『<新>校本 宮澤賢治全集 第一巻:短歌・短唱(本文篇)』を読み終えました。『銀河鉄道の夜』と情景がオーバーラップする歌を引いておきます。
・ひるもなほ星みる人の目にも似むさびしきつかれ早春の旅
・西ぞらの月見草のはなびら皺みうかびいでたる青き一つぼし
・山なみの暮の紫紺のそが西にふりそゝぎたる黄なる光を
・きら星のまたゝきに降る霜のかけら墓石石は月光に照り
・寒行の声門たちよ鈴の音にかゞやきいづる星もありけり
・金星の瞑するときしわれなんだすまことは北の空はれぬゆゑ
・そらに居て緑のほのほかなしむと地球の人のしるやしらずや
・南天の蠍よもしなれ魔物ならば後に血はとれまづ力欲し
・風ふけば岡の草の穂波立ちて遠き汽車の音もなみだぐましき
・はだしにて夜の線路をはせ来り汽車に行き逢へりその窓は明く
・つくられし祭の花のすきますきまいちめんこめし銀河のいさご
・空ひくく銀の河岸の製板所汽笛をならし夜はあけにけり
・うろこぐも月光を吸ひ露置きてばたと下れるシグナルの青
・この惑星夜半より谷のそらを截りて薄明の鳥の声にうするゝ
・ふくよかにわか葉いきづきあけのほしのぼるがまゝに鳥もさめたり
・さそり座よむかしはさこそいのりしがふたゝびこゝにきらめかんとは
・双子座のあはきひかりはまたわれに告げて顫ひぬ水色のうれひ
・星群の微光に立ちて甲斐なさをなげくはわれとタンクのやぐら
・わが為に待合室に灯をつけて駅夫は問ひぬいづち行くやと
・この暮は土星のひかりつねならずみだれごころを憐れむらしも
・夜の底に霧たゞなびき燐光の夢のかなたにのぼりし火星
・うすら酔へるつめたき気層ほの赤きひかりのしめりめぐるきらぼし
・ある星はそらの微塵のたゞ中にものを思はずひためぐりゆく
・なまこ雲ひとむらの星西ぞらの微光より来る馬のあし音
・オリオンは西に移りてさかだちしほのぼののぼるまだきのいのり
・三日月は黒きまぶたを露はしてしらしらあけの空にかゝれり
・流れ入る雪のあかりに溶くるなり夜汽車をこめし苹果の蒸気
・つゝましき白めりやすの手袋と夜汽車をこむる苹果の蒸気と
・しらしらと銀河わたれるかしはゞら火をもて行けど馬も来たらず
・天の川しらしらひかり夜をこめてかしはばやしを過ぎ行きし鳥
・かしはばらうすらあかりはきたるなりみなみにわたる天の川より
・あまの川ほのぼの白くわたるころすそのをよぎる四つの幽霊
・かしはゞら路をうしなひしらしらとわたる銀河にむかひたちにけり
・秋ふけぬ天のがはらのいさごほどわがかなしみもわかれ行くかな
・緑青のさびしき原は数しらぬ気泡をそらにはきいだすかかな
・蠍行く南のそらにうかびたつわがすなほなる電信ばしら
・いそがしく橋にきたればほしあかりほのじろの川をうれひひたしぬ
・ほしかげもいとあはければみをつくし今宵はならぶまぼろしの底
・うす雲のいつ湧きにけん見あぐればたゞすばるのみほのびかりして
・ひるもなほ星みる人の目にも似むさびしきつかれ早春の旅
・西ぞらの月見草のはなびら皺みうかびいでたる青き一つぼし
・山なみの暮の紫紺のそが西にふりそゝぎたる黄なる光を
・きら星のまたゝきに降る霜のかけら墓石石は月光に照り
・寒行の声門たちよ鈴の音にかゞやきいづる星もありけり
・金星の瞑するときしわれなんだすまことは北の空はれぬゆゑ
・そらに居て緑のほのほかなしむと地球の人のしるやしらずや
・南天の蠍よもしなれ魔物ならば後に血はとれまづ力欲し
・風ふけば岡の草の穂波立ちて遠き汽車の音もなみだぐましき
・はだしにて夜の線路をはせ来り汽車に行き逢へりその窓は明く
・つくられし祭の花のすきますきまいちめんこめし銀河のいさご
・空ひくく銀の河岸の製板所汽笛をならし夜はあけにけり
・うろこぐも月光を吸ひ露置きてばたと下れるシグナルの青
・この惑星夜半より谷のそらを截りて薄明の鳥の声にうするゝ
・ふくよかにわか葉いきづきあけのほしのぼるがまゝに鳥もさめたり
・さそり座よむかしはさこそいのりしがふたゝびこゝにきらめかんとは
・双子座のあはきひかりはまたわれに告げて顫ひぬ水色のうれひ
・星群の微光に立ちて甲斐なさをなげくはわれとタンクのやぐら
・わが為に待合室に灯をつけて駅夫は問ひぬいづち行くやと
・この暮は土星のひかりつねならずみだれごころを憐れむらしも
・夜の底に霧たゞなびき燐光の夢のかなたにのぼりし火星
・うすら酔へるつめたき気層ほの赤きひかりのしめりめぐるきらぼし
・ある星はそらの微塵のたゞ中にものを思はずひためぐりゆく
・なまこ雲ひとむらの星西ぞらの微光より来る馬のあし音
・オリオンは西に移りてさかだちしほのぼののぼるまだきのいのり
・三日月は黒きまぶたを露はしてしらしらあけの空にかゝれり
・流れ入る雪のあかりに溶くるなり夜汽車をこめし苹果の蒸気
・つゝましき白めりやすの手袋と夜汽車をこむる苹果の蒸気と
・しらしらと銀河わたれるかしはゞら火をもて行けど馬も来たらず
・天の川しらしらひかり夜をこめてかしはばやしを過ぎ行きし鳥
・かしはばらうすらあかりはきたるなりみなみにわたる天の川より
・あまの川ほのぼの白くわたるころすそのをよぎる四つの幽霊
・かしはゞら路をうしなひしらしらとわたる銀河にむかひたちにけり
・秋ふけぬ天のがはらのいさごほどわがかなしみもわかれ行くかな
・緑青のさびしき原は数しらぬ気泡をそらにはきいだすかかな
・蠍行く南のそらにうかびたつわがすなほなる電信ばしら
・いそがしく橋にきたればほしあかりほのじろの川をうれひひたしぬ
・ほしかげもいとあはければみをつくし今宵はならぶまぼろしの底
・うす雲のいつ湧きにけん見あぐればたゞすばるのみほのびかりして