しばらく、地味で武骨な木の品が続きましたので、今回は、仕切り直しをして、少しカワユイ物の紹介です。
「曙塗五色銘々菓子器」と書かれた共箱に入っています。箱裏には、「金城 萬茂」の銘が入っています。萬茂は、天明年間創業の名古屋の老舗漆器店で、今も続いています。
五色の色違いの木製菓子器で、表には文字模様、裏は千筋の塗りになっています。
径 15.0㎝、高 3.4㎝。明治~戦前。
他の四枚は、色違い、図柄違い。
5枚とも、端正なフォルムです。
表面は、5枚とも、細い筋状の凹凸塗りとなっています。
拡大して見ると・・・
最外層の透明漆を凸凹に塗ったるだけでなく、下地の緑漆も筋状に塗られていることがわかります。結構手間がかかっています。
さて、問題の曙塗りです。
曙塗りは、下地の赤漆の上に、黒漆を塗って、塗り残った部分が赤色模様になるというものです。夜明け前、暗闇から太陽が赤らんでくる様子になぞらえたのでしょう。丁度、黒の下地に赤色を塗って、塗り残った部分を黒模様として生かす根来塗の反対の技法です。なお、典型的な曙塗りではないけれど、赤漆の上に黒漆を塗って模様を出した品も、曙塗りと言われている場合があるようです。拡張曙塗りですね。
で、そんな曙塗りの箱書きがある今回の品ですが・・・・・どれだけ探しても、「赤の地に黒模様」など見あたりません。
看板に偽り有りか?
ひょっとして、裏側の千筋模様に何かが・・・
拡大して見ると・・・
木地に千筋を彫り、全体を茶(黒朱?)塗った後、凹部を黒に塗ってあり、茶(黒朱?)が筋状に残っています。この凹部の黒塗りも、よく見ると、黒点を無数に打っていったものであることがわかります。千筋の中には細い縦の白線がビッシリとあります。さらに、黒丸で点々と左上から右下へ模様が描かれていて、千筋の同心円模様を横切る筋模様になっています。
裏側にこれだけ凝るのは、江戸以来の粋ということでしょうか。
丹精を込めて作られた曙塗りです。
職人の心意気に敬意を表して、季節の和菓子をのせ、いただきました(^.^)