二日目の夜も,前夜に引き続き,同じ店に行きました。同行のタイ人は,「せっかくタイに来たのに,同じ店に行かなくても…。もっとおいしい店がありますよ」と難色を示しましたが,「お客様」であるわれわれ出張者の「子豚の丸焼きが食べたい」という強い希望に押し切られた形。
予約の電話を入れると,子豚は特別料理で時間がかかるので,前もって注文が必要。即座に,子豚の予約も入れました。
メインディッシュの子豚が来る前に何を頼むか。写真つきのメニューを繰ると,あるスープの値段に目がいきました。
高い!
一人前が,小で250バーツ。他の料理に比べて一際目立っています。とはいえ,250バーツは円高の今,700円程度のものですが。
同僚の中国系日本人の解説によれば,ツバメの巣のスープだそうです。
「これって,世界三大スープの一つだっけ」
「いや,あれはフカヒレでしょう」
世界三大スープとは,諸説ありますが,タイが誇るトムヤムクンと中華のフカヒレはだいたい入っている。そしてフランスのコンソメ,南フランスのブイヤベース,ロシアのボルシチ。あるいはアメリカのクラムチャウダー,日本の味噌汁,韓国のサムゲタンなどが残りの一席を争っている。
ツバメのスープは入っていませんが,フカヒレと並ぶ珍味,高級料理だそうです。
この店では,椰子の実の中に入ったものとふつうの器に入ったもの,温かいものと冷たいものがあり,お客さんの好みで選べます。値段はすべて同じ。われわれは椰子の実入り温かいスープを頼みました。
そして,昨日中国人の円卓で見た牡蠣炒め,その他前日頼まなかったものを注文。
最初に運ばれてきたのがツバメの巣。
ツバメは日本にいるものとは種類が違い,アマツバメ科のアナツバメという,岸壁に巣をつくる種類だそうです。主な産地は東南アジア。タイは主産地の一つで,大半を中国に輸出しているとのこと。中国で食べるより,ずっと安いということです。
さて味は…。
「ない」
透明な液体の中に,茶色の細くて小さな断片が混じっており,これがツバメの巣ということです。ツバメの巣の正体は,ほとんどツバメの唾液。味はなく,食感を楽しむものだというけれど,その食感さえほとんど感じられないほどに小さい。
「こんなものか」
かすかに感じられるのは器に使われている椰子の実の青臭さのみ。テーブルが「がっかり感」に支配されつつあったとき,メインディッシュが運ばれてきました。
「大きい!」
ツバメの巣を急いで平らげ,1メートル近い大皿の置き場所を作ります。子豚は頭も4本足もついていて,顔はこころなしか笑っているような。お腹を割かれ,内臓を取り出され,四つんばいにされたうえで,火炙りの形に処せられたもののようです。背中は濃い飴色になるまでよく焼かれており,縦横に包丁が入れられています。
「これは皮を食べる料理。肉は食べない」
中国系日本人が解説してくれます。
(えっ,皮だけ? もったいない)
「北京ダックみたいなものか」
「いや,北京ダックは,中国では肉も食べるよ」
いっしょに出されたのは,やはり北京ダックのような黒い味噌(テンメンジャン)。そして,中華饅頭(の具のないやつ)とキュウリの千切りが添えられている。それぞれ,子豚ちゃんの背中の四角い皮(3センチ四方)をはぎ取り,コールタールのような味噌をつけて,饅頭にキュウリとともに包んで食べる。皮はパリパリに焼けていて,香ばしい。
以前,韓国の焼き肉屋さんで食べた「豚の皮」は,たぶん成獣の厚い皮で,それはそれは固かった。顎の貧弱な日本人には手強い代物でした。それに比べれば,今回の子豚の皮は薄くて食べやすい。
「なかなかおいしいですね」
と言ってみたものの,内心(ま,こんなものか)とつぶやきます。この料理を初めて食べる二人(私ともう一人の純粋日本人)は口には出さないものの,心の中にツバメの巣のときと同種のがっかり感が広がっていきます。それに加えて「見かけ倒し」という言葉がちらちらするのを抑えようがない。
子豚一頭まるごとでてきたものの,背中の皮だけを4人で食べると,一人あたり10切れにもならない。あっと言う間に子豚ちゃんは全身の皮をはがれてしまいました。
「この肉,もったいないなあ」
肉を箸先でほじくろうとすると,意外にも肉は固くて簡単にはほじくれない。
「肉をから揚げにしてもらうことはできますよ」
とタイ人社員。あまりにももったいないので追加料金を払って,再調理してもらうことにしました。
しばらくしてでてきた子豚のから揚げは,全体を骨ごと5センチ四方にぶつ切りにされ,よく揚がっている。顔の部分は二等分され,断面から豚の歯が見えてるのが生々しい。
「この豚,虫歯があるぞ」
骨があって少し食べにくいですが,ビールのつまみにはいい感じ。でも,肉の固さはどうしようもない。すべてはとても食べきれず,タイ人がテイクアウトすることになりました。
結局,ツバメの巣にしろ,子豚の丸焼きにしろ,味はたいしたことなかったけれど,生まれて初めての経験ができたという,ただそれだけで満足度の高い食事でした。
予約の電話を入れると,子豚は特別料理で時間がかかるので,前もって注文が必要。即座に,子豚の予約も入れました。
メインディッシュの子豚が来る前に何を頼むか。写真つきのメニューを繰ると,あるスープの値段に目がいきました。
高い!
