遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

ガラス3 明治ビーズ風竿

2020年08月21日 | ガラス

今回は少し大きな品です。

ガラスビーズでできた風鈴?です。

 

全長 108.5cm、直系 14.0cm。 明治。

 

丈夫な紐で、上から吊るす形式です。

 

ガラスビーズでできた王冠状の飾り部です。

針金に、種々のビーズが通され、作られています。一部、針金が切れて失われている部分もあります。

 

そこから、10本の糸が垂れています。古い糸なので、所々、切れて繋ぎなおしてあります(^^;

 

 

色々な大きさのビーズが使われています。

大玉;径18㎜、濃青

中玉;径6-9㎜、緑、白

小玉;径4㎜、桃

極小玉;径3㎜、青、白

一部は切れてなくなっています。最上部から大玉をまたいで、ビーズ糸が垂れていますが、一本だけでは不自然です。元々は何本かついていたのでしょうが、失われたと思われます。最初は、もっと豪華なつくりの品だったのでしょう。

 

針金が切れて、バラバラになっていた極小玉です。ややドーナッツ形です。

 

一番下に、紅葉と桜の金属板が取り付けられています。

シャラン、チーンと複雑な音色が響きます。

金属は、錫のようです。

 

動作や音は、風鈴に見えますが、これを風鈴と言ってよいのでしょうか。

少し、調べてみました。

江戸時代のガラス商、加賀屋の引き札に、似た品がありました。

右上端の品です。「風計」と書かれています。

王冠部は、私の品よりずっと豪華です。吊り下った金属板も形が違うようです。

  加賀屋引き札、2版 (由水常雄「ガラス工芸歴史と技法」)

同じく、加賀屋の引札ですが、こちらは2版です。

最初の引き札とよく似ていますが、これには「風竿」と書かれています。やはり王冠部は豪華ですが、吊り下がった金属板が桜、紅葉に見えます。

注目されるのは、その左側に細長い形の小さな品が2つあり、「風鈴」と書かれています。いわゆる江戸風鈴ですね。

風鈴は、今回の品とは、異なる類の物であったことがわかります。

 

 

王冠の豪華さが薄れてはいますが、今回の品は、幕末期の興隆したガラス器の流れを引いて、明治期に造られた「風竿」といってよいでしょう。

当時の人々は、「風計」や「風竿」といった呼び名に、何か特別の意味をもたせていたのでしょうか。

 

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ガラス2 手作り板ガラス風鈴

2020年08月19日 | ガラス

手作り感あふれるガラス風鈴です。

全長 60㎝(吊糸含む)、幅 12㎝。昭和。

 

上側に、金魚の描かれた灯篭状のガラス。

 

その下に、板ガラスが竹輪から吊り下げられています。

 

風が吹くと、この板ガラスがお互いにぶつかり合って、音が出ます。

時代や産地は、はっきりしません。民芸品、あるいは、おみやげ品かもしれません。讃岐、丸亀ともいわれます。いずれにしても、小規模に家内生産された物でしょう。

 

全体はこんな風です。

飾りの金魚部は、4枚のガラス板に穴を開け、糸で結んでいます。

 

音を出す板硝子は、正方形が4枚、長方形が6枚です。

片側には、素朴な花の絵が描かれています。

 

裏側はというと、糸紐を紙で押さえ、糊でくっつけてあります。表側からみると、この紙は、花びらで目立ちません(^^;

 

細長い板ガラスにも、素朴な花びらが描かれています。

 

これも、やっぱり、紙で糸を止めています。

 

これを拡大してみると・・・

本(小説?)の1ページを切り取って、押さえ紙につかっているではありませんか(^^; 

内職の舞台裏が覗けますね(^.^)

 

手作り感にあふれて、ほほえましい風鈴ですが・・・

普通の板(窓?)ガラスを切ったままなのです。切り口がとても鋭い。

 

こちらの板ガラスも、エッジが鋭い。

 

金魚の板も、切りっぱなしですが、色を塗っていて、その分にぶくなっているので少しはマシ(^^;

 

定位置に吊るしてみました。

先回のガラス風鈴とちがって、これは一つだけで、結構複雑な音がします。

でも、糸が相当古くなっていて、風が吹くと、切れるやもしれません。

この場所は、吹き抜けの上部です。もし、糸が切れたり、止めの紙が剥がれたりすれば、鋭い板ガラスが下へ飛んでいくことになります。

はらはら、ドキドキの手作り風鈴です(^.^)

 

 

 

