三日目の夜は,旧知のK氏,S氏と会うことに。
「犬鍋さん,カリボン洞においしい犬鍋の店を見つけたんですよ」
というメールを事前にいただいていたので,場所は文句なくカリボン洞に決まりました。カリボン洞とは,朝鮮族の集住地で,中国語の異次元世界が広がっています(→リンク)。
私がそのユニークな一画に行く話をすると,「私も行きたい」という人が続出し,結局,私の会社の人々が4人,K氏,S氏,それに最近会社を辞めて韓国に語学留学に来ている女性の総勢8人(日本人7人,韓国人1人)が集まりました。
昼間のイベントが30分早く終わったので,集合時間を早めてもらおうと,K氏,S氏にそれぞれ電話する。S氏は
「あれ? 犬鍋さん,明日じゃなかったでしたっけ」
と寝ぼけたことを言う。危ない,危ない。
市の中心部から地下鉄1号線でクロ(九老)。そこで天安行きに乗り換え,加山デジタル団地で7号線に乗り換えて,ナムクロ(南九老)下車。はるばる45分かけて連れて行ったのだから,これで料理が口に合わなかったら非難されることは必定。
ところが,それとなく皆さんに話を聞くと,犬の苦手な人が多いらしい。日本人のうち2人と韓国人1人は,「犬は決して食べない」と心に誓っている。ほかの3人も「できれば避けたい」と思っているらしい。犬を食べたいと思っていたのは,私とK氏だけなのでした。
こういう情勢になったため,犬は差し控えざるを得ず,仕方なく行きつけの「羊の串焼き」の店に入ります。ここは,韓国語があまり通じない。中国語オンリーのメニューを見て,羊串20本と,得体の知れないほかの串焼きを適当に注文。そしてセロリと春雨のサラダ,羊肉の餃子などを頼みました。酒は青島ビールと韓国焼酎。
ふと,壁に目をやると,漢字のわきに「プッキョン・オリ」のハングルが。もしや北京ダックでは? 中国語のできる日本人駐在員に聞くとその通り。値段は一匹3万ウォン。
これは安い!
ただ,でてきたものはいわゆる北京ダック(皮)ではなく,ふつうのアヒルの肉。それを米の皮(?)に包んで食べます。ま,おいしかったですけど。
みなさん,羊の串焼きは初めての人が多く,好評でした。頼んだ酒,料理が尽きたところで,
「さて,別の店に行きましょうか」
と腰をあげる。
中華街の奥にある「東北火鍋城」に向かいます。ここが,件の犬鍋の店なのですが,専門店ではない。羊の火鍋などいろいろなメニューの一つとして,犬鍋もあるということのようです。
私とK氏以外はみな,トイレに行くという。それで,適当に注文をしました。みなさん,酔っぱらっているし,韓国人は中国語がわからないしで,おまかせ状態。
トイレから帰ってくると,留学生の女性がトイレの汚さに驚いていた。あとで私も行ってみましたが,まず電気がつかない。非常に狭い。天井が低い。水道がついているが,水を受けるものがなく床に垂れ流し…。一時代前の韓国のふつうのトイレです。ひさびさになつかしく用を足しました。
そこに,それまで会社に残って残業をしていた韓国人女性職員が遅れて合流する。
鍋は大きな土鍋に白濁したスープ。煮立ったところへ,肉,野菜,豆腐を入れる。香菜(パクチー)が入るのが中国式です。そのほか野菜の炒めものも頼む。サービスとしてプッチムと餃子が出た。
(これ,さっき食べたんだよなあ)
あとから来た女性は,
「イ・クンムル チョンマルマシイッソヨ」
(このスープとてもおいしいわ)
と何度もお代わりをする。寒いときは鍋がいちばんです。途中で春雨を入れ,豆腐も追加する。
しばらくすると店のおばあさんが孫を連れてきて,披露してくれる。赤ちゃんは迷惑そうです。
おおかた食べ終えたところで,日本人留学生が記念写真をとりたいというので,店の人に頼んでパチリ。
