西アフリカ、マリ共和国、ドゴン族の穀物庫の扉です。
ドゴン族は、人口約25万人、バンディアガラの断崖と呼ばれる乾燥地帯に居住する人たちです。
断崖の上の大地や下の平原にひっそりと住んでいます。争いを好まない彼らは、宗教的迫害や奴隷狩りから逃れ、このような場所で、外部との接触を断ちながら暮らしてきたので、独特の文化が発達しました。
仮面や家具などの木彫にも、非常に味わいのあるものが多く、アフリカを代表する木彫文化だと言ってよいでしょう。
その中でも、穀物庫の扉は、代表的な品です。穀物庫は、筒型の手造り土蔵で、その上部にこの扉が取り付けられています。
大きさ、44x67x6.5㎝、重さ、4kg。
穀物庫の扉としては、大型の部類です。
堅くて重い木からできています。
かなり分厚い木(8㎝以上)から彫り出されています。
裏面。3枚の板を合わせていることがわかります。
下部と上部に横木をあて、手造りの鉄金具でしっかりと接合しています。この鉄釘も味わいが深く、全体と調和しています。
扉は、ロックできるようになっています。
このドアロックの部分は別に作られ、金具で接合されています。ドアロック部分も独特の彫りがなされているので、この部分だけ売られることもあります。
扉の彫刻を上から見ていくと
仮面(カナガ仮面、葬儀の仮面舞踏に使われる)をつけた男たちが、2人の男性に挟まれています。
女性を表しているのでしょう。
男たちとウサギ?の仮面をつけた人物。
最下部には、なにやら物語の場面が彫られています。
これは、ヘビ?
ドゴン族は、独特の世界観、宇宙観をもっていて、それがこの扉にも反映されています。扉の彫刻は、彼らの社会に伝わる神話を表していると考えられます。また、様々な災いから自分たちをから守るため、動物や人をモチーフとした精霊の装飾を施したとも言われています。
ヨーロッパやアメリカでは、アフリカの彫刻は人気が高く、コレクターも多くいます。日本では、20年程前、多数のアフリカ彫刻が招来された時期があり、価格も高騰しましたが、その後は落ちついています。
ドゴン族の穀物庫扉は、デザイン的にすぐれていて、壁掛けなどに適しているため人気が高く、バイヤーによって数多くの品が西欧諸国へ渡りました。その結果、ドゴン族の穀物庫の扉の多くが、廃材のアルミサッシなどに変ったと言われています。
なんともやりきれない話ですが、私も一枚持っているのです。
嗤うアフリカ! 嗤われているのは私たちなのかもしれません。
中の穀物を大事に思う気持ちが表れていますね。
アフリカ以外の国の人がアートとして所持しているのにたいして、
実用的で大事だった扉を手放し、廃材のアルミサッシに変わってしまった、というのが、
なんとも言えないですね。
でも、この扉の価値を分かる人から人へ、代々伝えられていくのなら、
この扉の寿命も長くなるのでしょうね。
良いものを見せて頂き、刺激になりました(^_-)-☆
アフリカ美術の力強さには、本当に圧倒されます。柳宗悦の言葉を借りるなら、暮らしの中で使われる品がもっている健康な美でしょうか。私はさらに、アフリカの品のなんとも言えない遊びごころやユーモアも好きです。
大英博物館と植民地をもちだせば大袈裟すぎますが、昔も今も、美術品、骨董品は、弱いところから強い所へ、貧者から富める者へ移動します。富にも力にも無縁の私が一個持つのもおかしいのですが、おっしゃるように、持つからにはそれなりの責任を果たさねば・・・。
きっとパーツ一つ一つに謂れや願いがあるのでしょうね。
現代ではオブジェですね。
しかも自分たちで、それぞれが好きなように彫るそうですが、似たような彫りの扉になるというのも不思議です。
やわな現代アートなど蹴散らすくらいのパワーがありますね。
大切な穀物を、ネズミなどから守るために(?)、精魂込めて作ったんでしょうね。
大切な穀物を、ネズミなどから守るために(?)、精魂込めて作ったんでしょうね。
ネズミよけの呪い的な意味もあると思います。いろんな意味が込められているので、ここまで時間とエネルギーを注ぎ込めるんでしょうね。
幅広いコレクションに感服いたしました
これこそ本物の「用の美」なんでしょうね。
手仕事の美に関しては共通していますが、アフリカの場合は、遊び心や憎めないおかしさみたいなものが感じられ、そこになぜか惹かれてしまいます。