久しぶりの韓国出張です。
「長寿台風」が奄美大島のあたりをうろうろしている中、関西空港に向かいました。
搭乗手続をしようと待っていると、アシアナのグランドホステスが声をかけてきました。
「恐れ入りますが、この便はオーバーブッキングで、別の便に変えてくれるお客様を探しています。30分遅い便にしていただけませんか。到着地は仁川ではなくて金浦で、ビジネスクラスです」
この日は日曜日で、午後仕事はありません。到着が多少遅くなっても関係がない。それに金浦なら仁川に比べて早くソウルに行けます。
「ケンチャナヨ(いいですよ)」
「カムサハムニダ!」
近距離の海外出張は社内規定でエコノミークラス利用と決まっているので、ビジネスクラスは久しぶりです。手荷物検査もファストレーンで、並ぶことなくすいすい通過します。昼食は、白いテーブルクロスを敷いてくれ、ステーキのコースでした。
「飲み物はいかがなさいますか」
「パルガンワイン・ジュセヨ」
「えっ?」
「パルガン(赤い)ワイン…、レッドワインえよ」
「ああ、レッドワイン!」
このときは、発音が悪くて通じなかったのかと思いましたが、後で韓国人に聞いたら、赤ワインのことを韓国語で「パルガン(赤い)ワイン」とは言わない、と教えてくれました。
(11年も韓国に住んでたのに、こんな基礎を知らなかったなんて…)
金浦空港からはタクシー。模範ではなく一般タクシーに乗りました。金浦からソウル市内まで、いろいろな行き方があるのですが、昔住んでいた東部二村洞の様子を見ようと、ハンガンデギョ(漢江大橋)を渡るように指示しました。
「アパートは再建築が進んでいるでしょう」
(日本のいわゆるマンションのことを、韓国ではアパートといいます)
「そうですね。レックスアパートが立派になりました」
「漢江マンションは?」
(漢江マンションだけは、なぜかアパートではなく「マンション」といいます)
「あれはあのままです。それよりヨンサン(龍山)の駅前がすごいですよ。高層アパートがいっぱい建ちました」
「サチャンガ(私娼街)はなくなりましたか」
「なくなりました」
「カムジャタンの店も?」
「お客さん、よくご存じですね」
「昔、10年以上住んでいたんですよ」
「カムジャタンの店はどこかへ移転したんでしょう」
国鉄龍山駅の前には、チョンニャンニ(清涼里)やミアリ(彌阿里)ほど大規模ではありませんが、売春を行う「飾り窓」が軒を連ね、そのそばにカムジャタンの店がたくさんありました。
タクシーから見ると、私娼街は跡形もなくなり、高層アパートと大規模ショッピングモールにとって代わられていました。
ホテルについてから、その日に会う約束をしていたKさんに電話しました。Kさんは在韓20年以上。
「軍艦島、どこかでやってますか」
「ええ、いろんなところでやってます」
「見たいんですけど」
「じゃ開始時間をチェックしてみますね」
待ち合わせの時間まで少しあるので、鍾路の書店にいきました。「蛍なんとか」いう大型書店が代替わりして、「鍾路書籍」になっていました。
入口の「話題の本」のコーナーには、韓水山(ハンスサン)の『軍艦島(グナムド)』が平積みになっていました。
ちょっと確認したいことがあったので、手に取りました。
(あれっ?)
私の予想に反し、川村湊による解説は載っていませんでした(リンク)。
児童書コーナーに回ると、ここにも軍艦島を題材にした子ども向けの本がいくつも出ています。奥付を見ると、つい最近刊行されたものばかり。映画『軍艦島』の人気にあやかろうとしたものでしょう。そのうちのいくつかを買い、いったんホテルに戻ってから、地下鉄で待ち合わせ場所のホンデ(弘大)に向かいました。
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