忘れていくことは
そんなに苦しいことではない
あれだけは忘れたくないと思っていた
愛するあの子のことも
雪のように消えていく
消えていけば
もう何もない
あるものが
しびれているのではない
重さも影も嘘のように消えて
何もなくなっている
魂がかすむほど
軽くなるのだ
まるで
澄みすぎている水のようだ
射してくる神の光が
少し悲しげなのは
忘れてしまったのはわたしだけで
神は覚えていなさるからだろう
何があったのかを
追いかけてはいけないと
友達が言う
わたしは
それには従った方がいいのだとは
わかるくらいには賢いのだ
追いかけても
何もなりはしない
ああ
かつて深く愛したことのある人のことも
わたしは忘れてしまったのだ
後悔さえもない
喪失感さえもない
悲しいとさえ思わない
これでいいのだとは
思い切ることができないのが
真実というものの重さなのだろう
遥かなる永遠の向こうで
ふたたびあの子と出会える時
わたしは再び
あの子を愛せるだろうか
なつかしいと思えるほどの
記憶などかけらもなくとも
ああ
それも
今はどうでもいいことなのだ