さて,お開きという段に及んで,
「ヨロブン,ポシンタン,マシイッソッソヨ?」
と種明かしをします。
「えっ?補身湯?」
「アイゴー」
「まさか~」
「嘘でしょ!」
「羊じゃなかったのか?」
激しく憤る人,顔が青ざめた人,その場は一時的に恐慌状態に陥りました。
「ミアネヨー。でもおいしかったでしょう?」
「ま,おいしかったけど…」と日本人出張者。
「チョウムロモゴッソヨ」(初めて食べたわ)と韓国人女性。
「やられた」と日本人駐在員。
「私,犬飼ってるんです~。ショックです」と日本人女性は涙ぐむ。
彼女がもっとも深刻にショックを受けていました。ちょっとしたいたずらのつもりだったのですが,申し訳ないことをしました。
韓国人の中には,「自分は食べないが,騙されて食べたことがある」という話をしてくれる人がいます。だいたいは,子どものころの話です。ふつう,犬鍋は専門店ですから,大人になってからはまず騙されることはない。韓国人を含めた全員が,こうも簡単に騙されたには理由があります。
まず,店が中国料理店だった。そして,メニューが全部漢字だった。注文する場に居合わせなかった。鍋が土鍋,スープが透明,ケンニプ(えごまの葉。犬鍋にはつきもの)も入っていない,肉の形状も違うなど,韓国の犬鍋とは似ても似つかないものだった。犬の嫌いな人は,犬肉の味を知らないので食べてもわからない。見慣れない肉だけれど勝手に羊だと思い込んだ…
こうしたさまざまな状況のために,みなさん騙されてしまったんですね。
実際,K氏のお勧めだけあって,この店の犬鍋はうまかった。「犬は臭いから」といって進んでは食べたがらないS氏も,「臭みがなかったね」と誉めていました。いつかまた機会があったら来たいと思います。
「犬鍋さん,カリボン洞においしい犬鍋の店を見つけたんですよ」
というメールを事前にいただいていたので,場所は文句なくカリボン洞に決まりました。カリボン洞とは,朝鮮族の集住地で,中国語の異次元世界が広がっています(→リンク)。
私がそのユニークな一画に行く話をすると,「私も行きたい」という人が続出し,結局,私の会社の人々が4人,K氏,S氏,それに最近会社を辞めて韓国に語学留学に来ている女性の総勢8人(日本人7人,韓国人1人)が集まりました。
昼間のイベントが30分早く終わったので,集合時間を早めてもらおうと,K氏,S氏にそれぞれ電話する。S氏は
「あれ? 犬鍋さん,明日じゃなかったでしたっけ」
と寝ぼけたことを言う。危ない,危ない。
市の中心部から地下鉄1号線でクロ(九老)。そこで天安行きに乗り換え,加山デジタル団地で7号線に乗り換えて,ナムクロ(南九老)下車。はるばる45分かけて連れて行ったのだから,これで料理が口に合わなかったら非難されることは必定。
ところが,それとなく皆さんに話を聞くと,犬の苦手な人が多いらしい。日本人のうち2人と韓国人1人は,「犬は決して食べない」と心に誓っている。ほかの3人も「できれば避けたい」と思っているらしい。犬を食べたいと思っていたのは,私とK氏だけなのでした。
こういう情勢になったため,犬は差し控えざるを得ず,仕方なく行きつけの「羊の串焼き」の店に入ります。ここは,韓国語があまり通じない。中国語オンリーのメニューを見て,羊串20本と,得体の知れないほかの串焼きを適当に注文。そしてセロリと春雨のサラダ,羊肉の餃子などを頼みました。酒は青島ビールと韓国焼酎。
ふと,壁に目をやると,漢字のわきに「プッキョン・オリ」のハングルが。もしや北京ダックでは? 中国語のできる日本人駐在員に聞くとその通り。値段は一匹3万ウォン。
これは安い!
