遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

能画25ー1.古画『高砂』『道成寺』

2022年07月23日 | 能楽ー絵画

今回の品は、非常に時代のある能画です。

屏風剝しと思われ、全部で6枚あります。

時代は江戸前期、大きさは、幅29cm、長さ39cmほどです。

6枚の古画を3枚ずつ、2回に分けて紹介します。

『高砂』

高砂の尉です。

高砂の姥です。

いずれも、力強く描かれ、江戸前期の人物画によく見られる描き方です。

尉が熊手を持っているので、『高砂』とわかります。

姥が右手に持っているのは、箒でしょう。

 

『道成寺』

女面をつけた人物です。

これは誰?

左手に扇を持ち、横向きに構えています。

左足を上げています。先回紹介した扇型奈良絵『道成寺』(下図)と同じところを描いています。

鐘入り前、小鼓との緊張したやり取りで、長ーーーーい沈黙のと、やっと一歩をすすめる場面です。その後、鐘に入った女は、蛇に変身する訳ですが、その予兆として、長絹の裾は、三角形の鱗模様になっています。

また、周りには、白っぽい丸模様が、点々とあります。拡大して見ると、剥げているのではなく、銀泥が塗られていることがわかりました。どうやら、桜の花のようです。物語の前半部、里の女がまず、不気味に謡い始めます。「花の外には松ばかり。花の外には松ばかり、暮初めて。鐘や響くらん。」実際の舞台には何も無いのですが、これで桜が咲き乱れる春の季節が表されます。この絵は『道成寺』の舞台の一場面を描いたものですが、実際には見えない桜花を散らしているのが珍しい。タイプBの能画に、タイプAの要素を加えているのですね(^.^)

 

今回の品は、いずれも、能舞台の一場面を描いたBタイプの能画です。特筆すべきは、人物を一人(主にシテ)しか描いていないことです。この描き方は、明治以降の能画には多く見られますが、江戸時代の絵画では大変珍しいものです。

今回の絵には、一人分の情報しかありません。先回の『羽衣』の松のようにヒントとなる小物類も描かれていません。ですから、能の演目を探り、絵のタイトルをつけるには、苦労しました(^.^) それでも、今回はまだわかりやすい方でした。次回の品(残りの3枚)には手こずりました(^^;

コメント (4)
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