水の門

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歌集『カインの祈り』

澤本佳歩歌集『カインの祈り』
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挽歌・十五首

2009年03月28日 14時30分14秒 | 投稿歌
来月10日締め切り分の歌稿を提出しました。
今月の初めに、教会でだいぶ可愛がっていただいていたご年配の男性が亡くなり、しばらく堰を切ったように歌を詠みました。今回集めたのは、その方がご存命の頃のものも含めた追悼歌です。


朗読を辞せる手紙を悔いており翁の入院長引きたれば

ご主人の看護に追わるるご婦人の手首を折りし報せに痛む

休み居てあばらの古傷痛むたび看護の婦人の復調祈る

一時間「主よ共に居て」繰り返し夕飯の後訃報の入る

礼拝後「元気になったら食事でも」最後の言葉想えば弱く

「翁をもう苦しませないで」祈りしを主は聞かれしか軽率を悔ゆ

逝く人の悩める吾を励ますと寄越せし手紙形見となりぬ

聖壇に飾らる遺影の溌剌とこちらに向かい手を振りくれる

献花して棺覗けば血色の良き面(おも)なりて眠る如くに

少し笑み献花の人に声掛ける喪主の姿に言葉失う

葬式の聖句と讃美歌自選して死と向き合いし力強き意思

逝く人に手向けし花を持ち帰る弟(おと)を気に病み沈める母に

手向け花大きな花瓶に挿す母の微笑む頬と手元を見遣(みや)る

玄関に飾りし百合の厨まで香の立ち込めてしばし佇む

讃美歌に厚み加えしバス・バリトン今は途絶えて亡き人を知る


(4月10日締め切り分、『樹海』2009年6月号掲載予定)
コメント (2)
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