一人前が,小で250バーツ。他の料理に比べて一際目立っています。とはいえ,250バーツは円高の今,700円程度のものですが。
同僚の中国系日本人の解説によれば,ツバメの巣のスープだそうです。
「これって,世界三大スープの一つだっけ」
「いや,あれはフカヒレでしょう」
世界三大スープとは,諸説ありますが,タイが誇るトムヤムクンと中華のフカヒレはだいたい入っている。そしてフランスのコンソメ,南フランスのブイヤベース,ロシアのボルシチ。あるいはアメリカのクラムチャウダー,日本の味噌汁,韓国のサムゲタンなどが残りの一席を争っている。
ツバメのスープは入っていませんが,フカヒレと並ぶ珍味,高級料理だそうです。
この店では,椰子の実の中に入ったものとふつうの器に入ったもの,温かいものと冷たいものがあり,お客さんの好みで選べます。値段はすべて同じ。われわれは椰子の実入り温かいスープを頼みました。
そして,昨日中国人の円卓で見た牡蠣炒め,その他前日頼まなかったものを注文。
最初に運ばれてきたのがツバメの巣。
ツバメは日本にいるものとは種類が違い,アマツバメ科のアナツバメという,岸壁に巣をつくる種類だそうです。主な産地は東南アジア。タイは主産地の一つで,大半を中国に輸出しているとのこと。中国で食べるより,ずっと安いということです。
さて味は…。
「ない」
透明な液体の中に,茶色の細くて小さな断片が混じっており,これがツバメの巣ということです。ツバメの巣の正体は,ほとんどツバメの唾液。味はなく,食感を楽しむものだというけれど,その食感さえほとんど感じられないほどに小さい。
「こんなものか」
かすかに感じられるのは器に使われている椰子の実の青臭さのみ。テーブルが「がっかり感」に支配されつつあったとき,メインディッシュが運ばれてきました。
「大きい!」
ツバメの巣を急いで平らげ,1メートル近い大皿の置き場所を作ります。子豚は頭も4本足もついていて,顔はこころなしか笑っているような。お腹を割かれ,内臓を取り出され,四つんばいにされたうえで,火炙りの形に処せられたもののようです。背中は濃い飴色になるまでよく焼かれており,縦横に包丁が入れられています。
「これは皮を食べる料理。肉は食べない」
中国系日本人が解説してくれます。
(えっ,皮だけ? もったいない)
「北京ダックみたいなものか」
「いや,北京ダックは,中国では肉も食べるよ」
いっしょに出されたのは,やはり北京ダックのような黒い味噌(テンメンジャン)。そして,中華饅頭(の具のないやつ)とキュウリの千切りが添えられている。それぞれ,子豚ちゃんの背中の四角い皮(3センチ四方)をはぎ取り,コールタールのような味噌をつけて,饅頭にキュウリとともに包んで食べる。皮はパリパリに焼けていて,香ばしい。
以前,韓国の焼き肉屋さんで食べた「豚の皮」は,たぶん成獣の厚い皮で,それはそれは固かった。顎の貧弱な日本人には手強い代物でした。それに比べれば,今回の子豚の皮は薄くて食べやすい。
「なかなかおいしいですね」
と言ってみたものの,内心(ま,こんなものか)とつぶやきます。この料理を初めて食べる二人(私ともう一人の純粋日本人)は口には出さないものの,心の中にツバメの巣のときと同種のがっかり感が広がっていきます。それに加えて「見かけ倒し」という言葉がちらちらするのを抑えようがない。
子豚一頭まるごとでてきたものの,背中の皮だけを4人で食べると,一人あたり10切れにもならない。あっと言う間に子豚ちゃんは全身の皮をはがれてしまいました。
「この肉,もったいないなあ」
肉を箸先でほじくろうとすると,意外にも肉は固くて簡単にはほじくれない。
「肉をから揚げにしてもらうことはできますよ」
とタイ人社員。あまりにももったいないので追加料金を払って,再調理してもらうことにしました。
しばらくしてでてきた子豚のから揚げは,全体を骨ごと5センチ四方にぶつ切りにされ,よく揚がっている。顔の部分は二等分され,断面から豚の歯が見えてるのが生々しい。
「この豚,虫歯があるぞ」
骨があって少し食べにくいですが,ビールのつまみにはいい感じ。でも,肉の固さはどうしようもない。すべてはとても食べきれず,タイ人がテイクアウトすることになりました。
結局,ツバメの巣にしろ,子豚の丸焼きにしろ,味はたいしたことなかったけれど,生まれて初めての経験ができたという,ただそれだけで満足度の高い食事でした。
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