仏面と竈面
再び、古面です。
わけのわからない物がほとんどの古面のなかで、仏面と竈面は用途がはっきりとしています。いずれも、宗教的色彩がつよい物です。
ネパールの巨大仏面
巨大な面です。とにかく大きい。私のもっている90枚の木彫面のうち、一番大きい。一本の木から彫られています。ゴロッと横になられた(私が誤って倒してしまった)時、戴冠の一部分が折れてしまいました。あわててボンドで補修。表面の彩色もボロボロ落ちてきます。
誰が、何のために、どうやって日本まで運んできたのでしょうか。
行道面
行道面は、大きな寺院の法要など重要な行事の時、僧侶などの行列者がかぶる仮面です。古くは、平安時代、東大寺で、のちに、法隆寺などで、行道が行われ、種々の行道面が用いられました。その中で、菩薩面は、最も一般的なものです。
行道面が市場に出ることは極めてまれです。写真の菩薩面は、江戸時代後期ごろの物でしょうか。能面、祭面などに較べると、一回り大きいです。各寺院に保存されている、種々の行道面も大きな物がほとんどです。おそらく、すっぽりとかぶって、行列者の顔が完全に隠れるように作ってあるのでしょう。
小さな仏面
縦10cm、横6cm
これは手のひらにすっぽりおさまる、小さな仏面です。私のもっている面のなかでは一番小さな面です。庶民的な表情の面ですが、立派な仏面です。
裏面には、「元禄七戌甲年八月二八日之作 法橋康圓 西側中願」とあり、江戸中期の作であることがわかります。
竈面(かまどめん)
縦74cm、横48cm
巨大な面です。一枚の巨大な板をくり抜いて彫られています。しかも、分厚く、とても重い。大人一人でどうにか抱えもつことができる重さです。
竈面も宗教的色彩のつよい面です。北関東や東北地方には、台所の柱に掛けて、魔除け、火の用心を念じるために面を飾る風習がありました。設置される場所柄か、たいていは黒い。鉈、鑿の跡も生々しい、荒削りの面です。大工などが、仕事の傍らで彫り上げるといわれています。
モアイの竈面?
この面は、写真ではずいぶん大きく見えますが、実際は普通の大きさの面です。彫りや黒さから竈面としましたが、別の類の面かもしれません。哲学的な風貌は、モアイ像を連想させます。白隠描くところの菩薩にも似てますね。