犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

高っ

2013-04-03 23:03:38 | 言葉

 三年前(平成22年)の「国語に関する世論調査」で「形容詞の語幹を使った言い方(「すごっ」等)について」のアンケートがありました。(→リンク

「自分も使うし、他人が使っても気にならない」の数字は以下の通り。

(1)(冬,暖房の効いた建物から,気温の低い外に出たとき) 「寒っ。」 62.8%

(2)(びっくりするようなものを見聞きしたときに) 「すごっ。」 33.5%

(3)(電気コードなどの長さが足らなかったとき) 「短っ。」 35.4%

(4)(式典の挨拶がなかなか終わらないとき) 「長っ。」 30.1%

(5)(車の騒音がひっきりなしに続く道を歩いているとき) 「うるさっ。」 26.2%

 ほとんどが40%以下にとどまっているなかで、「寒っ」だけが62.8%と、市民権を得ているようです。

 個人的な感覚としては、寒っ以外にも

 たんすの角に足の小指をひっかけて、
「痛っ」

 鍋のふたをとろうとして、
「熱っ」

 プルタク(火の鶏という意味の韓国料理)を一口食べて、
「辛っ」

 ホンオフェ(ガンギエイを腐らせた全羅道の名物料理)を食べて、
「臭っ」

 ロンドンでフッシュ&チップスを食べて、
「不味っ」

 トンネルの天井が落ちたニュースを見て、
「恐っ」

などは、自分でも使うような気がします。

 だいたい、瞬間的な感覚で、かつ否定的な意味、そして短めの形容詞のようです。

 私の娘たちを含む若者の使用例は、必ずしも否定的な場合だけじゃない気がします。

 私が朝五時に起きたとき、すでに起きていた娘は、

「早っ」

と言いました。

 ただし、あらゆる形容詞に使われるわけではない。

「面白っ」

「暖かっ」

「柔らかっ」

などをあまり聞かないのは、語幹が4文字で長すぎるからか。

 逆に語幹が1文字のケースは、

「いい」→「いっ」

はなさそう。

 でも、エスプレッソコーヒーを飲んで、

「濃っ」

と言う若者はいそうな気がします。

 語幹の最後が「い段」の形容詞は、語呂が悪いのか、使われないようです。

「可愛っ」

「美味しっ」

「悲しっ」

「涼しっ」

「美しっ」

 昨年、スペインに出張中に携帯メールが入りました。

「今日、私の誕生日だから、ロエベのバッグ、プレゼントして」

 妻からでした。誕生日を失念していた後ろめたさもあって、仕事が終わったあとにマドリードのロエベ本店に行きました。日本語ペラペラの店員が出てきたので、日本語で聞きました。

「これ、いくらですか?」

2000ユーロ(20万円です)」

高っ!!

 思わず現代的用法を口にしてしまいました。(もちろん買いませんでした)


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8 コメント

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Unknown (元某延世大留学生)
2013-04-08 23:38:32
韓国の芸能バラエティ番組を見ていたら、出演者が恥ずかしそうにしている場面で、부끄럽다の語根「부끄」だけがテロップに使われていて、大変印象的でした。
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若いとき関西に一時住んでいました (昔の小役人)
2013-04-08 23:52:14
関東生まれの私にとって、関西における多少の文法の違いに最初はとまどったことを思い出しました。
その一つが形容詞語尾の「い」を省略し、形容詞単独で語尾を長めに発音すると「感嘆」を表現することになるというものです。
例えば、「しんどい(疲れた、辛い)」を使って「しんどー」などは良く使われてました。
もちろん、「めちゃ、しんどいねん(大阪風)」、「ごっつ、しんどいの~(奈良風)」なんてのも使いますが、当時の若い人の話し言葉は、「い」省略法が一般的であったように思えます(かなり昔なので断言できません)。
ちなみに、「可愛い」は「なんや、かっわ~」、「涼しい」は「ああ、すずし」、「美しい」は「ほんま、うつくしー」などの使われ方をしていたと記憶してます。
こうした関西文化が恵方巻とともに全国に伝播したのでしょうかね?(笑)
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Unknown (トムヤム)
2013-04-11 23:43:35
>その一つが形容詞語尾の「い」を省略し、形容詞単独で語尾を長めに発音すると「感嘆」を表現することになるというものです。

関東でも「あち~」、「いて~」、「おせ~」、「はえ~」など普通に使われてましたよね。
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文字化け (犬鍋)
2013-04-13 09:01:47
元某延世大留学生さん

残念ながら化けちゃってます。
プックロッ かな?
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関西弁の文法 (犬鍋)
2013-04-13 09:06:15
動詞「ある」の否定形は、「あらない」ではなく「ない」(形容詞)になるということを書いたとき、関西の人から、関西弁には「あらへん」があるという指摘を受けました。
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あちー、いてー (犬鍋)
2013-04-13 09:15:00
確かにai,oi→e の変化は昔からありますね。

でも、ui→i はできないものものある。

寒い → さみー
まずい → まじー

はありそうな気がしますが、

薄い → うしー× うせー×
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Unknown (昔の小役人)
2013-04-17 00:52:15
>関東でも「あち~」、「いて~」、「おせ~」、「はえ~」など普通に使われてましたよね。
いえいえ、私が言ってる昔とは40年ほど前です。
確かに、「あちっ」、「いてっ」など直截的な表現は
40年前からありました。
しかし、40年前に関東で「おせ~」はあまり使われていなかったと思います。
例えば、「おせ~よ」、「はえ~な」といった使い方でしたでしょうね。

関東と関西では形容詞「い」省略感嘆表現の量と質が違うと思います。

関東では「い」を省略しないで、アクセントを変えて感情を吐露する方が
昔から現在においても圧倒的に多いと思います。
40年前でも、関東では、若い女性が「お、そ、い、ー~!」と言ってましたし
現在も女性は、「おいしい!」と語尾を強調する使い方が主流です。
男性も、関西みたいに「うまっ!」ではなく、「うまい!」が主流でしょう。

対して、関西では形容詞「い」省略形が多様で頻度が各段に多いと思います。
「偉い」などは「おー、自分、えらっ!」なんて使い方を平気でします。
関東では今でもこんな使い方はしないでしょ?(「お~、君はエライ!」ですよね)
関東の「おいしい!」に対し、関西女性は「あ~、おいし」が主流でしょうか。

そして、関西ではアクセントを変えて感嘆する場合は
「おいしいやん、おいしいねん」「うまいや~、うまいな~」など
後ろに語を付加した表現をします。
最近は標準語が普及したのでわかりませんが
少なくても昔は省略しない形容詞単体で感嘆することは少なかったと思います。
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えらい (犬鍋)
2013-04-23 23:48:16
30年ほど前に、京都・奈良を旅行したとき、タクシーの運転手が、「タクシー運転手はほんまにえらいですわ」と言っているのを聞き、何自分のことほめてるんだ、と思いましたが、「疲れる、大変だ」という意味だということを後で知りました。
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