唐津系現川焼の茶碗です。
現川焼は、江戸時代中期、長崎県現川において、60年程の短期間、主に茶陶を焼いた窯です。薄い陶器の肌に、白泥で模様がつけられています。京風の瀟洒な絵付けがなされた品もあります。生産期間が短かったこともあり、品物は少なく、珍重されています。
今回の品は、もちろん発掘品です(伝世完品は高価(^^;)。
径 11.1-8.3㎝、高台径 4.2㎝、高 6.8㎝。江戸中期。
内側には、全面に打ち刷毛目が施されています。
高台は肥え痩せが激しく、俗にいう三日月高台です。
中央に向かって、白泥で渦模様がダイナミックに描かれています。
高台中央には兜巾(ときん)があります。
外側には、全面に櫛目模様が波うっています。
実は、この品は入手時、大きな疵があちこちにあったことはもちろんですが、刷毛目模様もはっきり見えませんでした。というのも、器の表面は発掘時の土で覆われていました。土中が長かったせいでしょうか、上釉と土とが堅くくっついた状態だったのです。とても口で触れられるような物ではありませんでした。やむなく粗目のサンドペーパーから、順に研磨をしていきました。最終的に、ファインセラミックのコンパウンドで磨きました。その結果が上の写真なのです。この作業に、1か月もかかってしまいました(^^;
やはり、手間をかけただけのことはあります。刷毛目模様がくっきりと出ただけでなく、表面は艶々、手にシットリと馴染み、違和感がありません。
次は、欠けの修理です。
漆パテ(刻苧漆(こくそうるし))で欠けを補修しました。
問題は、刷毛目模様をどうやって描くかでした。
どうしても、筆先が震えてしまうのです(^^;
模様をよく見ると、櫛目模様の起点、終点がわかります。ためらいなく、一気に引かれているのですね。ところが、実際にやってみると、このような線は、一朝一夕で引けるものではないことがわかりました(^.^)
まあ、素人修理はこんなものでしょう。
せっかくの小服茶碗です。けっこう手に馴染むので、コロナ下の一服を味わってみることにしましょう(^.^)