今回は、能管筒です。これは、能管を保管するための品ではなく、能管を入れて腰に差し、能舞台に上がる物です。笛方は、舞台に座ると、この筒からおもむろに能管を取り出し、右ひざに立てて待ちます。目立ちませんが、結構重要なアイテムです。
似たような品が多いので、今回は代表的な3本をとりあげました。
まず、一番オーソドックスな能管筒(写真中央)です。
ボロボロになった笛袋に入っていました。袋からすると江戸期か?
口径 3.6㎝、底径 3.1㎝、長 39.1㎝。江戸?
ボディは紙です。黒漆を全体に塗り固めています。いわゆる一閑張(いっかんばり)です。金具が失われています。
かなり使い込まれ、口元の漆が剥げています。
筒底には、穴が開いています。
黒漆に、華麗な蒔絵をした物もあります。ぐっとお値段が上がります。
次の能管筒(写真左)は樹脂製です。
口径 3.7㎝、底径 3.3㎝、長 40.2㎝。昭和。
かなりしっかりとしています。その分、重い。
樹脂製の能管筒は、扱いやすいです。が、熱成型しただけの粗雑な造りの物が多いです。その中で、この品は、内部を削って整えてあり、塗りも本格的です。しかし、樹脂は樹脂(^^;
さて、今回のブログのメインはこの品(写真右)です。
口径 3.3㎝、底径 3.0㎝、長 39.8㎝。明治?
非常に珍しい能管筒です。特注品でしょう。
形は同じですが、通常の一閑張(紙ー黒漆製)ではなく、竹でできています。竹という素材は通常少しひしゃげていますが、この品はほぼ真円に内外を削って成形しています。竹の内側を丸く削るのは、かなりの技と手間が要る作業です。その結果、筒の厚さは非常に薄く、手で持っても竹であることを感じません。
底が節になっていて、やはり水抜きの穴が開いています。
竹の繊維が縦に走っているので、薄くても強度があります。
途中には、節を削った跡がみえます。
しかし、竹は横方向の力には弱い。経年の劣化で、割れ目ができています。私が漆で補修しました。イマイチ(^^;
ま、上品な蒔絵の方に自然と目が行くので、割れ目は目立たないでしょう(^.^)
こうやって、3種類を並べてみると、
竹製能管筒の風格が際立ちます。
手にするとさらに違いが実感できます。ふわりと軽い。
プラ製 159g、紙漆製 が83gに対して、この品は、わずか47gなのです。
竹は高いポテンシャルをもった素材ですね(^.^)
見ているけど見えていない。
こんなことは山ほどありますね。できるだけ、見える物を多くして、残りの骨董人生を終わりたいものです(^.^)
それから、確かに刀の鞘に似ていますね。でも、その角度で袴の紐に差すと、少しうつむいただけで能管がポロリと抜け落ちてしまいます。ので、胸元から腰へ、かなり立て気味に差します。少し、不格好です。
まるで刀を鞘に入れて腰に差して持ち歩くようなものですね。
刀の鞘にも見事なものがありますものね。
それと同じように、いろいろとあるのですね。
このような物があるとは知りませんでした。