今回の品は、板に描かれた人物画です。
縦 46.3㎝x横 45.8㎝。江戸中期~後期。
神社仏閣に奉納された板絵額です。
上下の端に、釘を打った跡があります。実際に掲げられていたのでしょう。そのわりには、絵が非常に鮮明に残っています。
若者が小鼓を打っています。小鼓の上達を願って奉納したのでしょう。広い意味で、絵馬の一種と考えて良いと思います。
非常に珍しい図柄です。
「施主 下町 何某」とあります。
「淀屋勇吉」がその人なのでしょうか。それとも、この絵を描いた絵師の名前?
小鼓を打つ姿勢、右手、左手の形など、実際の演奏の様子をかなり忠実に描写しています。
小鼓は、能だけでなく歌舞伎や舞踊などにも使われますから、この若者が何用の鼓を打っているのかはわかりません。が、膝の横の扇子に注目。能の小鼓の場合、打つ前に、帯に差した扇子を取って、右端に置きます。ですから、この若者は、能の小鼓を打っていると考えて良いでしょう。
これまで紹介してきた能画は、能の一情景を想像で描いたタイプAの能画、あるいは、能舞台の一場面を描いたタイプBの能画のどちらかでした。今回の品はA、Bの範疇に入らないので、タイプCの能画とします。今後、タイプA、Bに入らないその他のものは、便宜上、すべて、タイプCとします(^.^)