バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

修学旅行の思い出話

2013-09-13 15:04:19 | バネ
 いつも絶好調!ならいいんだけど、なんだか気が乗らない、やる気が起きない、集中できない、こんな時誰だってあるでしょう。こんな状態は子どもにだって当然あるわけです。

 その子は教室に入った瞬間から、ヌベーッとした空気を漂わせていた。話しかけると気のない応答が返ってくる。何かあったな、と思う。つい「どうした?」と聞いてしまうと、おきまりの返答「別に。」
 これじゃ親子の会話みたいでしょ。それだけこの子は私に気を許しているのかと思い直しながら、アンニュイな空気をあえて無視して授業を続ける。

 この子に限らず,こういう状態で授業に来る子たまーにいるけど、たいていは「先生の無駄話」を披露すると途中で元気になってくれる。この日もそう。ひょんなことから小学生の時の修学旅行の話になった。話しながら当時のことを思い出し,引き出しを一つずつ開いているうちに、ある感情をはっきり思い出した。

 それは、こう。

 6年生の時の修学旅行先は新潟の海辺の町。市内の小学校で調整するらしく、日程が重なり同じ旅館に宿泊することになったのは,市内中心地にある大規模小学校。先方は何クラスもある学校だから、山奥の1クラスで30人に満たない我が小学校が組み合わされたのでしょう。
 せっかく同宿になるのだから、夜食堂で2校交流会を開こうと先生方が企画したのでしょう。そのために私たちは発表会の準備をした。私は司会者となった。全体の流れを皆で考えた。壇上での挨拶は誰がする,学校紹介は誰がする。みんなでリコーダーで演奏しよう,等。そして本番に向け練習した。海を見るのが初めてという子がいるくらい、海に行くことそのものが一大イベントだった子もいるだろうけど、何度も交流会のリハーサルしただけに徐々にこの会は、特に司会者だった私にとっては、修学旅行で大きなウエイトを占めていた。

 宿の廊下で大きな小学校の子とすれ違う。少し緊張する。皆都会の子で大人びて見えた。今は緊張感あるけど、でも交流会を終えれば距離が縮まるのではという期待もあった。
 5年生の時に学校を代表して市内水泳大会に出場した。教頭先生の運転で学校代表の数名が市内プールに行った。更衣室はごった返していて、着替え棚のある場所はすでに町中の大きな学校の子達に占領されていた。学校だけでなく,皆体も態度もでかい。それだけで私たちは萎縮してしまい,おまけに市民プールの水は真緑色で気持ち悪くて、記録は惨憺たるものだった。帰りの車で教頭先生から「おまえらなー」と慰めともあきらめともとれる言葉をかけられたけど、「みんな男みたいなしゃべり方するんだよ。おっかねーし」って私は更衣室での顛末を披露し、「そうか、そうか」と教頭先生に頭をなでられた。
 そんなおっかない子達だけど、交流会やれば仲良くなれるという期待があった。よその学校の子にあったら元気よく挨拶するようにと事前の指導があったこともあり、「こんにちはー」と言ったときの相手の反応が微妙であったことに一抹の不安はあったが。
 そして迎えた夜。
 先生はこう言った。
 「○○小学校の皆さんは夜勉強会を開くことになったので,交流会は中止になりました。」

 とてもくやしかった。
 田舎もんと見下された感じがした。
 せっかく練習したのだからと先生の提案で、その夜相手校のいない食堂で練習したとおりの発表会を私たちだけでやることになった。
 なかには怒ったままの子がいる。そんな意味のないことやらないと言う子もいる。しばらくやるやらないの話し合いがあり、司会者である私は先生に促され渋々先陣を切ることになった。
 「皆さん、と言ってもみなさんはいませんが、こんばんは。」といちいち言い訳を付け足し,用意した台詞を取り繕いながら,泣きたくなりながら続けた。

 この時のことを思い出してしまった。もう何十年も心の奥にしまっていたのに。話しながら泣きそうな自分がいる。子どもだって毎日精一杯なんだよな、と改めて思い そうして気づいたら,目の前の子が元気になっていた。
 
 これで残り時間は楽しい授業ができるね。


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