木が浜に残されることがある。
雁にお礼を言いながらそれを拾い集めて、風呂を沸かす。雁風呂と呼ぶらしい。
あまり大きくてはくわえるのに骨が折れるし、小さすぎては止まり木にできないし、ちょうど頃合のものを探すのも、雁さんにはひと仕事だと思う。
この木片もそうなのだろうか。
聞いても返事はもらえない。
にぎやかな、晴れやかな木端というものはあまりないが、浜の木片はとくに寂しい。
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