アメリカ出張の最後の夜、初めて晴れ間が見えました。
「ニューヨークに来たからにはやはり自由の女神を見なくちゃ」
ペルー人の同僚が主張するので、再びマンハッタンに繰り出しました。アルゼンチン人の同僚はマンハッタンに友達がいるというので、ニューヨーク行きのバスはいっしょでしたが、そのあとは別行動。
バスは初日に乗って、料金は2.5ドルであることを覚えていました。まずアルゼンチン人が乗り、そのあとにペルー人、私の順で乗りました。行き先をよく覚えていなかったので、「ザ・セイム(同じとこ)」と言うと、黒人の運転手は「3.2ドル」と言う。
(えっ? そんなはずは)
と思ったけれどとっさに英語で反駁できなかったので、手にしていた3ドルを渡したあと、財布の中を探ります。後ろにはまだ何人も待っている。ぐずぐずしていると運転手は「もういいから行け」というようなしぐさをします。あとで聞くと、アルゼンチン人は2.5ドルを、ペルー人は3ドルを支払ったとのこと。
(これは、いったい…)
運転手の小遣い稼ぎなのでしょうか。
自由の女神はマンハッタン島の南の島にあります。それでまず、地下鉄で最南端に向かう。30分ぐらいかかったでしょうか。
駅をでてみると、海辺の港のようなところでした。観光客らしき団体がたくさんいます。
「あっ、あれだ」
遠くに小さく見えるのが自由の女神です。
「よく見えませんね」
周囲の人々はぞろぞろと一定の方向に歩いていきます。
「展望台でもあるのかな」
われわれもついていきました。すると人波はある建物の中に入っていく。
「あれ、船みたいですよ」
みな、大きなフェリーボートに入っていきます。
「乗ってみようか」
切符も買わずに乗れるところからすると、船の形をした展望台なのかもしれません。
「あれっ? これ、やっぱり船だぞ。降りよう」
われわれが逆戻りしていくと、目の前でロープがはられ、フェリーは港を離れました。
「おいおい、出発しちゃったよ。これどこ行くんだよ?」
同僚が手にしていた観光地図をみます。
「いろんな行き先がありますね。自由の女神を見る遊覧船もあるし、対岸の島に行くのもあるし、もっと遠くに行くのもあるみたいです」
「そんな。マイアミとか行っちゃったらどうしよう」
急に不安になりました。
「明日の飛行機は午後一時だから、10時ぐらいにはホテルに戻って荷物をまとめないと」
「ちょっと待ってください」
デジタルカメラをいじりながらペルー人。
「大丈夫です。これ、見てください」
さきほど、地下鉄駅から地上に出てすぐに撮った写真をみると、「ステイトン・アイランド・フェリー」という表示が大きく写っていました。ステイトン島(正しくはスタトゥン島)は、マンハッタン島のすぐ南にある最寄りの島で、どうも無料のフェリーがひっきりなしに往復しているようなのです。
船は自由の女神をかすめて島に向かいます。私は写真に興味がないのですが、同僚はお目当ての自由の女神のシャッターチャンスに恵まれてご機嫌です。
「この無料フェリー、自由の女神観光にはうってつけですね」
こういうの、なんていうんでしょうね。
怪我の功名?
瓢箪から駒?(ちょっと違うか)
われわれは島には興味ないので、乗って行った船でそのままマンハッタンに引き返しました。
マンハッタンの南部はウォールストリート。アメリカの、いや世界の金融の中心です。闘牛の彫像を横目にみて、ウォールストリートを闊歩します。チェースマンハッタン銀行、アメリカンエキスプレス、世界的な金融機関の本店がひしめいています。
途中、格式あるホテルらしきところに、テレビの中継車がたくさん並び、誰かが出てくるのをいまかいまかと待ち構えているようでした。
「だれか有名人がいるのかな」
このところ、アメリカのテレビのニュースでもちきりなのは、シュワルツェネッガーの隠し子発覚問題と、IMF会長のホテル従業員強制わいせつ未遂事件。
(翌朝のニュースで、まさにこの場所からの中継がありました。IMF会長が泊まっていたホテルでした)
途中、グラウンド・ゼロ(世界貿易センター跡地)に立ち寄りました。すでに10年が経ち、跡地は再開発のための工事が盛んに行われていました。そのそばに、事件のときに殉職したニューヨーク市の消防士を悼むモニュメントがありました。全員の顔写真と花束。少し前にこの事件の首謀者と目されるオサマ・ビンラディンが殺害され、ニューヨークは喜びに沸いたことが報じられましたが、10年後の今もニューヨーク市民の心に影を落としているようです。
ウォールストリートを北上し、シティホール(市役所)に着いたとき、時間はすでに8時半。まだ食事をしていないので、戻ることにしました。
タイムズスクエアで夕食をと思いましたが、金曜の夜はどこも混んでいる。結局、バスターミナルの建物の中にあるバーに行きました。
生ビールがまずいことは学習済みなので、少々高いけれどギネスを注文。きめ細やかな泡を味わいました。あまりお腹が空いていなかったので、スペインのタパスのようなサンドイッチを注文。カウンター中心のいわゆるバーで、ラテン系のお客さんが多いようです。
店の音楽がラテンの音楽に切り替わると、お客さんの中で踊り始める人が出てくる。
「これ、サルサです。カリブ海の音楽です」
とペルー人が説明してくれます。しかし、普通のバーでこんな風に踊りだす人がいるというのは、日本ではあまり見られない光景です。
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