久しぶりに、インドネシア料理のバグースに行きました。いつもは見かけない女性アルバイトがいました。
「新しいアルバイトさんですか?」
店長に聞きました。
「いや、もう何か月かになるよ。でも週2回しか入ってないからね」
「日本語できるんですか?」
「日本に来たばかりの頃はぜんぜんできなかったけど、学校通ってるし、ずいぶん上達したね」
話しかけてみました。
「日本語勉強中ですか」
「はい」
「日本語能力試験を受けますか」
「はい、こんど2級を受けます」
「受かったら、大学に行くんですか」
「いえ、インドネシアに帰ります」
「どうして?」
「私は日本にいたいけど、両親が帰ってこいって」
彼女は華僑で、福建語もしゃべれるらしい。
そのとき、男性客が入ってきて、店長と早口のインドネシア語でしゃべりはじめました。ぜんぜん聞き取れません。
「あのお客さんは、日本に20年以上住んでるんですよ」
「26年です」
お客さんが自ら訂正します。
「長いですね。ずっと大阪ですか?」
「いえ、家は東京ですよ。今日は仕事で大阪に来てるんです」
彼は、インドネシア人観光客相手のツアーコンダクター兼運転手をしているんだとか。東京に来たインドネシア人を、東京だけでなく、車で関西にも連れてきて観光させるそうです。大阪に泊まりのときは、いつもこのバグースに食べにくるとのこと。
「ぼくも今は大阪暮らしですけど、出身は東京なんですよ」
「東京のどこですか」
「大田区です」
「私、大田区にも住んでいましたよ」
「どこですか」
「久が原です」
「わっ、ぼくは久が原で生まれ育ちました」
「そうですか! 日本で最初に住んだのが久が原なんです」
久が原にあるスーパーや貸しレコード屋(!)などの話で盛り上がりました。
彼はバリ島出身で、ホテルの従業員をしていたら、そこによく遊びに来ていた日本人女性と知り合い、結婚。
「日本に来て驚いたのが自動販売機です。いろんな種類があるでしょう?」
「外国には少ないみたいですね」
久が原で初めて自販機で飲み物を買おうとしたときのこと。千円札を入れたのに商品が出てこない。どうなってるんだろう。そのときは携帯電話なんてなかったから、家に帰って、妻の職場に電話した。
「もしかして、ボタン押さなかったんじゃないの?」
急いで自販機のところに戻ると、千円札を入れた状態のままだったので、そこでボタンを押して、無事に飲み物をゲットできたそうです。
「今度、東京に行ったとき、連絡しますよ」
名刺を交換して別れました。
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