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ガラス1 江戸風鈴

2020年08月17日 | ガラス

コロナ酷暑の中、陶磁器の些細な事に一喜一憂していても頭がカッカするだけですので、少し涼し気な品にチェンジすることにしました。

手元にあるガラス類を紹介します。

私の事ですから、ほとんどがガラクタ、図録に出てくるような名品は一つもありません。ま、贔屓目に見れば、庶民の日常で愛されてきた品々といえるでしょうか(^^;

 

今回は、ガラスの風鈴です。

 

 

気泡やよれが多くみられます。

戦前の品です。

 

内側に、花が描かれていますが、ほとんで剥がれています。

 

内側の絵が、ほぼ残っているガラス風鈴です。

本体や付属品の作りは、先の風鈴とほとんど同じです。ところどころに気泡やゆがみがみられます。戦後すぐ位の品でしょう。

 

 

 

糸で吊られたガラス棒が風に揺られて本体に当って、音が出ます。

 

この風鈴も、上の二つと同じ作りです。

 

ガラスは新しく、昭和も後の方の品でしょう。

 

3個の風鈴に共通しているのは、ガラス棒が当たって音が出る本体の穴の部分がギザギザになっていることです。このギザギザによって、微妙な風鈴の音が得られるのです。確かに、普通のガラス風鈴が、チン、チン・・と鳴るのに対して、この風鈴は、チ、チ、チ、チリンと聞こえます。

このようなガラス風鈴は、江戸風鈴とよばれ、江戸時代から変わらない製法で作られてきました。ガラスの長い棒(共竿)の先に熔けたガラスを巻き取り、宙吹きで膨らましてできた風鈴を切ってギザギザの底をつくります。

実は、江戸ガラスは、この製法で風鈴を作ってきた篠原儀治が、昭和40年頃に命名したもので、現在は登録商標となっています。

現在、江戸風鈴を作っているのは、篠原風鈴本舗篠原まるよし風鈴の2カ所です。

非常よく似たガラス風鈴が、もう3個ありました。

 

 

少し小さい玉子形です。比較的新しく、三番目の江戸風鈴と同じ位の時期につくられたものでしょう。

この風鈴には、底のギザギザがなく、チン、チンと単調な音です。

 

並べてみると、なかなか風情があります。

 

日が暮れると、風が出てきました。ガラスの柔らかな音もいいものですね。

 

ところで、どういうわけか、今年は、ガラス風鈴が各地のイベントなどで使われているようです。

これは、関ケ原古戦場にあるテーマパーク、関ケ原ウォーランドで現在行われている、関ケ原風鈴祭りの様子です。

去年から始まったイベントで、ガラス風鈴5000個が、200mにわたって吊るされた、日本一の風鈴祭りだそうです。

まあ、関ケ原古戦場とはいっても、何も残っていないわけですから、お定まりのジオラマなどでお茶を濁すよりは、ガラス風鈴の音の方が、当時を偲べるかもしれません。

でも、これだけ数が多いと、少しの風でジャーンと鳴り、ガラス蝉が鳴いているのかと思いました(^.^)

 

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大皿(番外編) 古箱の修理と深まる謎

2020年08月16日 | 古陶磁ー大皿・大鉢・壷

お盆でコロナ、それに酷暑。家にすくむ毎日が続きます。

この際、普段はなかなかできない、ガラクタの整理や補修でもと、とりかかったのが、大箱の修理です。

先日の絵瀬戸鳳凰紋大皿が入っていた箱です。

皿が巨大ですから、当然、箱も大きい。50㎝オーバーの古箱です。

元の蓋は失われ、前所有者が、素晴らしく立派な材で、新しい蓋をしつらえていました。

しかし、他の部分が痛んでいます。特に、底部の痛みが激しい。

先日、一部を補修しました。

 

底に白く見えるのが、私が繕った所です。

底の外周に1㎝程の幅で付けられた木枠です。箱紐を掛けるためと持ち運びのしやすさのためについているのだと思われます。

この箱に限らず、古い箱、特に重い品が入っている場合、この枠の一部が失われていることが多いです。すると、がたついて不安定なのと、紐が掛けられません。

この箱の場合、4本の枠の内、残っていたのは1本のみ。

残りの3本を付けます。

作業は、非常に簡単です。

ホームセンターで、同じ大きさの材料を求め、木工ボンドで接着するだけです。これで強度は十分です。古いスタイルに揃えるなら、錐で穴を開け、竹櫛か爪楊枝を打ち込んでおけばOKです。

 

紐を通す部分は、あらかじめ削っておきます。

 

これで、できあがりです。

問題は、古箱にこの新しい木の部分がそぐわないと感じられる場合です。

統一感を得たいときは、次の方法で時代づけします。

煤。

 

