遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

能画7.月岡耕漁『松風』

2022年04月23日 | 能楽ー絵画

今回は、明治の浮世絵師、月岡耕漁の肉筆『松風』です。

27.4㎝x37.8㎝、捲り。明治。

月岡耕漁(つきおかこうぎょ):明治二年(1869)ー昭和二(1927)。明治の浮世絵師、日本画家。能画のジャンルを確立した。

月岡耕漁は、多数の能画を残した、明治能画界の第一人者です。

そのほとんどは、彩色木版画ですが、今回の品は肉筆です。

また、能画のパターンとしては、明治に主流であった、能舞台の一場面をえがいたBタイプです。というよりも、彼があまりに多くのBタイプ能画を描いたので、明治以降の能画の主流がBタイプになったと言ってもよいでしょう(^^;

さて、能『松風』は、文字通り、能らしい能です。優れた能役者たちによる舞台を鑑賞すれば、かならず幽玄の世界に浸ることができるからです。

昔から、「松風、熊野、米の飯」と言われたほど人気があり、日本人の感性に合う名作です(世阿弥作)。

【あらすじ】
旅の僧が、須磨の浦にやってきて、海辺にいわくありげな一本の松を見つけます。地元の男に謂われを聞けば、この松は、在原行平(業平の兄)の寵愛を受けた松風、村雨という二人の海女の旧跡だという。僧は二人を弔った後、塩屋に宿を借りようと主を待ちます。そこへ、汐汲を終えた若い二人の女が帰って来ます。僧が、松風、村雨の旧跡を弔った話をすると、二人の女は急に泣き出し、自分たちは松風、村雨の亡霊だとあかし、行平との恋しい日々を語ります。 姉の松風は、行平の形見の狩衣と烏帽子を身に着け、次第に半狂乱となり、松を行平だと思い込んで、舞い狂います。そして、夜が白々と明けるころ、二人は供養を僧に頼み、姿を消します。気がつけば、松風の狂乱の舞いは夢幻で、松を渡る風ばかりが聞こえているのでした。

松風が、汐汲みから帰って来ます。白い水衣に身を包んでいます。村雨も同じ格好。二人の若い女性の出で立ちは、眩しい美しさです。

舞台には、二人の旧跡であり、在原行平との日々が凝縮した松が置かれています。

汐汲み車も重要な小物。

浮世絵師ですから、確かな筆致です。  

松風は、行平への狂おしい恋心を内に秘めています。月岡耕漁が描く松風の表情に、それを感じられるようにも思えるのですが、いかがでしょうか(^.^)

 

 

 

 

コメント (4)
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