犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

虎居でなぜか韓国を思い出す

2022-05-28 23:59:49 | 食べる
 韓国つながりの飲み仲間とポンゲ飲み会(稲妻飲み会、急な飲み会)が敢行されました。

 場所は会長のお膝元、花小金井の虎居(トライ)

 最近、酒場放浪記というテレビ番組で紹介され、会長が行ってみたらすごくよかったということで、急遽、都合のつく人だけ招集されました。

「そのお店、メニューがないんですよ。カウンターの大皿を指さして注文するんです」

 金曜日の夜で混雑も予想されるので、予約を入れておいてもらったのが正解でした。

 奥の掘りごたつ式テーブル席は予約で一杯らしく、お客さんがまだいない席にもつきだしが並べられていました。

 しかし、つきだしというには種類も量も多い。

 ポテトサラダはともかく、かんぴょう巻き、ロールケーキ風のパンなどという、〆っぽい品がすでにセットされています。



「飲み物は?」

「生ビールと…、レモンサワー」

「サワーは鏡月と〇〇のどちらにしますか?」

 深い理由はないのですが、韓国つながりの会なので、韓国焼酎(韓国では見たことないが)の鏡月に。鏡月は韓国では「グリーンソジュ」という名で売られているものかもしれません。

「コップはあちらにあります」

 セルフサービスのようです。

 おばさんは飲み物の注文だけ受けて奥へ引っ込みます。

 生ビールと、鏡月&市販のレモンソーダが来たあと、間髪入れずにゆで卵のフライの輪切りと、エビのマヨあえが運ばれてきます。



 マヨネーズが苦手な人がいようが、甲殻類アレルギーがいようが、お構いなしです。

(頼んでないけどなあ。まあいいか)

 さらに鶏のから揚げ、イカと里芋の煮つけ、鯖の塩焼き…。

(これはどういうシステムなんだろう?)

 どうも「大皿を指さして頼む」のはカウンター席だけのようです。

 韓国では、日式(イルシク、韓国風日本料理)の店などで、メインディッシュの刺身とは別に膨大な量の副菜(ミッパンチャン)が出てくることがありますが、それを思い出しました(リンク)。

 われわれはみな、多かれ少なかれ韓国暮らしを経験しているので、次々に運ばれてくるおかずを、それほど抵抗なくというか楽しみながら、受け取ります。

 韓国語の達人も多いので、韓国語の表現が話題になったりします。

 犬仔(リンク)とか十八(シッパル、リンク)のような罵倒語の話題や、「身土不二」などの韓国製漢字語、ヌタウナギ(リンク)やケブル(ユムシ、リンク)のような韓国独特の食材の話などで盛り上がりました。

 その後も、頼んでいないおかずの数々がどんどん運ばれてきます。

 茹でトウモロコシの輪切り、アジの南蛮漬け、冷やしトマト、スパゲティ、巨大グリーンアスパラ(たっぷりのマヨネーズ添え、マヨネーズがダメな人がいるのに)…。



 思い出せるだけでも10種類を優に越えています。

「これ、もしよろしければ」

といって持ってきたのが、丸ごと1本のきゅうりの塩もみ。一人一本ずつです。

 4人で予約していたので、大皿料理以外の小分け可能な料理は、4人分ずつ出てきます。

 途中、来られるかどうかわからないといっていたメンバーが遅れて合流したあとも、それは変わりませんでした。

「しかし、すごい量だな!」

「もうこれ以上は無理!」


などと言い合っていた時に、ダメ押しのようにバナナが一人1本ずつやってきました。

「ここ、9時閉店で、その20分前ぐらいに計算(お勘定の韓国式表現)があるはず」と会長。

 確かに8時半ごろから、店のおばさんたちの動きがあわただしくなり始めました。

 食べ終わった皿を下げ始めるのですね。

 そして残っているものを食べきるよう、穏やかに急(せ)かされます。

 食べきれなさそうだと見るや、

「よろしければこれどうぞ」

と、残飯持ち帰り用の箱入りラップが差し出されます。

 フードロスゼロを不文律としているようです。

 私も孫の翌日の朝ご飯用にバナナを1本持ち帰ることに。

 立ち上がるのもつらいほどの満腹感というのは、30年前、初めて韓国に出張したときの食事以来かもしれません(リンク)。

 計算が衝撃的でした。

「一人3000円でお願いします。4人ですから12000円(税込み)です」

 5人目が来て、きっちり生ビールも追加注文したのに、計算には入れないようです。

 こんなに飲んで、食べて、1人2400円!

「メニューは日替わりなんですか」

「そうですね、地場野菜とか、その日の新鮮な食材をお出ししてます」

「酒場放浪記を見て来たんです」


「ああ、そうなんですね。まさかこんなことになるとは思ってませんでした

と女将さんがにこやかに応えてくれました。

 テレビで紹介されてからお客さんが激増し、スタッフ(みなおばさん)も増員されたようです。

 飲み残した鏡月は、しっかりキープもできました。

 昔、酔っ払いを虎にたとえることがありましたが、虎居というのは、「酔っ払いの居る店」から来たのかもしれません。

 韓国料理が出るわけではなく、ふつうの和風居酒屋なんですが、なぜか韓国時代を思い出してしまう店でした。

 やみつきになりそうです。

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