遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

李朝染付大徳利の悪巧みを暴く

2021年08月16日 | 古陶磁ー高麗・李朝

先回、李朝の染付大徳利を紹介しましたが、どうも腑に落ちない品でした。

それが、これ。

疑念が疑念をよび、そういえばここがおかしい、あそこも怪しいとなって、全面的に見直すことにしました。

まずは、はっきりとした箇所から。

胴に大きなニュウがあります。写真では見難いですが、ニュウの両側、釉薬が剥がれたようになっています。ナイフでつついたら、ボロボロと剥がれてくるではありませんか。

厚めに塗料がぬってあったのですね。さらに、ニュウから離れるにしたがい、薄塗りになっています。芸が細かい。でも、時間がたつにつれ、厚塗りの部分から少しずつ自然に剥がれてきたようです。化粧みたいなものですね(^^;

周辺の薄塗り部もふくめて、一皮むけば、これこの通り。本当の顔が表れました。やはり、この方が素直です。釉薬の自然な光沢が戻りました。

次に疑ったのは首です。胴のニュウのようには、はっきりしていませんが、妙にのっぺりとした質感です。そして、質感が違う所がグルッとあります。これは怪しい。継ぎ目では?

ナイフで削ると、上側の方が柔らかく、削れてきます。そして、継ぎ目表れました。

下は陶磁器なのですが、首(10㎝ほど)の部分は、石膏。その上に、塗料が塗ってありました。やはり、継ぎ目部分には厚く、周辺になるにつれて薄く、全面的にぬってありました。しかも、まっすぐに継いでない。首が曲がっています。これなんかも、以前の段階では、少し傾いだ様子が味わいだ、となっていました。しかし、その実態は、あばたもえくぼではなく、あばたはあばた(^^;

 

石膏で作ったのですから、首の部分がのっぺりしているはずです。当然、内側に轆轤目もありません(^^;

一方、大きな疵のない胴の部分には、ボヤッとした染付で草紋が描かれていますが・・・・

少し研磨剤で擦ってみると、一皮剥けます(左側半分弱)。

力を入れて全面的に磨けば・・・

塗料がとれて、本来の染付草紋が表れました。

反対側の染付草紋も同様に綺麗になりました。

 

結局、この大徳利のぼやっとした感じは、

李朝の素朴な造りによるものではなく、

大疵、大欠けを補修し、灰色がかった塗料で器全体を糊塗した結果の産物だったのです(^^;

今回の品は、たとえ完品であっても、ワーワーいうような代物ではありません。いわば、駄品。ま、こんなのが一個あってもいいかな、ぐらいのつもりで入手した物です。

しかし、そこに落とし穴が😢

こんな品に、手間暇、金をかけてまで、人を引っ掛けるような細工をするはずがない、という駄品バイアスがかかっていたのですね😢


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
遅生さんへ (Dr.K)
2021-08-16 13:55:38
やはり、工作を加えてありましたか。
李朝は、バカみたいに高くなりましたからね。
手間暇かけてもペイしたんでしょうね。
でも、塗料のようなものを剥がしたら、本来の綺麗な肌が出現しましたね(^_^)
よかったですね(^-^*)
首の部分の継ぎ目は、水彩絵の具でも塗って、目立たないようにすればいいかと思います。
大きさといい、綺麗な李朝の肌と文様といい、無傷ではないですが、立派な李朝です(^-^*)
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Dr.kさんへ (遅生)
2021-08-16 14:20:34
ここまで大々的に補修をやられると、苦笑苦笑です(^^;
なるほど、こういうテクニックを使えば、きれいに直せるのかと、妙に感心します。しかし、石膏で10cmも管を作るとなると、結構難しいと思います。
贋物屋さんに弟子入りして、技術を習得する方が近道かも(^.^)
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すごい!! (ゆり)
2021-08-16 19:55:48
こんばんは。

すごい目利き!!
ただただ感心しきりです°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
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ゆりさんへ (遅生)
2021-08-16 20:28:59
目利きではありません。その逆です。
気づいたのは、ブログ記事を書いていた途中です。それまではずっと騙されていたわけですから。
で、一度それと気がついたら、もうあとは執念ですね(^.^)
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遅生さんへ (酒田の人)
2021-08-16 20:57:12
なるほど~、李朝は難しいですね・・・
それにしても上手いこと仕立てるもんですね
色々な意味で勉強になります。
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酒田の人さんへ (遅生)
2021-08-17 06:12:02
今回の品は、まさにシテヤラレタ、という感じですね。
やはり、疑いをもって物を見る事が必要です。

私は人生につぃては悲観的なのですが、骨董には楽観主義。で、しばしば、こういうことが起こります(^^;
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Unknown (mobilis-in-mobili)
2021-08-17 19:06:14
李朝のものは形の歪みさえも『おおらかな作風』と思いがちですが、まさか本当に歪んでいたとは‼️まあ仕方ない。よい勉強をさせて戴きました。
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mobilis-in-mobiliさんへ (遅生)
2021-08-17 20:42:15
こういうのに遭遇すると、本当に嫌になります。
今まで色々怪しい品に出会い、痛い目にあいましたが、その経験がなかなか生かせません(^^;
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