江戸時代に出された『音曲玉淵集』です。
『音曲玉淵集』は、江戸時代に出された謡曲関係の本の中でも、特に詳しく謡曲の謡い方を説いた秘伝書といわれてきたものです。
本来は全5巻ですが、故玩館にあるのは、二、四、五の3巻です。
また、明治、大正にも『音曲玉淵集』が出版されました。それらも併せて紹介します。
時中庚妥 編 、今村義福述僻案『音曲玉淵集』江戸時代(寛保三年?)
右から、二、四、五巻。
木版でびっしりと書かれています。右から、二、四、五巻。
二巻
四巻
五巻
五巻末
奥付無し。
『音曲玉淵集』は、時中(三浦) 庾妥 (つぐやす)が、享保 12 (1727) 年に著した書ということになっています。しかし、現存するほとんどの『音曲玉淵集』は、寛保三年(1743)、今村義福が当時流布していた『音曲玉淵集』を編み直したものです。そして、宝暦十二年(1762)以降、何回か版を重ねています。明治以降に、再刊された『音曲玉淵集』も、宝暦版をもとにしているようです。なお、享保十二年版や寛保三年版に奥付があったかどうかは不明です。
今回の品ですが、5巻末には、奥付がありません。
そして、特徴的なのは、いずれの巻も、表紙に、凸凹で幾何学模様を著した肌色の厚紙が使われていることです。
このような本は、一般の書より高級品とされています。
ひょっとしたら、寛保三年版かもしれません。
この模様が流行った年代が分かれば、特定できるかもしれません。
前所有者の蔵書票が貼ってあります。大正2年当時から、この3巻だけだったのですね。
明治にはいってからも、『音曲玉淵集』は出されました。
国会図書館のデジタルこコレクションにあるのはこの本です。
大和田建訂『音曲玉淵集』江島伊兵衛発行、明治32年(明治36年6再版)、315頁。
木版から活版に変わりましたが、ほぼ、江戸版の表記を踏襲しています。
さらに、大正に入ってすぐ、『音曲玉淵集』が発行されました。
丸岡桂校訂『音曲玉淵集』観世流改訂本刊行會、大正元年、268頁。
発明家にして能楽研究家、観世流謡本の大改訂を志した丸岡桂の手になる本です。
ゴチを多用して、理解しやすいように工夫されています。
このように、故玩館所蔵には、『音曲玉淵集』が、江戸版、明治版、大正版揃っています。この3種を較べてみます。
江戸版
明治版
大正版
文章は全く同じなのですが、雰囲気が大分違います。
しかし、わかり易さは、やはり近代の版が勝っています(あたりまえですが((笑))。
これらの『音曲玉淵集』は、ずいぶん以前に入手しました。けれども、なかなか手強くて、ほとんど読んでいません。
それでは宝の持ち腐れ。思い切って、少しだけ齧りました。
結果は次回のブログで(^.^)