ベンガラ。

 

荏油。

 

布に、荏油を含ませ、煤を少量つけてすり込みます。赤味がかった木肌の場合は、ベンガラも加えますが、ほとんどの場合は必要ありません。

煤が手に入らない場合は、荏油だけでもそこそこいけます。

 

縦が残っていた部分、横が新しい木枠です。

 

処理前:

処理後:

 

箱本体もみすぼらしい(^^;

 

そこで、箱の内、外側全体に、荏油だけをすり込みました。

こうすると、小傷などはすべて目立たなくなり、全体が引き締まります。一日後、布で空ふきをしてやれば、完成です。荏油は樹脂化し、木部の強度を高めます。防虫の効果もあります。

これは、古くから飛騨地方で、家屋に施されてきた方法です。特に、古民家では虫食いや小傷などによって、木部が白く汚れた感じになり、みすぼらしが増します。骨董もそうですが、木が古くなると、黒ずんだ色が基調、白っぽい部分は汚れになるのです。この場合、荏油をすり込んでやるだけで、ほどんどの汚れは消えます。剥げたような色になって色の違いが大きい場合のみ、煤やベンガラを加えてやります。

故玩館もこの方法で全体を処理しました。ただ、古民家一軒の木部は、柱、梁、天板、床・・・・想像以上に表面積があります。一人で行うには、相当の覚悟が必要です(^^;  故玩館の場合には、若いボランティア達に助けてもらいました。

ですから最近は、古民家をリフォームする場合も、市販のスティンで済ますことが多くなっています。飛騨高山に行かれたら、そういう目で家々を見ていただくと良いかと思います。

ここだけの話ですが、骨董屋さんも、古民具などは、裏でこの方法でリフレッシュしてから、店に並べます。ステインを使わず、荏油で処理をしている所は良心的(^^;

 

さて、絵瀬戸鳳凰紋大皿を入れて、

 

もともと入っていた真綿でくるみ、

 

紐を掛ければ、出来上がりです。

 

ところで、ずっと気になっていました。

箱の底に書かれた文字・・・

「うしの 〇〇めし」

というように読めるのですが、これはどういう意味でしょうか。

鳳凰紋の絵瀬戸大皿と何の関係があるのか、謎です(^.^)

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一富士二鷹三茄子石皿

2020年08月13日 | 古陶磁ー大皿・大鉢・壷

見込みに、富士山、たか、茄子が描かれた、やや小ぶりの石皿です。

径 25.0㎝、高 4.4㎝、高台径 11.4㎝。 江戸後期~明治。

 

使用された形跡はないのですが、古格は十分にあります。

また、普通の石皿より、全体が白いです。

 

描かれているのは、石皿で時々見かける、一富士二鷹三茄子の図柄です。

石皿の絵は、普通、皿いっぱいに豪快に描かれるのですが、この絵はかなり控えめです。

さては、チビタ絵の偽物をつかまされたか!

前回の「四階の松石皿」の例がありますから、もう疑心案義です(^^;

 

で、もう一度、冷静に描線をながめてみると、走るような筆使いではありませんが、ためらいなく、きっちりと引かれています。

 

また、空白の場所が非常に多いにもかかわらず、5個の目跡のうち2個は、絵と字の部分におかまいなくかかっています。

どうやら、この品は大丈夫のようです。

 

ところで、石皿として見た場合、この皿は他の品とかなり違いがあります。

まず、石皿の特徴である外周の鍔ですが、裏側へ襞状にぐるっと窪ませてあります。

 

 

もう一つの大きな違いは、手で触れたり、持ったりしたときの感覚です。普通の石皿ようなごつごつした感触と、ざらざらした土ざわりの感じがしないのです。

 

高台をみると、非常に肌理が細かく、白い土が使われていることがわかります。

 

目跡に残った土も、非常に細かく白いです。

 

釉薬の感触は、肌にしっとりとくる温かみがあります。これは、長石釉ですね。

石皿のほとんどは、瀬戸洞窯で作られ、釉薬は、灰と長石を混合して用いたと言われています。今回の品は、それとはちがって、長石のみが使われたため、灰釉中の鉄分による黄色が出ず、白い土と白い釉薬が、このような白い石皿を作り出したのでしょう。

高台回りをみると、赤く発色しています。志野焼にみられる緋色によく似ています。

このようにみてくると、この品は、瀬戸ではなく、美濃で作られた石皿ではないかと思われるのです。

どうしても、美濃贔屓になってしまう遅生でありました(^^;

 

 

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