バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

エイヨーあるどー。

2017-09-16 19:45:43 | NPO法人アルファバドミントンネットワーク
陸上部とバドミントン部協同で始めた稲作、ハイブリッドスターライスプロジェクト、いよいよ大詰め。

稲作の国に生まれ、半世紀を過ごした今、わたしは多くのことと向き合った。
星野さんとの最初の打ち合わせにて、稲作というより農業に無知であることを思い知らされた。まず広さの単位からしてわからない。一反ってどれくらいなのか。
平米で説明してもらい、
「大体バドミントンコート何面分ですか?」
と確認し、よくわからないから見に行こうとなった。
種まきのことを播種(はしゅ)と言うのも知った。
感嘆したのは、播種の時、稲トレーに土、種、水、肥料が流れ作業でオートマティックにセットされるシステムに始まり、籾すり、袋詰め、そして30キロの米袋をトレーに積み上る省力化システム。人の知恵ってすごいなーと見入ってしまった。そして何より、コンバイン。稲を刈り取りながら脱穀し、トラクター内にたまった米は排出ボタン一つでザーッと軽トラ荷台のコンテナに移される様、藁がまさにワラワラとコンバインの横に落ちていく様。すごいなー、の連続。
こうやって半年間このプロジェクトに携わり玄米になった今。

その感慨を語るのが今日のブログではない。

今日には今日の感動がある。

ザーッと脱穀した米は一晩乾燥機にかけられ次は籾すり。そこで未成熟の米は自動でより分けられる。そうして脇に寄せられた米、くず米が30キロほど出た。
星野さんは、
「これ、くず米。精米して米粉にすれば食べられっから。団子にでもすればいいよ」

後はしめ縄作りと思っていたわたしは、この一言で、来ちゃいましたよ。
”くず”として排出された物が、何かに有効利用され、おいしい物になり、みんなで食べる。
なんかこの設定、わくわくするではないですか。

米粉にしてくれる農家、岡田さんを星野さんに紹介された。

岡田さんの家は道路から蹴出しの長い脇道を進むとその奥にあった。

こちらでくず米を米粉にしてもらえるかと尋ねると、
ビニールハウスから出てきた岡田さんは「ん?」って表情。
それはそうですよね。突然見ず知らずの人が庭先に車で乗り付けたのだからね。

街角のコイン精米機を調べたら、くず米は精米できないとなっていたから、くず米だけど大丈夫なのですかと遠慮がちに聞くと、
「見せてみな」
くず米を手に取って、
「いいよ。やってやるよ」
それからくず米袋をはさんでしばらくおしゃべりした。このハイブリットスターライスプロジェクトのこと、玄米をこれからみんなで分けること、くず米を米粉にして何か作って食べたいということ。岡田さんもこれまで町の子供達の稲作体験に永年関わってこられたとその時の様子などを話してくれた。

くず米を預け1日経った今日、今から米粉を引き取りに行きたいけれど大丈夫ですかと聞くと、
「だいじょうぶだよ、できてるよ」

岡田さんは納屋の前で待っていてくれたのだろうか、庭先でニコニコ顔で迎えられた。
「この間、あぜ道に大勢並んでたの、あれかい?」
稲刈りの日近くを通りがかったとのこと。
「やっぱりあれ、あんたたちだったか」

米粉を車に積み込み代金を支払おうとすると、
「いいよ、いらないよ。あんたたちは人の為にやっているんだろ。これでもうけるわけじゃないんだろ。代金はいらないよ」

米粉を袋詰めしてみんなに配ろうかと言うと、
「粉配るだけじゃもったいないべ。なんか作って食べなきゃ、だめだべ」
何か作るってまた一大イベントになりそうだからちょっと弱気になってつい言ってしまったけど、ピザかすいとんでもいいですかねと言い直すと、
「ピザ、いいねー」
くず米だから少し色が黒いから、ヨモギ入れて団子にするといいとか、普通の米よりもちもち感が強く、
「エイヨーあるどー」
おいしい食べ方をいろいろ伝授していただいた。

「これでよかったら、また来年も来な。またやってやっからよ」

そして「がんばってな」と手を振って見送られた。

公の心を持つこと。
くず米粉ピザ、食べる前から栄養一杯もらいました。

図書館とバネ

2017-09-05 12:05:58 | バネ
 受験生が図書館に行って勉強するとか言うが、どうしてわざわざ図書館に行くのか理解できない。なんで自主勉するのに人が居る所行くかなー。
 何か調べるものがあるからとか、冷房がきいているから等図書館に行くにはそれなりの理由はあるかもしれない。しかし、今だったら家に居ながら手元のスマホで調べたい情報はだいたいゲットできる。冷房ない家ならいざ知らず、電気代節約の旨味は、公共の場の席取り、他人との煩わしさによるストレスというデメリットを越えることはない。

 バネを卒業した子が、「ここで勉強させて欲しい。家じゃ集中できないから」と言うので、空いている席でご自由にどうぞと高校生には自習室としての使用を随時許可しているが、とは言いながらも、なんで家で集中できないのか、わざわざ先生の説明や中学生の話し声が響くバネにやって来るのか解せなかった。

 なかったというのは,今は解せるようになったと言うこと。

 週末、ふと思い立った。
 自分の勉強がある。いろいろ資料を広げられるバネでやる。だったらその時間中学生に自習室としてバネを開放してもいいのではないかと。調度定期テスト前だし,何人来るかわからないけど、「家じゃ集中できない」って言う子が多いから何人かはやって来るだろう。

 午前3時間、午後3時間の自習室開放。
 前日の連絡だったが、5人の中学生がやって来た。

 私は最前列の机一列を使い,テキスト、資料、CD,スマホを並べて自分の勉強を始めた。
 後ろの席に生徒たちは点々と座った。
 質問があればしても良いことにしていたが、だれも質問せずそれぞれに6時間を過ごした。

 整理したい知識、覚えたいことはやはりノートに手書きが一番だ。
 たくさん字を書くときは手が疲れないように2Bの鉛筆を使う。
 芯がすぐに丸まるから,鉛筆削りで数本まとめて削り手元に並べる。
 書き味滑らかなルーズリーフを用意する。
 整理事項を分類するカラー付箋を手元に置く。
 これでスタンバイオッケー。

 背後で文字を書く音、本をめくる音が聞こえるが、時折音が聞こえなくなる。
 他人が気にならない時間を持つ。
 一人で教室にいるような錯覚に陥る。
 ゾーンに入った。

 久しぶりにまとまった時間集中した。
 雑草生い茂る草地を、まずチェーンソーで草刈りし、目的地までの道を作り途中に目印の旗を立てながら進む。そんな作業がことのほかはかどった。
 まだ目的地までは遠いが,先が見通せるからいつでも途中から道に迷うことなく歩き始められる状態に整えることができた。

 背後の5人はこの時間何をどうしていたか知らない。自分のことに夢中になって途中振り向かなかったような気がする。それぞれが何かに黙々と取り組んでいたということだけはわかった。

 不思議な感覚。
 先生と生徒ではない、空間と時間を共有した仲間の様な感じ。


 図書館にわざわざ出向いて勉強するって,こういう感じなんだ! と今さらながらにわかった。

 この感覚、やみつきになりそう。
 
 今後随時,自習室開放しようかな。