ただ,でてきたものはいわゆる北京ダック(皮)ではなく,ふつうのアヒルの肉。それを米の皮(?)に包んで食べます。ま,おいしかったですけど。
みなさん,羊の串焼きは初めての人が多く,好評でした。頼んだ酒,料理が尽きたところで,
「さて,別の店に行きましょうか」
と腰をあげる。
中華街の奥にある「東北火鍋城」に向かいます。ここが,件の犬鍋の店なのですが,専門店ではない。羊の火鍋などいろいろなメニューの一つとして,犬鍋もあるということのようです。
私とK氏以外はみな,トイレに行くという。それで,適当に注文をしました。みなさん,酔っぱらっているし,韓国人は中国語がわからないしで,おまかせ状態。
トイレから帰ってくると,留学生の女性がトイレの汚さに驚いていた。あとで私も行ってみましたが,まず電気がつかない。非常に狭い。天井が低い。水道がついているが,水を受けるものがなく床に垂れ流し…。一時代前の韓国のふつうのトイレです。ひさびさになつかしく用を足しました。
そこに,それまで会社に残って残業をしていた韓国人女性職員が遅れて合流する。
鍋は大きな土鍋に白濁したスープ。煮立ったところへ,肉,野菜,豆腐を入れる。香菜(パクチー)が入るのが中国式です。そのほか野菜の炒めものも頼む。サービスとしてプッチムと餃子が出た。
(これ,さっき食べたんだよなあ)
あとから来た女性は,
「イ・クンムル チョンマルマシイッソヨ」
(このスープとてもおいしいわ)
と何度もお代わりをする。寒いときは鍋がいちばんです。途中で春雨を入れ,豆腐も追加する。
しばらくすると店のおばあさんが孫を連れてきて,披露してくれる。赤ちゃんは迷惑そうです。
おおかた食べ終えたところで,日本人留学生が記念写真をとりたいというので,店の人に頼んでパチリ。
さて,お開きという段に及んで,
「ヨロブン,ポシンタン,マシイッソッソヨ?」
と種明かしをします。
「えっ?補身湯?」
「アイゴー」
「まさか~」
「嘘でしょ!」
「羊じゃなかったのか?」
激しく憤る人,顔が青ざめた人,その場は一時的に恐慌状態に陥りました。
「ミアネヨー。でもおいしかったでしょう?」
「ま,おいしかったけど…」と日本人出張者。
「チョウムロモゴッソヨ」(初めて食べたわ)と韓国人女性。
「やられた」と日本人駐在員。
「私,犬飼ってるんです~。ショックです」と日本人女性は涙ぐむ。
彼女がもっとも深刻にショックを受けていました。ちょっとしたいたずらのつもりだったのですが,申し訳ないことをしました。
韓国人の中には,「自分は食べないが,騙されて食べたことがある」という話をしてくれる人がいます。だいたいは,子どものころの話です。ふつう,犬鍋は専門店ですから,大人になってからはまず騙されることはない。韓国人を含めた全員が,こうも簡単に騙されたには理由があります。
まず,店が中国料理店だった。そして,メニューが全部漢字だった。注文する場に居合わせなかった。鍋が土鍋,スープが透明,ケンニプ(えごまの葉。犬鍋にはつきもの)も入っていない,肉の形状も違うなど,韓国の犬鍋とは似ても似つかないものだった。犬の嫌いな人は,犬肉の味を知らないので食べてもわからない。見慣れない肉だけれど勝手に羊だと思い込んだ…
こうしたさまざまな状況のために,みなさん騙されてしまったんですね。
実際,K氏のお勧めだけあって,この店の犬鍋はうまかった。「犬は臭いから」といって進んでは食べたがらないS氏も,「臭みがなかったね」と誉めていました。いつかまた機会があったら来たいと思います。
犬肉は今回で3回目ですが、あそこは、犬肉独特の臭みがなかったので、私でも抵抗無く食べることができました。よく話に聞いてはいましたが、臭みの無い犬肉があるということがわかりました。あの肉で、カリボン風味噌仕立て鍋であれば、かなりおいしいのではないでしょうか。
犬肉をおいしさを見直していただき,私も嬉しいかぎりです。
またお会いできる日を楽しみにしています。