自慢ではないけれど、私の顔は覚えにくい。
たいがいの人は、2度目にあったとき戸惑った表情をする。
「この人だったっけ?」
星 新一のショートショートで、改札に勤める駅員の主人公に対する言葉があった。
「あまたこの改札を通り過ぎるお客さんの中で、あなたの顔を一番よく記憶しています。
あなたの顔は、目も鼻も口も、平凡そのもので、これほど平凡な顔は無いと強烈な印象があるのです」
あ、この言葉、私の記憶でリライトしています。どの本だったかも覚えていないので、星先生ごめんさい。
と、それはさておき、つまり私の顔はきっと平凡でもなく、あまりにもありふれて適当にヘンなのでしょう。
昨日の出勤は、なかなかに心が躍りました。
38度を超えて、インフルエンザでは無いという証明だけはお医者さんにいただいた上で出社したので、
厚着にマスクの完全防備体勢です。
特に体温保持のため、上には黒いダウンジャケット、スキー帽子を目深にかぶり、
鼻から下を広く覆うサージカルマスクをつけていました。
普段は、人目につかない顔でありきたりのスーツを着て会社にいますからほとんど人の関心を呼びません。
しかし、この異様な重装備、こわごわ目線が集まります。
ああ、リングに上がったマスクマンはこんな気分なのかもしれない、とはしゃいだわけです。
こちらからは行き交う人がわかっても、相手は私に目を向け「誰だろう」と思うのです。
あとになって、「ふさおまきさんだったんですか。全然気がつきませんでした」と2人から言葉をかけていただいたときは、
正直、嬉しくてしょうがありませんでした。
そんなわけで、思わぬ風邪の効果で、タイガーマスクに共感をだいた一日でした。