韓国は歴史を直視せよ～尹大統領三・一節演説

写真：朴洪根・共に民主党院内代表「尹の三・一節記念辞は売国奴李完用の発言みたいだ」

　三・一節というのは、1919年3月1日に行われた三・一独立運動を記念する、韓国の祝日です。

　毎年、その時の大統領が演説することになっています。

　今年は、今の大統領である尹錫悦が演説しました。昨年５月の就任後、初めての三・一節です。

　演説は、昨年までの文在寅とは対照的でした。

　まず、短かった。時間にして５分ちょっとです。こんなに短い演説は、異例のことです。

　そして、お決まりになっている、具体的な名前を挙げての独立運動家の称揚もありませんでした。

　そして、日本批判の内容がなかったことが、もっとも大きな点でした。

　昨年（2022年）の文大統領は、「日本は歴史を直視し、歴史の前で謙虚でなければなりません」などと言っていました。

三・一節記念式典 文大統領演説全文

　2021年の演説では、コロナ禍とからめて、「日帝は、植民地の民衆を伝染病から守れませんでした」と言いました。

三一運動とスペイン毒感

　それに対して、尹大統領の今年の演説では、

「三・一運動の後、1世紀が過ぎた今、日本は過去の軍国主義侵略者から、われわれと普遍的な価値を共有し、安保と経済、そして国際的な懸案について協力する協力パートナーに変わりました」

と、日本を批判の対象ではなく、「パートナー」とみなしています。

　そして、韓国が植民地支配された歴史については、

「われわれは、世界史の変化にしっかりと備えられず、国権を喪失して苦しんだわが国の過去を、振り返らなければなりません」

「変化する世界史の流れを読むことができず、未来に対してしっかりと備えられなければ、過去の不幸が繰り返されることは自明です」

と、日本が悪かったというより、「世界史の変化にしっかり備えられなかった」韓国が悪かったともとれる口ぶりです。

　そして、決定版がこれ。

「栄光の歴史であれ、恥ずかしくて悲しい歴史であれ、歴史は忘れてはなりません」

　文大統領は、韓国と自分の政権の「栄光の歴史」は滔々と述べ立てましたが、自国の「恥ずかしくて悲しい歴史」を直視しようとはしませんでした。

　尹大統領は、日本に向かって「歴史を直視せよ」といっているのではなく、韓国に向けて言っているわけです。

　私は、これを聞いて、全斗煥（チョン・ドゥファン）大統領の1981年光復節（８月１５日）の演説を思い出しました。

「われわれは、われわれの失敗を他人の責任に転嫁してもならず、われわれの成功を他人に頼ってもなりません。われわれの国恥について、日本帝国主義だけのせいにするのではなく、当時の国際情勢に暗かったわれわれ、国内的な団結を期すことのできなかったわれわれ、そして国力が弱かったわれわれみずからの至らなさを厳しく自責する姿勢を持たなければなりません。そうすることが、国権喪失の悲劇をこれ以上再現しない道なのであります」

大統領の思い出～全斗煥②

　尹大統領の「画期的な」演説に対し、野党「共に民主党」や左派のメディア（ハンギョレ、京郷新聞など）は一斉に反発し、尹大統領を「親日派」「売国奴」呼ばわりしています。

　もとより、尹政権は、こうした反発を見越していたのでしょう。

　国民は、すでに「反日疲れ」しています。

　日本への観光旅行は予約が殺到、日本製ビール・日本車の需要は急回復、「スラムダンク」の映画と漫画は大人気…。

　文政権時代の「No Japan」は完全に過去のものとなりました。

　野党や左派メディアが反発を強めても、韓国民（特に若い世代）は、尹政権の方針転換をいずれ支持するのではないでしょうか。

　まあ、日本人としての希望的観測が多分に含まれた見通しではありますが。